曙光 Morgenrood

第2章 採鉱プラットフォーム

-ミッション開始-

深海の接続作業と採鉱予定区のマッピング

Introduction

未曾有の海底鉱物資源、海台クラストの本採鉱の接続ミッションを前に採鉱プラットフォームも慌ただしい。古参のスタッフに混じって新たな洋上生活を始めたヴァルターは、潜水艇プロテウスの運航責任者フーリエを紹介される。
まったく経験のない水中の接続作業を前に、神経を苛立たせるヴァルターに、フーリエは子供のオモチャのような機械部品を見せ、「オレでも海底でマドレーヌが焼ける」と励ます。

続いてプロジェクトのサブリーダー、マードックから予定採鉱区のマッピング技術について説明を受け、採鉱計画が単なる金儲けではない、未来の人材育成も兼ねた一大事業であることを理解する。

そんな中、ヴァルターは『マッコウクジラの兄弟』こと、プラットフォーム・マネージャーのダグにテスト潜航を持ちかけるが、予算などの都合からダグは突っぱね、「そんなにテスト潜航したけりゃ、まずは300万エルクの予算を自分で捻出しろ」と迫る。

一方、アステリア滞在を決めたアル・マクダエルの一人娘リズは、世間を知る為に、厳しい肉体労働で知られる物流センターのアルバイトを始める。そこで社長令嬢である自身と従業員らの生活レベルの差に愕然とし、社会や人生への考えを改め始める。

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Quote

 彼はしばらくその場に立ち尽くしていたが、右の奥の方でガラガラとパネル式の移動間仕切りを引く音が聞こえると、そちらに足を向けた。
 プロテウスだ。
 夕べはじっくり見る余裕もなかったが、船体前面に取り付けられた装置が幾つか異なる。八つ目のロブスターみたいな外観はそっくりだが、マニピュレータは海洋調査で使っていたものよりアームが長めで、径も太く、リスト(手首)には光源付カメラが取り付けられている。手先の動きを拡大ビデオで確認する為だ。
 また検査プローブや検体採取用のバスケットは無く、代わりに小型無人機を搭載するランチャーとワイヤーの巻取機が備え付けられている。ランチャーの大きさから察するに、小型無人機は四〇センチ前後。ワイヤーは三十メートルほどか。遠隔操作といっても、対象物にかなり近接して作業するのは確かだ。

*

 程なくハッチから顔を出したのは、boulanger(ブーランジェ)(パン職人)みたいな丸顔の中年男性だった。フーリエというから、どんな厳めしい学者面かと想像していたら、こっちのフーリエはバゲットの香ばしい匂いがする。
「Bonjour(ボンジユール), Monsieur(ムツシユー)」
 彼が挨拶すると、フーリエはきょとんと彼の顔を見ていたが、
「Un petit prince à Marseille? (マルセイユの小さな王子さま)」
と聞き返した。
「小さい王子(プティ・プリンス)?」
「夕べ、理事長に聞いたんだ。新しいパイロットは『マルセイユの小さな王子さま』だと。どんな紅顔の美少年が来るのかと思ったら、なんだ、おっさんじゃねえか」
「俺はまだ三十だ」
「三十なら立派なおっさんだ。オレが三十の時には結婚して娘もいた。お前、女房と子供は?」
「Non(ノン)(いいや)」
「情けない野郎だ。港で遊びすぎたな。まあ、いい。海の仕事は独り者の方が好都合だ。女房を持つと海上勤務の度に文句を言われる」

