11-4 一人で長く居すぎたから 心も頑なに

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花

面談の朝、二日酔いで寝坊したヴァルターに、リズはかいがいしく世話を焼く。
一人でゆっくり腹を立てることもできず、リズの好意を重荷に感じるヴァルターは次第に攻撃的になっていく。

そんな中、採鉱プラットフォームのマネージャーのダグが心筋梗塞で病院に運ばれる。
見舞いに訪れた彼はダグの孤独な心情を聞く。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「誰だって無難に生きたい。楽して食えるなら、それにこしたことはない。だが、世の中には、それだけで納得できない人間もいる。そして、オレも、オレの父親も、なんだかんだで熱に呑まれた。他にいくらでも生きようがあったのに、結局、あの人と同じようにプラットフォームに人生を捧げちまった。お前、信じられるか? オレは人生の半分以上を実験場とプラットフォームで過ごしたんだぜ?」

<中略>

「それでも、人生というのはいいものだ」
 ダグは軽く目を閉じた。
「もう死ぬかもしれないという時に初めて実感した。何も無い砂漠みたいな所から海上プラットフォームを立ち上げ、マクダエル理事長みたいに立派な人の信頼を得ることができた。そして、プラットフォームのマネージメントを任され、絶対不可能と言われた採鉱システムを一緒に完成させることができた。今となっては頼る家族もない、女にも縁が無くて冴えない人生だったが、それでも良かったと思える。これなら、もう一度生きてもいいかな、と思えるくらいに」
「気持ちは分かるよ」
「お前もな、無駄に突っ張るのは止めろよ。オレも三十半ばを過ぎた頃から過食症がひどくなって、あっという間に目も当てられないデブになった。その反動でオレも意気がってたよ。人に舐められまい、見下されまいとしてな。だが、本当の強さというのは、自分の弱さを恥じないことだ。人に弱点を知られても、苛立ったり、言い訳しない。雨の時も風の日も理事長みたいに飄々としている。――オレもいよいよ命に関わるほどの肥満になった時、理事長に呼び出されて、いろいろ話をした。オレは病気じゃない、絶対に治療は受けないと言い張り、ずいