曙光 Morgenrood

第1章 運命と意思

-ローエングリン-

土木と締め切り大堤防 水害から干拓地を守る

Introduction

ヴァルターがGeCADで描く海洋の円環都市『リング』の鳥瞰図は亡き父との思い出だ。父のグンター・フォーゲルは熱心な土木技師で、ネーデルラントの干拓地で堤防管理の仕事に従事していた。

ところが、立派な父のグンターも、子供時代はワーグナーのオペラに熱中する夢見がちな少年で、火山学者の父親と理解し合えない。将来の指針をめぐって激しく衝突したグンターは、気分転換に一人旅に出る。そこで出会った読書好きな女の子に『世界は意思の表象である』という言葉を教えられ、アフシュライトダイク(締め切り大堤防)に行くよう勧められる。その圧倒的な規模と歴史に魅了されたグンターは、ネーデルラントで治水の仕事に携わることを志し、堤防に近い干拓地フェールダムに移り住む。

そこでエクス=アン=プロヴァンスから訪れた美しい娘、アンヌ=マリーと恋に落ち、可愛い男の子に恵まれる。運河沿いの小さな家で愛を育み、幸せな未来が開けているかに思えたが……。

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Quote

 パソコンデスクに向かい、Leopardのトラックパッドを操作すると、ディスプレイに電源が入り、GeoCADのメインウィンドウが立ち上がった。『キャンバス』と呼ばれるグリッド状の編集画面には二重の円環ダムで仕切られた海洋都市の鳥瞰図が描かれている。この十年間、何度も描き直し、これがVer. 8になる。トリヴィアに来てから半年、寝る間も惜しんで完成させた最後の鳥瞰図だ。  プロジェクトの名は『Der Ring(デル リング)』。父が大好きだったリヒャルト・ワーグナーのオペラ『Der Ring des Nibelungen(ニーベルングの指輪)』にあやかって、そう呼んでいる。
 初めてリングを描いたのは十歳の時。父と海岸で語り合ったのがきっかけだ。
 父はドイツのカールスルーエで生まれ育ったが、ネーデルラントの堤防に魅せられ、大学で土木工学を修めた後、フェールダムで治水局の仕事を得た。
 彼が子供の頃、父は堤防や治水について、いろんな話をしてくれた。
「これからは機能だけでなく、美観やエネルギーも考慮した拡張型堤防が主流になるだろうね。Anno Dominiの時代にもたくさんの巨大堤防が作られたが、今はどこも異常気象と施設の老朽化に手を焼いている。築堤を根本から変えるような技術や建材の開発が急務だ。堤防には幾多の人命がかかってる。まさに社会の守護神だよ」
「だけど、どうして自然な水の流れを変えてまで、そこに住もうとするのかな。カールスルーエのお祖父ちゃんがいつも言ってるよ。『海抜の低い所に住めば、水害に遭うのは当たり前だ。そんな場所に好んで暮らす方がどうかしてる』って」
「山好きなお祖父ちゃんは、そう言うだろうねえ。でも、その土地に暮らす人の理由は様々だ。住み続ければ愛着も湧くし、社会的な繋がりもできる。土地への思いは理屈じゃない。自身の血肉だ。君だって、いつか遠く離れたら、フェールダムが一番だと思うようになるよ。その時、自然な水の流れを変えてでも、そこに暮らしたいと願う人々の気持ちが分かるんじゃないかな」
 それから、世界中の専門家が考案する未来のダムについて話してくれた。
 娯楽施設を兼ねたアミューズメント・ダム。発電、淡水化、貯蔵、港湾機能などをもったハイブリッド・ダム。水位に応じて高さや形状を自在にアレンジできる拡張型ダムなど。
「それじゃあ、こんな円いダムはどう? 海のど真ん中にリングを描くの。頑丈なコンクリートダムに守られた円環の干拓地だ。これなら大西洋のど真ん中にも大きな町が作れるよ」
 彼が砂の上に大きな円を描いてみせると、
