20-1 宇宙開発機構の監査と見合いの段取り

クルーズ

父との約束に背き、ヴァルターとも口論になったことから、二人は会うことも、連絡することも禁じられる。
だが、そこにはアルの深謀があった。
一つは、ウェストフィリアの生物をめぐる宇宙開発機構の動きが予断を許さないこと。
もう一つは、スカイタワーの落成式を機にリズを後継者としてお披露目し、将来への布石とすることだ。
その席には、保守派の大物議員ヴェルハーレンの子息も同席する。
ペネロペ湾開発をめぐる新興勢力の動きも看過できず、アルは将来の保証もかねてヴェルハーレンとの見合いを画策する。

一方、父の思惑など知るよしもないリズは、悲しみと淋しさに胸を詰まらせながら、ローランド島に向かうフェリーの中で父親と向かい合う。
父から聞かされたのは、宇宙開発機構の監査の事だった。

アルはさらにフランシス・メイヤーとパラディオンに関する指令をリズに与える。
いったい、父はヴァルターの味方なのか、あるいは他に企図があるのか。
不安な中、リズは落成式に臨む。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「スカイタワーと周辺施設の完成で、ペネロペ湾の資産価値はますます上昇し、投資も活発になる。この動きに便乗し、アステリアに活動の拠点を広げようと大勢が水面下で動き出している。そのこと自体は一向に構わん。この世は自由競争社会だ。誰でも新規に参入する権利はあるし、その為に既存のものが廃れたとしても、それもまた商売の掟だ。わしも、既存企業も、決してアステリアの市場を独占したいわけではない。だが、ペネロペ湾を中心に、トリヴィアと同じ力関係や階層が持ち込まれたら、結局、同じ事の繰り返しだ。ここはトリヴィアの既得権益や業界の習いに煩わされることなく、誰もが平等にチャンスを掴み、起業や開発にチャレンジできる土壌がある。だからこそ、ノボロスキ社やステラネットのような新興企業が成功し、若手がそれに続いた。それが失われることは、未来の可能性が摘まれるのも同然だ。かといって、あれほど強大な勢力に、正面から異議を唱えられる者がどれだけいるだろう。誰しも破滅は怖い。そこそこに成功すれば、どんな進取的な人間も保身をはかる。いずれ気圧され、流され、諦めるのが目に見えている。そうなれば連中の思うつぼだ。もう二度と以前のアステリアには戻れない。だが、ここに一人の男がいる。餌にも釣られず、守るべき地位も財産もなく、相手が権威だろうが、賢者だろうが、犬のようによく吠える侠勇な男だ。あれが本当に地に足をつけて生きていく覚悟を決めれば、その力は百倍にも二百倍にもなる。そして、彼は敗北しても、決して道を間違うことはない。それが一番重要だ。ましてお前と生きていくなら、道を誤らぬ男がいい」
「だったら、もっと優しくしてあげて。パパだって、分かっているんじゃないの。あの人こそ、自分の意志を継いでくれる人だと」
「それとこれとは別問題だよ。優しく肩を抱けば、真理に気付くわけでもない」
「でも……」
「わしは覚悟を問うてるんだ。本気でお前と生きていく決意があるかどうか。だが、あの男のやってることは何だ? 突然、線が切れたみたいに投げ出して、これでは逆戻りじゃないか。何かを成すのに才能だの、キャリアだの、そんなものは決め手にはならん。要は覚悟と熱意だ。何が何でも成し遂げる、その意志と目的意識が第一義なんだよ、リズ」

Product Notes

豪華クルージングも庶民には高嶺の花ですね。

Cruise

Deck 4

DISNEY CRUISE

未来の都市のイメージ。
作中でも繰り返し書いていますが、建築の「デザイン」には「社会の方向性」や「理念」を伝える大きな役割があります。
文章と違い、『絵』は一瞬でイメージを伝えることができます。構図や色彩、独創性が素晴らしいほど、インパクトも絶大です。
アルが『リング』に期待するのも、こうしたメッセージ性なんですね。
理屈だけでは説得力に欠けるけども、『絵』とセットになれば具体性も増し、大人でも、子供でも、一瞬で未来図を伝えることができます。
もちろんヴァルターにはプロ級の絵に仕上げる能力はありません。
だけども、彼の原案を元に、プロのデザイナーが補佐すれば、万人を魅了する『絵』になると踏んでいるわけです。

こちらは新国立競技場のコンペで日本で一躍有名になった故ザハ・ハディドの作品集。暗殺説も飛び交って、建築界も焦臭い話が多いです^^;
(メイヤーのモデルではありません)