*

 フーリエは彼を格納庫の壁際に連れて行き、スチールラックに無造作に置かれた部品の数々を見せた。まるで玩具のブロックみたいに大きな六角形ボルト、コネクター、フランジナット、レバーハンドル、等々。部品といっても一つ一つが大人の拳大ほどあり、ノブもプラグもセレクタスイッチも形状は非常にシンプルだ。大半が蛍光色の緑や黄で色付けされ、水中でも識別しやすいよう工夫がなされている。
「機械の接続といえば大層だが、一つは管の口と口を合わせて、セレクタスイッチをOFFからONに切り替えるだけ。もう一つは、大人の掌ほどのプラグを差し込んで、ケーブルを繋ぎ替えるだけだ。多くの部品は接合した瞬間に自動的に回転して、凹凸がガッチリ嵌まる仕様になっている。複雑な操作は何一つない。若いオペレーターでも実験プールで半時間とかからずやってのけた」
「だが、実験プールと深海は異なる」
「確かに。だが、この一世紀、ステラマリスの石油リグでも水深数百メートル下で無人機を使って同様の操作をしているが、事故が起きたことは一度もない。高電圧リアクターだって、海上のオペレーションルームで主電源をONにするまでは通電しないんだ。まさかお前の存在を無視して、海中で丸焼きにはせんだろうよ」
「丸焼きになる前に、電気ショックで即死すると思うが」
「真顔で反論するなよ。お前も生真面目だな。どれ、試しにオレが実演してやろう。ここにあるのはプロトタイプの残骸だが、現在の重機や揚鉱管にインストールされている部品とほとんど形状は変わらない。オレがマニピュレータでちょっちょとネジを締めて見せれば、お前も納得するだろう」
 フーリエは六角形の大型ノブがはめ込まれた金属プレートや、腕の太さほどあるオス・メスの円筒コネクター、掌サイズのセレクタスイッチをワゴンに載せると、プロテウスの前面に配置し、自身は耐圧殻に乗り込んだ。
 ほどなく一部の電源が入り、フーリエが操縦席のコンソールからロブスターのハサミのようなマニピュレータを動かしてみせた。油圧による速度制御(レートコントロール)方式で、ゲーム機のようなジョイスティック型ハンドコントローラーで操作する。
 アームの全長は一・八メートル。海洋技術センターの「プロテウス」のアームは一・五メートルだったから、それより三〇センチ長い。人間の腕と同じように主アーム、上腕、前腕、手など、複数のパートからなり、四つの指を持つグリッパ、リスト(手首)、長さ四〇センチの前腕、五〇センチの上腕、さらに九〇センチの主アームと続き、リストの関節は三六〇度、その他の関節は一二〇度の回転が可能だ。
 フーリエはアームを進展すると、四つ指のグラバーを開いて、六角形の大型ノブをつまんだ。それからもう片方のグラバーで金属プレートを縦にして、ノブを右に左に回して見せる。動きもスムーズだ。
 次に直径九センチのオス・メス円筒コネクターを取り上げる。
 右手に凸型、左手に凹型のコネクターを把持し、大小の筒を重ね合わせるように接合すると、二つのコネクターはがっちり噛み合い、ちょっと引っ張ったぐらいではびくともしない。
 掌サイズのセレクタスイッチも同様だ。真ん中のつまみを四つ指のグラバーで挟んで、右に左に切り替えるだけ。摂氏三〇〇度の熱水噴出孔の周りでウロウロするカニを捕まえたり、岩の割れ目からぽつぽつ湧き出す小さなバブルを気体採取チューブに集めるより簡単だ。
 実演が終わると、フーリエはハッチから顔を出し、「どうだ、大騒ぎするほどの事じゃないだろう」と苦笑した。

*

 リズはガーデンテラスのデッキチェアに腰掛け、グレープフルーツ・ジュースを飲みながら、今一度、目の前の海を見渡した。  朝の光がガラス細工のように水面を跳ね、優しい潮騒が辺りに響き渡る。
 なるほど、二十年前、父が思いがけなくアステリアでディベロッパー事業を始めたわけだ。
 当初は「迷走するMIGの多角化経営」「無目的な事業拡張」と揶揄する声もあったが、父と出資者の思惑は大当たりだ。「渡航制限のある海のリゾート」は安全と娯楽を求めるトリヴィアの富裕層を強く引きつけ、海沿いの分譲地は瞬く間にソールドアウト、海の見える高級住宅やコンドミニアムも企画段階で買い手がつくほどで、その勢いは今も衰えることがない。来年にはローレンシア島でもローランド島でも幾多の商業施設やオフィスビルが続々とオープンし、いっそうの発展が見込まれている。
 父は採鉱システムに打ち込む傍ら、常に周辺の充実を図ってきた。直接的に大きな利益に繋がらなくとも、全体を底上げすれば、自ずと自分の立ち位置も押し上げられる。
「あんたの所も儲けさせてやろうじゃないか」が父の決め台詞だ。その動きは時に他社優先だが、最終的には回り回って自分の懐にも十分な利益が入る仕組みを作り上げる。父が優良なビジネスパートナーに事欠かないのも、「あの人と組めば儲かる」という実績と信頼感があるからだろう。
 採鉱システムに関しては、鉱業権の問題もあって三十年がかりの事業となったが、その間、父がアステリアに成したことは幅広い。物流、土地開発、インフラ整備、工場誘致など、産業振興はもちろんのこと、教育、医療福祉、娯楽など、庶民の暮らしの向上にも努めてきた。事業の成否を決めるのは資本や設備ではなく、突き詰めれば、現場スタッフの善し悪しだ。優良な人材を集めようと思えば、本人だけでなく家族のサポートも必要になる。それもまた余計な出費に見えるが、スタッフが起こした事故や損害の後始末をしたり、悪評の火消しに神経消耗することを思えば安いものだと父は言う。これぞと思う人材がアステリアの暮らしに満足し、いつまでも辞めずに尽力してくれることが最大の資本だと。
 そうした背景もあり、十月十五日の本採鉱はMIGと関連企業だけでなく、父と共にこの地に新たな拠点を築き、事業と社会の発展に打ち込んできた全ての人が大きな期待を寄せている。
 父は平静としているが、プレッシャーもひとしおだろう。
 著名な経営者を父に持ち、「恵まれている」と羨む人も多いが、傍で見ている家族にとっては切ない事も多い。どれほど想っても、父の代わりに事業を采配し、時には産業省に乗り込んで直談判するような事は出来ないからだ。