「それは面白いアイデアだね。でも、海のど真ん中に作るなら、一重のダムでは持たないだろう。二重にしてはどうかな。外周ダムは鋼製ケーソンで構築し、内周は重力式コンクリートダムを築く。そして、その二つのダムの間に幅数十メートルの運河を廻らせて、水量をコントロールをするんだ。万一、高波が鋼製ケーソンを超えたり、ケーソン自体に不具合が生じても、運河と内周のコンクリートダムで水を堰き止めることができる」
 彼と父はいろんなアイデアを出し合い、砂の上にどんどん円環の海洋都市を築いていった。
 日も暮れる頃には、海上空港や浮体式エネルギープラントなどを併せ持つ、一大海洋都市に発展した。
 やがて潮が満ち始め、波が徐々に砂の都市を掻き消すと、
「みんな、海の向こうに流されていくね」
 彼は淋しそうに呟いた。
「そんなことはない。もしかしたら、この海の向こうに、それを必要とする人々がいるかもしれないよ」
「海のど真ん中の円環都市など誰も欲しがらないよ。狭いし、危険だし、所詮空想ごっこだ」
「どうして誰も欲しがらないと決めつけるんだい? 遠い将来、それこそ何世紀という未来、海面が著しく上昇して、海抜の低い島や沿岸のデルタ地帯に住み続けることができなくなった時、海のど真ん中でも建設可能な干拓都市の構想が必要とされるかもしれないよ」
「そうかなあ……」
「考えてもごらん。産業革命で機械化工業が始まるずっと以前に、レオナルド・ダヴィンチは飛行機のアイデアを図案に残している。ガスも電気もない太古の時代にさえ、人々は『どうやったら鳥のように空を飛べるだろう』と考えを巡らせ、絵や文章にアイデアを書き留めてきた。当時にしてみたら、空を飛ぶなど奇想天外だったろう。でも、数世紀を経て現実になった。今すぐ実現するかどうかは問題じゃない。それこそ君が言うような『空想ごっこ』を真剣に考え抜いた人がいたから、恒星間航行も可能になったんだ。誰のアイデアも無限の可能性を秘めている。どうせ理解されないからと、そこで考えることを止めてしまったら、それこそ無に終わってしまう。お前もいろんな可能性をいっぱいに秘めた海なんだよ。たとえ君が世界を変えるアイデアを持っていたとしても、それを口にしなければ誰にも伝わらない。だから勇気をもって話してみよう。そうすれば心ある人は必ず耳を傾けてくれる。そして、それが価値あることなら、いつか形になる。もっと自分を信じてごらん。それが創造の源だ」

*

 彼女はグンターの真向かいに座り、熱心に本をよんでいた。
 ショーペンハウアーの『Die Welt als Wille und Vorstellung(意志と表象としての世界)』。
 年は同じくらい、肩まで垂らした赤い癖毛をべっ甲のバレッタでぶっきらぼうに留め、男の子が好むようなエアクッション入りのスポーツシューズを履いている。服装は白いポロシャツにブルージーンズ、膝の上には擦り切れたナップザックを抱え、お洒落はまるで構わぬ様子だが、セルロイド眼鏡の奥で文字を追う薄茶色の瞳は*14ヴァルキューレのように怜悧で美しい。
 グンターの視線に気付くと、彼女もふと顔を上げたが、彼と目が合うと慌てて俯き、じゃがいもみたいな顔を耳の付け根まで赤らめた。それがショーペンハウアーとは対照的に、とてもキュートに見える。
「それ、『意志と表象としての世界』だね。ショーペンハウアーが好きなの?」
 グンターが声をかけると、女の子は今度は落ち着き払って顔を上げ、
「昨日から読み始めたところよ。好きかどうかは、まだ分からないわ」
ときびきびした口調で答えた。
「でも、そんな難しい本が読めるなんてすごいね。僕も前に試したけど、正直、僕には難しすぎて、最初の数ページで挫折したよ」
「どこが、どう難しかったの?」
 女の子が怜悧な瞳を閃かせると、
「最初の一文からさ。『*15世界は私の表象である』。その意味がどうにも実感できなくて」
「言葉の通りよ。世界はあなたの表層なの。難しく考えないで」

