5-12 クラゲと月夜の海賊 ~庭園の語らい

ヴァルターとリズは夜の庭園で落ち合うと、ベンチにかけて静かに語り合う。
重役会議で赤恥をかき、プライドを傷つけられた彼も、リズの優しさに心を癒やされる。

二人の会話は「好きな魚」の話題に及ぶが、生まれてから一度も海で魚が泳いでいるところを見たことがないリズは、トンチンカンな返事ばかりしてしまう。だが、それもヴァルターには魅力的に映る。

彼の夢は「クラゲを飼うこと」だ。

「どうして飼わないの?」という問いかけに、彼は答える。

「海に出ている間、世話してくれる人がないからだ」

その一言に、彼の置かれた立場や状況を理解し、リズはいっそう心を揺さぶられる。

互いの温もりを感じ合ったその時――。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「俺の発音が悪いのは生まれつきだ。子供の頃から『鼻づまり』と言われてる」
「ご、ご、ご、ごめんなさい。……私、そんなつもりじゃ……」
「いいよ。俺もずっと『鼻づまり』とからかわれてきたが、体調を心配されたのは初めてだ」
「でも、プレゼンテーションが上手だと聞いているわ。エンジニアリング社のオイラー副社長も褒めておられたわよ。来たばかりで、あれほど理路整然と自分の考えを説明できる人もないと」
「アイデアだけだ。具体策まで提示できたわけじゃない」
「そのアイデアさえ、普通の人には思いつかないのよ」
 リズは励ますように言った。
「アイデアを軽く考えないで。全ての源泉はアイデアだと、父もいつも言ってるわ。サービスも、製品も、世の中を良くする施策も、全ては小さなアイデアの種から始まると。今すぐ具体策は思いつかなくても、問題を明らかにし、幾つかの方向を示すだけで、現場は大きく変わるわ。父もあなたのアイデアに期待すればこそ、突然、重役会議での発言を求めたのでしょう。何も無いと分かっている人に、こんな大事を命じたりしないわ」
「……」
「父は今日のあなたを見て確信をもったはずよ。私には分かるの。憎まれ役を買ってでも、あなたに気付かせたい事があるのよ」
「俺に気付かせたい事?」
「ええ、そう。接続ミッション以外に」
「どうして、そんなことが分かる」
「機械を繋ぐのが目的なら、自分からわざわざあなたを迎えに行ったりしないわ」

Product Notes

クラゲは可愛いですよね。水族館の『クラゲ・コーナー』も幻想的で、見ているだけで癒やされます。

最近は、卓上のクラゲ飼育セットもあって、手軽に育てることができます。

くらげ

くらげ
Photo : https://goo.gl/8IGb2B