10-2 海の社会と全球的な視点

海 波

ヴァルターにとって再建コンペで有名建築家フランシス・メイヤーと争い、意匠の盗用を疑われ、示談した事実は一生の汚点となっていた。
施工管理士のマックスと、建築デザイナーのエヴァと話す中、改めてメイヤーが世界の大物である現実を噛みしめる。
だが、一方で、同業者の反発も多く、必ずしも評価と働きが一致しないことを悟る。

ヴァルターはマックス夫妻の住まうローランド島に興味を持ち、海洋情報ネットワークの構築に役立てたいと考える。
クリスマス休暇前、改めてメイファン海洋情報部長と話し、引き続き官民に働きかけることを約束する。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「そうでしょうね。一口に海洋情報といっても種類は様々だし、企業は自社の利益になることしか興味がない。公的機関も、海上安全局が提供する無償の情報サービスがあるのに、なぜ今更といったところでしょう。でも、アステリアの将来を考えれば、今すぐにも常時観測システムの規模を全海洋に広げるべきだし、社会と自然科学の両面からデータ収集と分析を行い、情報を共有することが発展の鍵になる。私はこの視点で間違いないと確信してるわ」
「なぜ海に囲まれた所に暮らしながら、全球的な視点が持てないのでしょうね」
「どこも目の前のことで精一杯だからでしょう。そのことを薄々感じても、いざ実行に移そうと思えば莫大な資金が要るし、高度な知識や技術を持った人材も不可欠だもの。今の区政にそれだけの財力も手立てもないから、どうしても身の回りにしか目が向かなくなるのでしょう。でも、それについて非難することはできないわ。私も同じだもの。長い間、疑問や違和感を感じながら指一本動せずにいた。尻込みしたり、無関心を装ったりする人たちの気持ちも分かるのよ。みすみす余計なことに首を突っ込みたくないのは誰しものことよ。ところで、あなたを全面的に手助けしてくれそうなパートナーは見つかりそう?」

Product Notes

私がインターネットを始めて間もない頃(1997年)、一番にハマったのが『ばかけんちく探偵団』というウェブサイトでした。
今は活動を停止されていますが、やたらと高尚、でもなんだか訳の分からない建築物を「知的におちょくる」、初めての読み物サイトだったように思います。

ここの掲示板も、今ドキの人には想像もつかないほどお行儀よく、日夜、高レベルな議論が交わされていたものです。

まだサイトを保存しておられるので、興味のある方はぜひ。
(ウォールの絵は管理人さんの自作です)

http://www.st.rim.or.jp/~flui/bk/baka_home.html

「ばかけんちく」の概念自体も、この積み重ねの中でどんどん進化・深化していくことでしょう。ですがとりあえずの捜索範囲。

 ●カタチのみで、充分笑いを取ってるヤツ
 ●どうみてもヘンな色、ヘンなカタチのヤツ
 ●中身や用途、目的との関係がよくわかんないカタチのヤツ
 ●周囲からウイてるヤツ
 ●何だか「アートっぽい」けど、どうもウサンくさいヤツ
 ●パクリ / ありきたりなステレオタイプなヤツ
 ●オヤヂなセンスのヤツ
 ●なんか、理由もなくムカつくヤツ
 ●マジで景観破壊してるヤツ
                ...等

「メイヤー」という名前は、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』に登場するヴァルター・フォン・ストルツィングに嫌がらせをする歌い手「ベックメッサー」、そして、建築誌にやたら登場する『メタファー』に起因します。