*

「あなたは何所へ行くの?」
「分からない」
 グンターは父と喧嘩してここまで来た経緯を打ち明けた。
 女の子はじっと彼の話を聞いていたが、
「私もあなたのお父さんに賛成よ。あなたは心外でしょうけど、あなたはスポーツ界のスーパースターを目指すより、その秀でた頭脳と気高い心を万人に役立てるべきよ。第一、あなたに熾烈な競争は向かないと思う。人気と技術を切り売りしてライバルを蹴落とすには、あまりに心が美しすぎるもの」
「……」
「そんな顔をしないで。褒めてるのよ。どこにでもいるタイプなら『好きにすれば』で済ますけど、あなたには誰よりも幸せになって欲しいから。お父さんもきっと同じ気持ちだと思うわ。白鳥の騎士にはそれにふさわしい活躍の場があるはず。誰もがサッカーの神々の仲間入りをすれば幸せになるわけじゃないわ」
「だけど、他にどうすればいいのか分からない。お父さんはいつも『大きな志をもて』と言うけど、僕には何が志で、どこからが夢なのかも分からない。それに何かを志したところで、どうせ認めてはもらえないと思うと、だんだん自分が無くなっていくみたいで……」
「あなたは何を夢見てもいいし、何を志してもいいのよ。お父さんに認められようと、無視されようと、あなたの意思はあなた自身のものじゃない。ただ、その中で選ばない方がいい道もある。お父さんはブンデスリーガを目指すあなたの判断に不安を抱いているだけで、決してあなた自身を否定しているわけじゃないのよ。その気持ちは私も同じよ」
「……」
「そうだ、あなた、大堤防に行ってみなさいよ」
「大堤防?」
「アフシュライトダイクよ。ゾイデル海と北海を仕切る締め切り大堤防。あれを見れば、人間の意思がどれほどの事が成し遂げるか、一目で理解できるわ。人間は自分の人生を生きる為だけに命を与えられているわけではないことも」

