9-4 誰がローマの設計図を描くか ~社会の未来図

海 断崖

ヴァルターは区政センターの産業労働部のマルーフを訪ね、拡大する社会に対し、システムや権限が追いついてない現実を知る。
問題は「誰がローマの設計図を描くか」だと。

一方で、段取りの甘さを指摘され、いろんな意味でハードルが高いことを思い知らされる。

リズは父と一緒に産業振興会の会食に出掛けるが、職場の女性たちに比べ、決まった仕事もなく、役割もなく、飾り人形みたいに微笑むだけの自身に劣等感を抱く。

いつか恋人の関心を失うのではないかと不安がる娘に、アルは一つの考え方を説いて聞かせる。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「ともかく、ここは大変だ。ローレンシア島、ローランド島、パンゲア島を合わせて十万六千の人口を抱えているにもかかわらず、行政単位としては未だに「属領」の経済特区にとどまっている。条例の制定や改廃、予算の補正や計上、監督組織の改編を提案しても、トリヴィア政府に突然決定を覆されたり、審議も通さず却下されたり、フラストレーションも多い。とりわけ産業労働部は、企業の要望とトリヴィア政府の方針の食い違いで板挟みになりやすく、五年前にわたしが副部長から部長に昇進した時も、お祝いではなくお悔やみパーティーが催されたぐらいだよ――というのは冗談にしても、まあ、それぐらい激務ではある」
「自治権獲得の動きにはならないのですか」
「みなそう言うが、トリヴィアから分離独立し、自治権を獲得したからといって、一気に問題が解決するわけじゃない。財政も、産業も、人材育成も、学校運営さえも、あらゆる面でトリヴィア政府の財政支援に頼ってる。いきなり臍の緒を引きちぎるような真似をすれば、困るのは自分たちだ。それよりは徐々に自由裁量を勝ち取った方がいい。持ちつ持たれつで、少しずつ自立の道を行く」
「それは分かります」
「まさに『ローマは一日にして成らず』さ。問題は誰がローマのビジョンを描くかだ」
「ローマのビジョン――ですか?」
「ローレンシア島はともかく、ローランド島みたいに場当たり的に発展している所は、右肩上がりで湧いている時はいいが、いったん景気に陰りが差すと、皆の不満や問題が一気に噴出して収拾がつかなくなることが多い。もうパイの残りは少ないのに、順調な時と同じように利益を得ようとするからだ。たとえは悪いが、同じどん底でも、火事で焼け野原になった町を官民一丸となって復興するのと、困窮した町で生き残りをかけて共食いするのではパワーが違う。ローレンシア島もそうだ。開発初期のひたむきなエネルギーも確固たる未来図があればこそだよ」

Product Notes

「年齢の枠を越えて、いきいき働かねばならない」「恋も仕事もお洒落も楽しまなければいけない」「愛される女性でなければならない」etc

女性自身が「こうあるべき」と思い込んでいる部分は大きいですよね。

でも、こんな風でいいのだと思いますよ。いわゆる美女の規定からは外れているかもしれないけれど、みな、生き生きと楽しそうじゃないですか。