2-7 堤防の補強工事と息子の思春期

灯台

ヴァルターも勉強にサッカーに好成績を上げるようになり、親しい仲間もできたが、そうなったら、そうなったで生意気にもなる。
子供のくせに一癖も二癖もある性格に、グンターも手を焼くが、将来も楽しみだ。

一方、フェールダムでは有志の『治水研究会』が中心となり、締め切り堤防の補強工事を提案するが、自治体と治水局は、翌年に開催される国際自転車競技会に向けて可動式大堤防の改修工事を優先し、補強工事を後回しにする。

長年フェールダムの治水に携わってきた関係者は憤懣やるかたないが、治水研究会にも地元の専門家にも権限があるわけではない。治水行政のトップが決めた事には否応なしに従わざるを得ず、「今夏が来秋に延期になっただけ」と納得するしかない。

そんな中、ヴァルターも十二歳の誕生日を迎え、何もかも順調に思えたが――。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
 一日のスケジュールもきっちり決まっていて、学校から帰ると勉強とサッカー、夕食、デザートにモーモー印のヨーグルトを一個食べながら、月曜日は科学番組『ザ・ユニバース』、水曜日は『オーシャン・プラネット』、金曜日は『リトル・アインシュタイン』を見、入浴して就寝。このパターンが少しでも狂うと、寝床の中でじっと天井を見詰めながら「今日は駄目だった」と反省会を始める。
「そんなにきちきちしなくても、上手く行く日もあれば、行かない日もある。それは僕やお母さんだって同じだよ」
「そんなことはない。父さんにも母さんにも仕事があるのに、俺には何も無い」
「君には勉強があるだろう」
「勉強は仕事じゃない。ガリレオもコペルニクスも勉強するために望遠鏡を覗いていたわけじゃない」
「いや、勉強だと思うけどな」
「望遠鏡の使い方なら誰でも知ってる。でも、俺が知りたいのはその先だ」
「それと、きちきちした生活と、どんな関係があるんだい?」
「地球は太陽の周りを規則正しく公転しているから、みな、安らかな気持ちで眠りに就くことができる。明日も同じように太陽が昇り、冬の後には必ず春が来ると知っているからだ。俺が言ってるのは、公転としての生活だ。生活が軌道を外れると、頭が不安になる」
「???」

 関係者の目下の懸念は、ここ数年の異常気象とフェールダムの生命線とも言うべき締め切り堤防の老朽化だ。
 前からフェール塩湖や周辺の河川の水位上昇は指摘されていたが、ここ数年の突発的な集中豪雨と潮位の異常はネーデルラント南部に限ったものではなく、近隣諸国でも同様の問題が顕著である。
 フェール川河口の締め切り堤防が築かれてから、はや四世紀。
 幅一七〇メートル、全長三キロメートルに及ぶ頑丈な作りだが、最後に大規模な補強工事が行われてから既に八十年以上が経過している。堤防だけでなく、塩湖や支流、沿海の護岸施設や町中の排水設備も同様だ。
 とりわけ沿海の干拓堤防のように七世紀も前に造られ、何期にも分けて盛り土を施したような旧式の堤防は、定期的に補強しないと想定外の水害を引き起こす恐れがある。
 高潮で干拓堤防が越水し、干拓地に大量の海水が流れ込んで塩湖や運河の水位が一気に上昇すれば、頑丈な締め切り堤防も非常に危険な状態になる。これに高潮が加われば、幅一七〇メートルのコンクリートダムでもひとたまりもないだろう。
 また干拓地そのものが自身の重みで年々低下しており、フェールダム一帯の治水能力が落ちているのは明白だ。一刻も早く計画高水位を見直し、各施設の補強を急がねばならない。
 治水局でも政務担当官や専門家が第二次デルタ計画の準備委員会に加わり、問題点の整理や計画の立案に当たっているが、大都市の高機能堤防のように、幾つもの河口に跨がって築堤されている重要施設ばかりが優先され、フェールダムのように人口七千人程度の干拓地の盛り土堤防や、中規模な締め切り堤防は後回しにされがちだ。
 また五年後にはフェールダムの東側にある可動式大防潮水門で国際自転車競技が開催されることもあり、州やイベント関係者としてはそちらの改修を急ぎたい。
 先日も、自治体の代表や専門家を交えて話し合ったが、結果は何時もと同じであった。

Product Notes

Nederland=低地=オランダ、その名の通り、町が水面より低い位置にあります。
間近で見ると、よくこんな所に住む気になったなあ……と本気で心配します。

オランダ 堤防
Photo : https://goo.gl/ta68eH

それだけに、国中に設置された堤防も、機能、美観ともに素晴らしいものが多い。

オランダ 防潮堤防
Photo : https://goo.gl/P1CwCk

防潮堤防によって作り出された湖
防潮堤防 湖 オランダ

スヘルデ河口を仕切る締切堤防
締切堤防

堤防というのは、まさに社会の生命線です。
確かに、何年、何十年、時には何百年と、何も起こらないかもしれない。
だけども、ひとたび決壊すれば、その被害は計り知れません。
いつ訪れるか知れない、何千日、何万日かの、たった一日、あるいは一夜の為に、何億もの費用を出して、「その日」に備えるのは無駄なように見えますが、堤防が決壊すれば、それ以上のものが失われます。
今日の油断は、子孫のツケなのです。

洪水

サッカーといえば、私の世代はやはりベッケンバウアーかと(^^;)
キャプテン翼でおなじみの『シューマッハ』も格好いいですけどね。
当時のスーパースターは、現代のスター選手とは違った威光があって、みな『神』のようでした。
そんでも、「低迷する日本サッカー界」もいつの間にやらワールドカップのレベルに達しています。

サッカー ベッケンバウアー