*

 父はネーデルラントを『低地(ニーダーランド)』と呼び、「あんな干潟みたいな土地は、この世の終わりが来たら真っ先に海に沈む」「北海とライン河に挟み撃ちされた場所に建国するとは物好きな連中だ」「今の世界的な異常気象を知れば、わたしなら真っ先にあの海岸線から逃げ出すがね」と斜め下に見るが、今目の前に広がる低地(ネーデルラント)の美しさはどうだろう。まるで水と緑が溶け合うように生き生きと輝き、のどかな干拓地が果てしなく続いている。運河沿いには絵本から抜け出たような切妻屋根の家が建ち並び、まるでお伽の国を旅しているみたいだ。
 この美しい国土が何世紀もかけて人の手で創出されたとは、なんという奇跡だろう。それも重機やコンピュータ支援設計が発明される以前である。
 夏の陽光がきらめく中、フロントガラスの向こうに大堤防が見えてくると、グンターはその長大さに目を見張った。
 アフシュライトダイク(締切り大堤防)は、Anno Dominiの時代、一九二七年から一九三二年にかけてゾイデル内海と北海を仕切る形で建設された、全長三十二キロメートル、幅九〇メートル、海抜約七メートルの世界屈指の大堤防である。
 古来より、ネーデルラントは高潮や洪水に苦しめられ、堤防や運河の建設が国家的事業として推し進められてきた。
 わけても二十世紀初めに実施されたゾイデル海開発計画は、北海の高潮から陸地を守り、干拓地を拡張することを目的とした世紀の一大事業で知られる。
 その一環として建設されたアフシュライトダイクは、文字通り海を仕切り、干拓地を守る治水の要所として国を支えてきた。
 それは今もモーセの奇跡のように大海原を二つに分かち、豊かな国土を創出している。
 現在、堤防上面には片側二車線の快適な自動車道路が敷設され、幾つもの河口に分断されたネーデルラントの沿岸部を一つに結ぶ主要な交通路でもある。
 グンターは堤防中央のパーキングエリアでバスを降りると、記念碑や資料館を見て回った。
 資料館には、膝上まで水に浸かりながら、一つ一つ石を積み上げ、ポンプで水を汲み出し、地盤に杭を打ち付ける作業員の写真や、工事に使われた道具や設計書などが展示されている。ハイテク重機もコンピュータ支援設計も無い時代、ネーデルラントの人々はどのようにしてこの巨大建設を成し遂げたのか、グンターには想像もつかない。
 堤防の見晴らしのいい場所には、プロジェクトを指揮したコルネリス・レリー(Cornelis Lely)の銅像の他、両手で石を積む工夫の彫像、石と棒具を手にした三人の作業員を象ったモニュメントなどが建立され、当時の苦労や意気込みを今に伝えている。
 また記念碑には工事で命を落とした人々の名前も刻まれ、大勢の篤志と献身に支えられた難事業であったことが偲ばれる。
 それらを見るうちに、グンターの脳裏に「この世は神が創り給うたが、ネーデルラントはネーデルラント人が造った」という諺が浮かび、人間の意思がどれほどの事を成し得るか、つくづく考えさせられた。たとえ一人一人の名は歴史に残らずとも、その思いは一枚岩のように祖国の礎となり、現在(いま)を支えている。それは父の叱責に怯え、自分の意思を強く表明することもできない自分がちっぽけに感じるほどだった。

*

 そんな一六九年の春のこと。
 グンターはいつものようにフェーレの町中を流れる運河を見て回った。
 水位を確認し、排水設備の傷みが気になる箇所は写真を撮り、亀裂の深さや大きさを測定する。
 チューリップが咲き揃うこの季節、遊覧船の乗り場も賑やかだ。川岸の屋台からは焼き菓子の甘い匂いが漂い、少し早めのハーリング(生ニシン)を売る店には小さな行列ができている。
 グンターも仕事を忘れてのんびりしたいが、雪解けの水が増すこの季節、決して手抜きはできない。来年も皆の楽しそうな笑顔が見たいから、運河も堤防もしっかり見て回る。
 治水の仕事も地味な確認作業の繰り返しだが、継続的にデータを取り続ければ、例年とは異なる水位、水質の変化、施設の老朽化など、細かな違いが見えてくる。それが即、水害を引き起こすわけではないが、数百年に一度の豪雨や高潮はいつ訪れるかわからない。海面より低い干拓地にとって堤防や排水施設は社会の生命線だ。「その時」が来てからでは遅いのである。

*

 そんな親の不安をよそに、ヴァルターはすくすく育っていく。
 寝返り、お座り、離乳食。
 生後八ヶ月には掴まり立ちし、家の中を元気に這い回って両親と祖父母を喜ばせた。
 その日も書斎で仕事をしていると、戸口の向こうからペッタンペッタン、床を這う音が聞こえてきる。パソコンデスクから首を伸ばすと、ヴァルターが戸口の前でにこにこしながら、父親の姿を見ていた。
「僕が何をしているか見に来たのかい? こっちにおいで、僕の仕事を見せてあげるよ。これは図面。こっちはパース。これはGeoCAD(ジオキヤド)といって、世界中のアーキテクトやエンジニアが愛用しているコンピュータ支援設計アプリケーションだ。この編集画面はフェールダムの締切堤防だよ。いずれ、あの堤防も補強が必要になる。第二次デルタ計画で適切な措置がなされるよう、皆でいろんな意見を出し合っているところだ。この堤防はフェールダムの生命線だ。一見、普通のコンクリートダムに見えるが、緻密な計算の元に設計された、素晴らしく頑丈な堤防だ。だけども、ここ数年、深刻な異常気象が続いている。冬の高潮。夏の豪雨。季節外れのブリザード。この数百年、何も無かったからといって、この先、数百年も何も起きないとは限らない。国作りする者は、何十年、何百年後の未来を見据えて、国土を築かねばならないんだ。僕の仕事は治水の問題点を見つけ出し、改善策を提示することだ。地味な仕事だけど、やり甲斐がある。何と言っても、お前の将来に関わる話だからね」


