6-4 何度でもこの人生を生きたいと思う『永遠の環』

海 太陽

潜水艇から出た二人は西日の輝くヘリポートに足を運ぶ。
「西に西に飛び続ければ、一巡りしてまた元の場所に戻ってくる。果てしないように見えて、全ては一つに結ばれている。Ring der Ewigkeit ――『永遠の環(The Ring of Eternity)』みたいに。沈む夕陽も海の向こうでは朝日になる。この世に終わりも始まりもなく、すべてのものは形を変えながら永遠に廻るという意味だ」
と教えるヴァルター。

それから、互いの気持ちを確かめ、 「いつか、お互いに心の底から好きだと思えるようになったら、その時、もう一度、恋人同士のキスをしよう」と約束する。

一方、ヘリポートの語らいはコントロールルームからも丸見えで、ダグにも嫌みを言われる。

そんな中、ミセス・マードックがヴァルターに優しく諭す。

彼もまた見方を改め、自分からスタッフに溶け込む努力を始める……。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
 リズは蜂蜜色の長い髪を風になびかせながら、
「本当に果てしないのね。海だけが永遠に広がっているみたい」
と目を細めた。
「でも、西に西に飛び続ければ、一巡りしてまた元の場所に戻ってくる。限りがないように見えて、全ては一つに結ばれている。Ring der Ewigkeit ──『永遠の環(The Ring of Eternity)』みたいに」
「The Ring of Eternity (永遠の環)?」
「そう。沈む夕陽も海の向こうでは朝日になる。この世に終わりも始まりもなく、すべてのものは形を変えながら永遠に廻るという意味だ。もっとも、これは父の受け売りだけど」
「他にはどんな教えがあるの?」
「あり過ぎて一言では語り尽くせない。『今は意味が分からなくても、いつかきっと分かる日が来る、だから頭の隅にクリップして』と、大人でも難しい話をたくさん聞かせてくれた。まるで一生分の教えを十二年に凝縮するみたいに。中でも『永遠の環』のことは繰り返し話してた。父が言うには、人生には同じ場面が何度も繰り返し訪れるそうだ。似たような体験を繰り返すうちに知恵も磨かれ、時間軸の周りに螺旋を描くように心も伸びてゆく。その完成された最高の形が『円環(リング)』だそうだ」
「解ったような、解らないような、抽象的な話ね。でも、『同じ場面を繰り返す』というのは何となく解るわ。仕事も、人間関係も、いつも躓く石は同じだもの。気が付けば、いつも似たような場面で立ちすくんでいる……」
「そこで一歩踏み出すか、踏み出さないかが、人生の分かれ目なんだろうね。君にも踏み越える力はあるよ。現に自分の意思でここまで来たじゃないか」
「そうね。生きていくのは私自身だものね」
「父はいつも言ってたよ。どんなに辛く、悲しくとも、何度でもこの人生を生きたいと願う――『これが生なのか、よし、それならもう一度』と心の底から思えた時、本当の意味であらゆるものから自由になり、魂の幸福を得ると。だが、俺にはよく解らない。『よし、もう一度』なんて到底思えないし、なぜそれが心を自由にし、魂に幸福をもたらすかも。俺に解るのは一つだけ、沈む夕陽も海の向こうでは朝日になるということだけだ」

Product Notes

潜水艇のパイロットも狭き門だと思います。(軍隊の潜水艦は除く)
なり手は少ないだろうけど、若い人には目指して欲しいですよね♪

↓ これはアメリカ・ウッズホール海洋研究所の『Alvin』です。1986年にタイタニック号の潜水調査を行ったので有名ですね。

深海 潜水艇
Photo : http://henryhill2.com/Portfolio.Technical.04.html

アルヴィンの内部。
深海 潜水艇
Photo : https://goo.gl/GowTKt

深海 潜水艇
Photo : https://goo.gl/hFMl6y