 

*

 彼がオペレーションルームを訪れると、マードックは壁際のワーキングデスクで採鉱予定区の採鉱マップをチェックしていた。  採鉱に使われるマップは、無人調査プローブが採取したデータを専用ソフトウェアで分析し、七色のグラデーションで彩色した3D地形図だ。そこには詳細な地形だけでなく、基礎岩を覆うクラストの厚さや形状までもが一〇ミリ単位で描出されている。このマップから採鉱する場所を選定し、破砕機や集鉱機のオペレーションシステムにロードアップして重機の動きを制御するのだ。効率的に有価なクラストを採掘できるか否かは、重機の性能にも依るが、資源の賦存状況をいかに正確に把握するかにかかっている。どこに、どれくらいの硫化ニムロディウムが存在するか、地形は重機の運用に適しているか、といった事だ。そして、豊富に硫化ニムロディウムが含まれるクラストだけを基礎岩から引き剥がし、海底からもれなく回収する。
 マードック曰く、一番お金と技術がかかっているのはマッピングだという。それも探鉱権やリテンション・ライセンスが有効な間に結果を出さねばならず、全てが時間との闘いだったそうだ。

--中略--

「今もマッピングの範囲を広げてるのか?」
「もちろん。現段階で十分なレベルに達しているのは五年分だ。それ以外の部分は、今も調査クローラーを使ってデータ収集と分析をしている。大半は自動化されているが、やはり人目で描出されたマップを確認して、気になる箇所はピックアップし、必要に応じて再調査や再分析をしないといけない。それに有価な部分が存在しても、重機に適さない地形もある。傾斜が激しかったり、大きな凹みがあるような場所だ。それも人間の目で見て回避しないと、重大な事故を引き起こす。どれほど機械化が進んでも、最終的には人の目が物を言う。それを見分ける教育も必要不可欠だ。だから、うちのオペレーターは工学理論や機械操作だけでなく、鉱物学や海洋学の講義も受けている。簡単な内容だが、学術的に理解して動かすのと、何も知らずに機械だけいじるのでは大違いだからね」
「なるほど」
「それを指示したのもマクダエル理事長だ。万一採鉱システムに失敗しても、知識や技術があればよそで即戦力になる。そこまで配慮されたら、若いのだって必死にやるだろう」
 彼は納得し、コンソールの前でぺちゃくちゃお喋りしながらも、システムのチェックに余念がない自分と同年代のオペレーターに目をやった。確かに一人の優秀なオペレーターは資本や設備に換えがたい。事業の成否は、突き詰めれば、最先端の技術に携る人間の質に依るのだから。