Product Notes

前述にもあるように、オランダの『アフシュライトダイク(締め切り大堤防』は、1927年から1932年にかけて、国家的な治水事業の一環として建設されました。
全長32キロ、幅90メートル、高さ7.25メートルの威容を誇り、北海から仕切られた内湾は、現在、アイセル湖となっています。
治水の重要な拠点であると同時に、湾岸の南北を結ぶ主要な交通路でもあり、中継点には記念碑や観光客向けの施設が設けられています。
ITもハイテク重機もない時代に、よくこれだけのものを作ったものです。

ここは旅行会社の観光ルートからも外されているので、個人的に移動するしかありません。(たいていは、風車とゴッホ&レンブラント美術館、チューリップ園で終わり)
私はアムステルダムからアルクマールまで電車でアクセスした後、バスを乗り継いで、締め切り堤防まで行きました。
天候にも恵まれ、天の架け橋のような眺望でした

ちなみに、日本の土木技術は、多くをオランダから学んでいます。
鎖国の時代にも、日蘭の交易が続いていたこともあり、干拓、護岸、様々な技術を取り入れることができたのです。

2017年8月撮影

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

『E22(自動車専用道路)』で表示されているのがアフシュライトダイク(締め切り大堤防)です。南北を結ぶ交通の要であると同時に、観光スポットにもなっています。

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

建設工事を指揮したコルネリス・レリーの彫像。今も祖国の海を見守る風情が魅力的。本作のモチーフです。

オランダ アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

水害と建設の歴史を物語るパネル。遊歩道に設置されています。

オランダ アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

『水との闘いは人類の為の闘いである』 オランダのベアトリクス女王によって設置された碑文。

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)碑文

展望台の基底部に設置された労働者らのレリーフ。昔の工具を手にしています。

アフシュライトダイク(締め切り大堤防) 労働者 レリーフ

展望台には、小さな土産物売り場、カフェ、手洗いなどがあります。将来的にはアミューズメント施設を拡充し、新たな観光スポットに再建する計画があるらしい。

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)展望台

当時の工事の様子。

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)

アフシュライトダイク(締め切り大堤防)の今と歴史を伝えるビデオ。

意思と表層の世界

女の子が読んでいたショーペンハウアーの『意思と表層の世界 (中公クラシックス)』の有名な出だしは次の通りです。

「世界はわたしの表象Vorstellung(目前に見るようn心に思い描くこと。心象、想像、観念など広い意味をふくむ)である)――」

これは、生きて、認識をいとなむものすべてに関して当てはまるひとつの真理である。ところがこの真理を、反省的に、ならびに抽象的に真理として意識することのできるのはもっぱら人間だけである。人間がこれをほんとうに意識するとして、そのときに人間には、哲学的思慮が芽生えはじめているのである。

個人的にこの箇所が好き。

インド人の太古の聖賢は次のように語っている――

世界はあるともいえないし、また、ないともいえない。なぜなら世界は夢に似ていて、旅人が遠くから見て水かと思う砂上の陽光のようなものだし、また旅人が蛇かと思う投げ棄てられた縄にも等しいからである」

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