2-10 堤防決壊 夫の捜索と永遠の別れ

風車

激しい雨が降り続く中、ヴァルターとアンヌは避難のシャトルバスに乗り込むが、グンターは作業着のまま、家族に別れを告げて、堤防に戻っていく。

必死の祈りも空しく、ついに締め切り堤防は決壊する。
フェールダムの干拓地は一夜で水の底に没し、周囲に甚大な被害を及ぼす。

家族は茫然自失とし、ヴァルターも魂が抜けたようにライン川の畔に座り込んでいる。

人生の導き手を失って、これからどうやって生きていけばいいのか。

悲しみのどん底で、アンヌは故国に帰ることを決意する。

「生きるのよ。私たちは生きていくの」と励ましながら、一路、コート・ダジュールに向かう。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
 愛する人をなくして、これから何十年を孤独に生きるぐらいなら、いっそ死んでしまいたい。 この川に身を投げて、海の果てまで追っていきたい……。
 だが、河川敷に息子の姿を認めると、アンヌ=マリーははっと足を止めた。
 息子は赤ん坊のように背中を丸め、じっと川向こうを見つめている。
 まるで魂が抜けたように力なく、果敢にフィールドを駆け回っていた頃の面影はどこにもない。夜も眠れず、食事も喉を通らず、クッションに顔を押しつけては、全身を激しく震わせて泣き続けている。
 人生の導き手を失って、これからどうやって生きていけばいいのか。まるで母子二人、舵も碇もない小舟に乗せられ、荒海に投げ出された如くだ。
 だが、このまま涙の海に沈めば、夫の人生まで無駄に終わってしまう。

風車 オランダ