*

「これが第一期の採鉱予定区だ。ティターン海台の平らな山頂部を中心に、十二のエリアに区分けしている。一つの採鉱エリアの広さは一〇から三〇平方キロメートル、さらにそれを日単位、時間単位で、細かくエリア設定している。たとえば、最初のターゲットとなるエリアAは、ティターン海台東側、約二〇平方キロメートルだ。それをさらに十五区画に分画し、それぞれの予定採鉱量をこちらのテーブルに記している。一日平均五五〇〇トンの区画もあれば、五〇〇〇千トンの所もある。どれほど高品質のクラストを採取できるかは実際にシステムを稼働してみないと分からない部分もあるから、今後のスケジュールはかなり流動的になるがね」
「接続ミッションまでの日程は?」
「今は地上勤務や長期休暇で島に戻っているスタッフが二十名ほどいる。彼らが現場にカムバックし、全スタッフが勢揃いするのが十月八日だ。十一日にビートル型破砕機、ドーザー型集鉱機をパワークレーンで海底に下ろし、試験的に稼働する。それで問題なければ、十五日に揚鉱管を繋ぎ、採鉱システムを本格稼働する。もちろん、悪天候の場合はミッション中止、場合によっては重機も揚収する。幸い、この海域は熱帯低気圧の影響は皆無だし、この二十四年間に僕が経験した最悪の天気でも、風速二〇メートル、一時間の降水量六〇ミリ程度だ。普段は荒れても風速十メートルに及ばないし、波高が二メートルを超えることもない。雨量にもよるが、悪天候での中止は確率的に低いだろうね」
「多少の雨は気にしないよ。俺、大事なミッションに限って、低気圧とぶつかるんだ。潜ってしまえば海上の悪天候は関係ないが、支援船が潜水艇の位置を見失うことは度々あった。海面に浮上したのはいいが、ダイバーが潜水艇にワイヤーを取り付ける作業に手間取って、ついには流され、そちらの救出で大騒ぎになったこともある。でも、不思議と大事故に至ったことはない。そういう意味では、俺は運否の境を漂っているよ」

*

「お前、本当はビビってんだろ? 水深三〇〇〇メートルで、今まで見たことも聞いたこともない揚鉱管を繋げと言われて、小便ちびりそうになってんじゃねえか」
「怖い、怖くないの話じゃない」
「自信が無いなら、エイドリアンに替わってもらえ。頭のいい大学生だ。ここの事もよく知ってる。土壇場で失敗されて、三十年の努力を水泡に帰されるぐらいなら、最初からエイドリアンに任せた方が数倍マシだ」
「だが、その大学生だって深海で思いもよらぬ状況に陥ったら、冷静に対処できるわけじゃないだろう。そいつはプロテウスの隅から隅まで知り尽くしてるのか? ボルトを見ただけで、どの部位の、どんなシステムに組み込まれているか、正確に言い当てることができるのか。俺なら出来る。電気系統のトラブルも、油圧の故障も、ナビゲーションとの行き違いにも対処する自信がある。俺はプロのパイロットなんだよ。大学生のアルバイトとは訳が違う。パイプだけ繋いで済ますつもりはないし、学術的な目的もある。申請書にも書いてる通り、採鉱区の状態を目視するのが一番の動機だ」
「現場が見たいなら、無人機の水中カメラで十分だ」
「十分じゃないから、必要性を説いてるんだよ」
「どこがどう物足りないんだ」
「カメラの視野はどうしても限られる。解析能力だって未だ人間の目には及ばない。微妙な色の違いや形状の変化、細かな粒子の動きなんかは、現場に行って直接見てみないと分からない。何かに気付いた時、すぐにサンプルを採ったり、録画したり、迅速に対応できるのも大きなメリットの一つだ。だから機械操作のテストを兼ねて、一度、自分で見てみたいと言ってるんだよ」
「お前の好奇心の為に三〇〇万エルク?」
「好奇心じゃない。確認だ。事前にどれほど調査を重ねて、精密なデータを揃えても、いざ採鉱機を動かして、海山表面の形状が変われば、思わぬトラブルに直面することもある。そういう不測の事態に供えて、最後にもう一度、採鉱区の様子を間近で目視したいと言ってるんだよ」
「お前、一回の潜航にかかる費用と人手が分かってるのか。プロテウスの運航スタッフは、みなノボロスキ社から呼んでいる。整備工、クレーンのオペレーター、ナビゲーター、ダイバー、彼らの送迎費、滞在費、時給、運営コスト。金だけじゃない、彼らが宿泊すれば居室の準備もいるし、食事だって、その分余計に食材を手配しなければならない。何日も前から各部署でスケジュールを組んで、それに合わせて業務も調整するんだ。そして、十月十五日まで、みな決められたスケジュールで動いている。よほどの緊急事態でない限り、さしたる理由もなしに大きな変更は加えられない」

