11-5 プロトタイプ構築とプロジェクト・マネージメント

船

海洋情報部のメイファン女史の働きかけで、行政や産業の有志によるプロジェクト・ミーティングが開催される。
そこで改めて、海洋情報ネットワークの意義を確認するが、問題は億単位の予算だった。
そんなものが今すぐ必要なのか、懐疑的な参加者に対し、ヴァルターは主張する。

そんな彼に、ステラネットの新社屋で働かないかとオファーが入る。
キプリング社長はプロジェクト・マネージメントの勉強を彼に勧める。

だが、彼が仕事場を移ると知ったリズは激しく動揺し、彼に詰め寄るが、彼の態度は素っ気ない。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「君、興味があるなら、プロジェクト・マネージメントの勉強をしてはどうだ」
「プロジェクト・マネージメント?」
「そうだよ。海洋情報ネットワークのようなプロジェクトを効率よく管理するスキルやノウハウを身に付ける」
「それは『資格』ですか?」
「そうだな、一口にプロジェクト・マネージメントと言っても、国際的なライセンスから、分野の限定された『修了証書』みたいなものまで内容もグレードも様々だ。もっとも『資格』は資格に過ぎず、取得したからといって、すぐさま管理職に取り立てられるわけではない。逆に、無資格でも立派な『親方』はたくさんいるからね。だが、自身の経験だけで動くのと、理論を習得して実地に活かすのではまったく効果が違うはずだ」
「でも、何の為に?」
「何の為? アイデアを具現化して、人を動かす為だよ。まさか君一人で企画、営業、制作、財務管理まで一手に引き受けるわけではないだろう。わたしだって、社長といえど一から十までITに精通しているわけじゃない。特にこの世界は十も二十も年の離れた若い世代の方がはるかに進んだ知識とセンスを有している。だから、その差を素直に認めて、互いの資質を活かせる関係を築くんだよ。その上で必要な作業を分担し、各部署の達成度を見ながら効率よくプロジェクトを推し進めてゆく」
「でも、俺は元々潜水艇のパイロットで、経営管理の経験は皆無ですし、いきなりプロジェクト・マネージメントと言われてもピンとこなくて」
「だが、君のやってきた事は『そのもの』だろう?」
 彼ははっと目を見開き、再建コンペや海洋情報ネットワークの経緯を思い返した。
「まあ、興味のないものを無理にとは言わないよ。ただ、君の働きを見て、一度、体系的に勉強した方がいいように感じたんだ。潜水艇の仕事もやり甲斐があるのだろうが、狭いコクピットに閉じこもって浮いたり沈んだりしても――いや、浮いたり沈んだりが悪いわけではないが、君の資質はどうもそこには無いような気がしてね」
「資質?」
「君のプレゼンテーションを見てつくづく思ったんだ。うちの企画室やマネージャークラスにも頭の切れるのが何人かいるが、君のように理路整然と、なおかつ素人にも分かりやすいように説明できる人物は稀だ。『子供が聞いても納得する』、これが誰にでも出来そうで意外と難しい。君は才能とは思ってないだろうが、普通は何度も場数を踏み、練習を繰り返して、やっと人に聞かせられるレベルになる。事も無げにやっているとしたら、それこそ天性だよ」

Product Notes

海洋情報ネットワークの構想は、このあたりを参照してもらうと分りやすいと思います。
各国の調査機関や企業が連携して「グローバルに」というのはフィクションですが、同様の構想を持っておられる方はたくさんいらっしゃると思います。

ただし、金がかかる。領海や権益の問題がある。国家間の思惑が絡む。等々。

実施するとなれば、難しいでしょうね。

アメリカ海洋大気庁