2-4 運河沿いの小さな家と息子の誕生

運河

最愛の人、アンヌ=マリーと結ばれたグンターは、フェールダムという干拓地の運河沿いに小さな家を買う。
カールスルーエの父は「海岸線から近すぎる。ここ数年の異常気象を考慮しろ」と懸念するが、何の前触れもなく、一夜で町が水没するなど有り得ない。
まして堤防管理は自身の職務ではないか……という自負から、父の懸念を押し返す。

夢にまで見た温かい家庭を手に入れ、息子も生まれるが、その幸せも束の間だった――。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
 それにしても、父親って何をすればいいのだろう? 
 ちっちゃなヴァルターは二、三時間おきに目を覚ましては、オギャアオギャアと泣き叫ぶ。
何が欲しいのか、何が不快なのか、グンターにはちっとも分からない。その度に小さな身体を抱えてウロウロ、オロオロ、体重はほんの三キロ程なのに、腕の中に世界がずっしり落ちてきたみたいだ。
 それに比べて、アンヌ=マリーはてきぱきとオムツを換え、母乳を含ませ、まるで生まれる前から「お母さん」みたいだ。授乳を済ませ、フランス語の子守歌を歌いながら、ちっちゃなヴァルターを寝かしつけるアンヌ=マリーの隣で、とりあえずベビー服をたたみながら、「男親って、情けないものだな。いざとなると何も出来ない」とこぼすと、「父親の出番は十年後よ」とアンヌ=マリーは励ました。
「この子が人生の指針を求めるようになった時、あなたが絶対必要になるわ。女の私には男の生き方は教えられないから。あなたなら、きっと素晴らしい人生の導き手になるわ」
 十年後。
 今は想像もつかない。
 でも、きっと、あっという間なのだろう。
 今はこんなに小さいけれど、いずれ生き方や人間関係に躓き、絶望することもあるだろう。
 その時、支えになってやれるだろうか。
 自分自身の事さえ覚束ないというのに――。

Product Notes

オランダの家屋はどれも可愛いですね。
濃い緑色のようなユニークな色使いも、干拓地の田園では素晴らしく映えます。

オランダ 家屋

オランダ 家屋

フェーレの中央広場。

フェーレ 広場

フェーレの古い町並み。昔の趣がしっかり保存されています。

フェーレの古い町並み

フェーレの運河。

運河