2-11 アルベール一世と海洋科学 海は生きるものの故郷

モナコ海洋博物館

愛する人をうしなった母と息子は、唯一の友人を頼って、フォンヴィエイユという港町に暮らし始める。

最愛の父と故郷をなくし、悲しみのどん底にあるヴァルターを元気づけるため、アンヌ=マリーはアルベールⅠ世が設立した海洋博物館に連れて行く。

それを機に、ヴァルターは海洋科学に興味をもち、ジュール・ヴェルヌの「海底二万海里」や赤いニット帽の海洋学者ジャック=イヴ・クストーの著書『沈黙の世界』に興味を持つ。

だが、モナコでの慣れない暮らしは、心の傷をいっそう押し広げる。

夫なき後、必死で生活を立て、息子のケアもしてきたアンヌだが、とうとう彼女自身も力尽き、病に伏せる。
見るに見かねた友人は、アンヌの両親に連絡し、エクス=アン=プロヴァンスから迎えの車がやって来る。

アルベール一世の海洋博物館を訪れたヴァルターは、フランスの海洋科学に強い興味を示し、ジュール・ヴェルヌの「海底二万海里」や赤いニット帽の海洋学者ジャック=イヴ・クストーの著書『沈黙の世界』に親しむようになる。

「海の底には父さんがいる。冷たい海の底で、俺が探しに来るのを待っている」
「お父さまは世界中のどこにでもいらっしゃるわ。空の上、海の中、野に咲く花の一つ一つに心が宿っている。海の底も決して氷に閉ざされた冷たい世界じゃない。きっと命に満ちあふれた、温かな世界よ」

だが、現実社会で生き延びる術を持たないアンヌ=マリーは病に倒れ、母子の暮らしはたちまち困窮する。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。

 Musée océanographique de Monacoは、西暦一九九〇年、モナコ大公で、海洋学者でもあったアルベールⅠ世の命により設立された。地中海に突き出た岩山の先端に、海の青と溶け合うように作られた白亜の建物には、アルベールⅠ世が生涯かけて取り組んだ海洋学研究の集積ともいうべきコレクションが収められている。今では水族館や3Dシアター、インテリジェントホールなども併設され、海洋学シンポジウムや子供向けの教育イベントなど多彩な活動を展開し、観光スポットとしても人気を集めていた。
 父親の死後、笑顔もなく、言葉も少なく、死んだ魚のようにぐったりしていたヴァルターも海洋博物館は非常に気に入ったらしく、アルベールⅠ世が愛用した調査器具や帆船の模型、巨大なシロナガスクジラの骨格標本や、海の生き物を象ったシャンデリアやモザイク・タイル、膨大な資料やスチール写真を食い入るように見詰めている。
 水族館ではカラフルな魚に目を細め、ふれ合い広場では可愛いカメやヒトデを手に取って、やっと淡い笑みを浮かべた。
「海は生きとし生けるもの、すべての故郷よ」
 アンヌ=マリーは丘の上から冴え冴えと輝く地中海を見ながら言った。
「生命は、すべて海から生まれ、巣立っていったの。陸に上がった人間が今もこうして海を懐かしむのは、海に暮らした何億年もの記憶を何所かに留めているからかもしれないわね」

Product Notes

海洋科学といえば、日本もよく頑張っていますが、フランスのお家芸ですね。
アルベール一世の海洋博物館はモナコですが(^_^;

モナコ海洋博物館
Photo : http://goo.gl/E40gMW

世界で初めて、マリアナ海溝に到達したトリエステ号しかり。
科学者のオーギュスト・ピカールが設計し、息子のジャック・ピカールと海軍の中尉ドン・ウォルシュが海の最深部にトライしました。
そりゃもう、死にに行く覚悟だったと思いますヨ。

The bathyscaphe トリエステ
パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=209622

ジャック・イブ・クストーの作品はこちら。

ジュール・ヴェルヌは「八十日間、世界一周」と「十五少年漂流記」の方が面白かったけど。

La Merはいわずと知れた、シャルル・トレネの名作です。
ここは『Mr. ビーン カンヌで大迷惑?! 』のラストシーンから。
誰もがハッピーな気分になる演出です。
この場面だけ見るとギャグだけど、全編を通して見ると、すごく感動します。

La Merもいろんな人が歌っていますが、個人的には、クリームみたいな甘い歌声が好きです。

Photo(ウォール) : http://www.oceano.mc/en/presentation/the-oceanographic-museum/the-temple-of-the-sea