*

       

 ピッキングカートは高さ一〇〇メートル五〇センチ、横幅九〇センチの二段式のワゴンで、二つのプラスチックケースを収納することができる。
 上段にはデジタルピッキングシステムに対応した液晶ディスプレイが付属しており、コープグループのオーダーや商品の収納場所が表示される仕組みだ。たとえば「ベビー・ビスケット二箱=A列23」「コンタクトレンズ洗浄液三箱=C列51」のように。商品をピックアップしたら、バーコードに読み取り、オーダー内容と間違いがないか自動的にチェックする。単純な作業に見えるが、大人の背丈あるほどピッキングカートを押し、五〇メートルに及ぶフロアの隅から隅まで歩き回り、何段もある保管棚から一つ一つ商品を探し出してバーコードで読み取る作業はかなりの体力仕事だ。
 作業員の負担が少しでも軽減するよう、保管棚のレイアウトは非常によく工夫されており、オーダーされた商品の収納場所に近づくと自動的に液晶ディスプレイにメッセージが現れる。父の話では、フロア設計とデジタルピッキングシステムを手がけた会社は、MIGインダストリアル社の倉庫係から出発したらしい。最終的にMIGから独立したが、「人目に付かない所にも未来の逸材はいるものだ」と父が嬉しそうに話していたのを思い出す。
 リズは二つのコープグループのオーダーを小型端末に読み取ると、早速ピッキングを開始した。
 コープグループは島の西側、古くからある団地のものだ。家族世帯が多いのか、細々した日用品が多く出る。中には、子供の眼鏡、糖尿病の治療食、伝統の食材や調理器具なども含まれ、一人一人の名前と顔は知らなくても暮らしぶりが覗える。
 ディスプレイとにらめっこしながら、リズはてきぱきと商品を詰めていったが、一グループ終わったところで、ダヌシェがカートの中身をちらと見て言った。
「内容に間違いはないんですけど、詰め方を工夫してくださいね。カートのプラスチックコンテナはそのままコープグループに配達されるんです。商品の形状や大きさにもよるけど、なるべく食料品は食料品、日用品は日用品でまとめた方が受け取る側も気持ちがいいでしょう。かさばる物や割れ物は下側にするとか、パッケージものは隙間に詰めるとか、ピッキングしながらその都度、詰め方を工夫するんですよ。こういう仕事は単純ですけど、臨機応変にやらないと効率よく進みません。それに商品の詰め方が悪いと、些細なことでクレームがきたりします」


Product Notes

なぜ主人公がビビっているかというと、潜水艇による深海底の観察と機材を使った水中作業では全く勝手が違うからです。ちなみに、マードックが求める海中作業はこういう感じ。

海底地形のマッピングは世界中の海洋機関が総力を挙げて取り組んでいます。
地上のように肉眼で目視し、ドローンやヘリコプターで上空から撮影するようなわけにいきませんから、技術的には非常に難度が高いです。

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動画だけ見ていたら、とても簡単そうに見えますが、作中でもあるように、「水深数千メートルの海底から、商業的に価値のある鉱物」だけを効率よく採掘するのは至難の業です。莫大な建設&操業コストをかけて、屑石ばかり吸い上げていたら、あっという間に倒産ですね。
これも作中に書いていますが、そもそも、どこに、どれだけ商業的価値のある鉱物が賦存するか、正確に把握しないことには始まらない。丹波篠山の山奥をシャベルで掘り返しても、石油も黄金も永遠に出てこないでしょう? 海底に膨大な鉱物資源が存在するのは本当だけども、有価な鉱物が存在する場所と量を特定するのが非常に難しいのです

物流センターのピッキング作業は、いずれ全自動化されるという話もありますが、大部分を自動化できたとしても、人手を完全に無くすところまではいかないのではないかと思います。ピッキングはできても、梱包、検査、集配、等々、多くのプロセスを必要としますから。ちなみに本作でアステリア・エンタープライズ社とMIGが物流センターを立ち上げたのは、社会全体の物資の流れを効率化して、自社の資材調達を円滑にする為です。自社だけがルートを開拓したところで、周辺が立ち後れていては、結局、どこかで足を引っ張られて、損益を生じる。そうではなく、先に産業基盤を万全にし、足元を固めてから、自社の利益につなげるというアイデアです。

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