10-3 建築と社会とCivilization

ロッテルダム 建築

マックスとエヴァの招きでローランド島を訪れたヴァルターは、ローレンシア島とは異なる華やかな町並みに感嘆する。
しかし、島面積の大半が山地で占められ、用地不足は深刻だ。
公営の集合住宅に入りきれない人が、安全性の確立されていない水上ハウスに住んでいる事を知り、ショックを受ける。

マックスは商業複合施設『ハーバーランド』の建設に従事している。
仕事場を訪れたヴァルターは施工監理に興味を示す。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「施工管理の仕事は面白い?」
「面白いとか、面白くないとかの問題じゃない、『やらねばならぬ』の世界だ。一つ一つに莫大な金が掛かってる。設計と違って、いったん施工したものはやり直しが利かないからな。ひと度現場を任されたら図面通りに仕上げるだけだ」
「どうしてこの仕事を?」
「単純な話さ。オレが子供の頃、街の裏手に広大な裸地があった。サッカー場が幾つも作れるほどの空き地だ。それが土地開発の対象になり、あっという間に集合住宅やショッピングセンターが建てられた。わずか数年の間に何百という人が移り住み、一つの町が生まれたんだ。その様をつぶさに見ながら思った。これこそまさにcivilization(シビリゼーシヨン)だと。これだけ大きなプロジェクトを誰がどんな風に管理するかにも興味が湧いた。十五になったら、ほとんど迷わずにその道を行ったよ。まるでブルドーザーに導かれるみたいに」
「その気持ちは分かるよ。俺も干拓地で育って、土木技師の父親からしょっちゅう堤防や治水の話を聞かされて育ったからね。同時に不思議だった。なぜ人々はそうまでして水害と背中合わせの低地に住み続けるのか。運河を引き、堤防を作り、『水を治める技術』を駆使して低地に国土を形成した。人間というのは、そうまでして生まれ育った土地に愛着を抱くものなのかと」

<中略>

「これだけの規模の建設現場を一元管理するのは大変だろうな」
「馴れたらそうでもない。他の業種と一緒だ。管理部長がいて、各部署の責任者がいて、それぞれが持ち場を指揮しながら縦横の連携を図る。それに今は『CoManager』という高機能な施工管理システムがあるから、たいがいのことはオンラインで解決できる。各部の工程表や進行状況、建設コスト、稼働中の重機や作業員数などがリアルタイムで表示されるので、いちいち現場に問い合わせなくても、パソコン一台で全体の状況が把握できるんだ」
「なるほど」
「それに設計図の変更や細かい部分の修正も、各自が所有するPCやタブレット端末で同時に確認できるし、オンラインでの共同編集やミーティングも可能だ。昔に比べれば信じられないほどマネージメントシステムが進歩している。唯一コントロールできないのは天候ぐらいだ。雨が降ったら、ひたすら止むのを待つしかない。まあ、そこいらが人間の限界というやつさ」

Product Notes

私が建築や土木に興味を持ち始めた頃、安藤忠雄さんが人気で、「コンクリート打ちっ放し」の建物が続々と登場しました。

私が一時期、住んでいたアパートも「コンクリート打ちっ放し」だったのですが、「ローカルな建築賞をとった」という割には、住み心地は最悪。見た目はモダンだけど、刑務所みたいな部屋の作りで、これが建築賞? と奇異に感じたものです。

絵や音楽と違って、駄作でも町中に永久に残るわけですから、ダメ建築は芸術の中では一番罪深い。

だからこそ、本当は一番真剣に論じるべきはずなのに(巨額の予算も動くので)、国民も鈍感になって(審美眼においても、社会正義においても)、何事も「なあなあ」で煙に巻かれているような気がする今日この頃です。

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