7-4 水中リアクターの電源ケーブルを接続

有策無人機 ROV コントロール

接続ミッションもいよいよ最終段階。水中の高電圧リアクターの電源ケーブルを差し替え、スイッチをONにするだけだ。
だが、操作の途中で、小型無人機が制御不能に陥り、ヴァルターは潜水艇のマニピュレーターで把持することを思い付く。
動揺するエイドリアンを励ましながら、最後の接続作業に集中する。

最初は喧嘩腰だったエイドリアンも、一貫して落ち着いたヴァルターの態度に見方が変わり、最後はしんみり語り合う。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「いいか、さっき説明した通りだ。俺がプロテウスのマニピュレーターでクアトロの機体を掴むから、その状態のままプロテウスを定位置に保持しろ。俺が合図したら、すぐに操縦席に着いて、お前はクアトロの操作に専念しろ。プロテウスが揚鉱管まで十分に接近したら、クアトロのアームをいっぱいに伸ばして、ストレインセンサーを取り付けるんだ」
「そんなこと、本当に可能なんですか。下手すればプロテウスごとリアクターに衝突しますよ」
「二メートル近づいたぐらいで衝突するなら、俺はこれまでに百回ぐらい死んでる」
「でも……」
「いいから、クアトロの操作に専念しろ。ちょっとプロテウスの鼻先をぶつけたぐらいで死にはしない」
 ヴァルターはプロテウスをゆっくりクアトロに近づけると、マニピュレーターのアームを最大限まで伸ばし、海中で右に左に揺れているクアトロのメタルフレームをがっちり掴んだ。
「このまま高電圧リアクターに接近する。ノエ、ルサルカの投光器を配電盤にフォーカスしてくれ」
 ルサルカが少し上昇し、配電盤に光を当てると、黄色いメタルフレームに守られたリアクター本体と、正面に取り付けられた配電盤が見えた。
 配電盤の中央には、蛍光黄の極太ケーブルが一本、一回り細い白ケーブルが二本、ループ状に固定され、ケーブルの先端には一〇本のピンプラグが備わっている。このピンプラグをリフトポンプ正面の分電盤に差し込み、ダイヤル式スイッチを『OFF』から『ON』に切り替えれば完了だ。
 プロテウスがギリギリいっぱいリアクターに接近すると、
「エイドリアン、操縦席を変われ。クアトロの操作に集中するんだ」
 二人はすみやかに席を入れ替わり、ヴァルターは床に腰を下ろした。
 エイドリアンはクアトロのコンソールに向かい、左右の上部スラスタだけを低速で回転させると、マニピュレーターの左アームを伸ばし、配電盤の左サイドに取り付けられた取っ手を掴んだ。
「よし、いいぞ。まず最初に蛍光黄のメインケーブルの先端プラグを固定ソケットから取り外し、分電盤に繋ぎ替えろ」
 マードックが指示すると、エイドリアンはメインケーブルの先端プラグを配電盤のソケットから取り外した。プラグは一〇本ピンの付いた円筒型で、大きさは直径七センチある。
それと同時に、ヴァルターはプロテウスの位置を数十センチ下げて、クアトロのアームがリフトポンプの分電盤に届くよう調整した。
 分電盤にも二十個以上の小さな部品が取り付けられているが、メインケーブルのコンセントは蛍光黄に塗色され、十個の差し込み口があるので分かりやすい。
 エイドリアンがアームをいっぱいに伸ばしてプラグを差し込むと、自動的にロックがかかり、グリーンランプが点灯した。
「よし、いいぞ。次は二本の白ケーブルだ。それぞれプラグの形状が異なるから、差し込み口を誤ることはないはずだ。今と同じ要領で落ち着いてやれ」
 マードックが励ますと、ヴァルターは再びプロテウスを僅かに上昇させ、リアクターの配電盤に戻った。
 エイドリアンは先と同じ要領で右側の白ケーブルを取り外すと、リフトポンプの分電盤に差し込もうとしたが、白ケーブルはピンが五つで、プラグも一回り小さい。少し手間取った後、どうにかプラグを挿入すると、「あと一つだ。がんばれ」とヴァルターも励ました。
 再びプロテウスを数十センチほど上昇し、先と同じ容量でクアトロが配電盤の取っ手を掴もうとした時、右上部のスラスタも停止し、機体が右に傾いた。
「慌てるな、エイドリアン。左のスラスタも完全に停止するんだ」
「でも、プロテウスのアームで支えきれないでしょう」
「大丈夫だ。クアトロの水中重量は約一五〇キログラムだ。プロテウスのアームなら十分に把持できる」

Product Notes

こういうのをイメージしてもらえば、分かりやすいと思います。
石油リグのセッティングの手順を解説するCGビデオです。

工学好きにはこたえられん、無人機のプロモーションビデオ。

アステリアの海には魚が居ませんが、ここには魚がいっぱいいて、ミッションの最中にもゆらゆらと寄ってきます。一応、魚が通り過ぎるまで、待っているところがカワイイですよね。

それにしても、これだけのオペレーションを洋上から遠隔でやっているというのが凄いです。
作中では、潜水艇から小型無人機をランチャーして接続しますが、最初に「プロテウスは必要か、不要か」で揉めていた時、採鉱プラットフォームのスタッフが「オール無人機」でやろうとしていたのは、こういう事です。

有策無人機 ROV

有策無人機 ROV コントロール
Photo : http://www.oceaneering.com

有策無人機 ROV