有吉京子の『SWAN』を観る(7) ~真澄のバレエが変わった『愛の伝説』

2016年8月25日バレエ&オペラ&クラシック, 有吉京子の『SWAN』

言わずと知れたバレエ漫画の金字塔。地方のバレエ教室の一生徒に過ぎなかった聖真澄が、ロシアの名教師アレクセイ・ミハイロフをはじめ、数多くの強敵や天才との出会いを通して、世界を代表するバレリーナへと成長していく物語。単なるスポ根的展開にとどまらず、人生とは何か、芸術とは何かを問いかける、深く哲学的な内容に仕上がっている。バレエに興味のない人や男性が読んでも学ぶところは多い名作だ。

その名作漫画『SWAN』を読むのではなく観よう、というのが当サイトの企画です。

今、本が手元にないので、セリフなど細かいところはうろ覚えになっていますが、順を追って説明してまいります。

STORY

世界バレエコンクールで、真澄は葵とペアを組んでボリショイ・バレエの名作『愛の伝説』のパ・ド・ドゥに挑む。

たとえ
あなたに関わる人々がすべて
この愛を呪っても
わたしにとっては
我が身であるこの愛を
どうして捨てることができるでしょう

たとえ嫉妬の炎に
心がみにくく
やけただれてしまったとしても
想いだけは 鳥になって
地の果てまでも ついていくでしょう

あなたが望めば
地の果てまでも
ついていくでしょう――

上記のセリフは、コンクールで「愛の伝説」のシリンを踊ることになった真澄が、どうしても感情移入できなかった時、突然、彼らの前に現れたセルジュ・ラブロフスキーに指導される場面にある。

「愛の伝説」のシリンは、自分の美貌と引き換えに命を救ってくれた姉メフメネ・バフーと、愛する男性フェルハード(姉もまた彼を激しく愛している)の間で葛藤しながらも、フェルハードへの愛を貫く。

真澄が踊ろうとしているのは、シリンとフェルハードの愛の高まりを描いたパ・ドゥ・ドゥである。(相手役は葵さん)

よく考えてごらん。
人の為に自分の意志を殺すことは美徳だろうか。
それはワガママで身勝手なものだと分かっていながら、
自分に正直に振る舞うことは罪悪だろうか。

人は感情で生きている。
誰の心にも欲望はある。

人生は美しいことばかりじゃない。

人と譲り合い、助け合うのもいいだろう。

が、しかし、何を捨てても貫かねばならないことが
人生には必ずあるはずだ。

自分を押し殺せるうちは本物じゃない。

人に譲れる恋なら、本物ではないんだ。

こちらが、真澄と葵に課せられた「愛の伝説」のシリンとフェルハードのパ・ド・ドゥ。
シリンを演じるのは、ボリショイの花形、リュドミラ・セメニャカ。
相手役は、アレクサンドル・ボガティリョフである。
セメニャカの特徴は、一つ一つの技が非常に安定していることだと思う。
特に、膝から足首にかけてのしなった感じが特に美しく、以前、バレエ・フェスティバルで来日された時、顔も識別できないほど後部座席だったにもかかわらず、足のしなりを見ただけで、「セメニャカだ」とすぐに分かったくらい。
ニーナ・アナニアシヴィリのような派手さはないけれど、どんな役柄も着実にこなす才能豊かなバレリーナだ。

LEGEND OF LOVE (Semenyaka-Bogatyrev, Bolshoi 1978)

こちらは、妹の命を救うために自らの美貌を犠牲にした姉メフメネ・バヌーのソロ。
醜くなった後は、このようにマスクで顔を覆い、いとしいと同時に憎い恋敵でもある妹への嫉妬と慈愛の間で苦しむ。

メフメネ・バヌーのソロ

『愛の伝説』 全幕

残念ながらこの作品のDVDは現在入手できません。
前にボリショイ・バレエのシリーズでLDとVHSを販売していて、私はLDの方を持っていたのですが、廃盤になって久しいです。
音楽も振り付けもエキゾチックで、非常にユニークな演目なのですが。

現在、YouTubeに全編がアップされています。
画質などは悪いですが、マリア・ヴィローワのメフメネ・バヌー、アッラ・ミハリチェンコのシリン、イレク・ムハメドフのフェルハードが堪能できます。
特にマリア・ヴィローワが素晴らしいですね。私の大好きなダンサーの一人です。

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=pyw9n2py7ik[/youtube]

※ たまにYouTubeに全編上がっているので「Legend of Love Bolshoi」で検索してみて下さい。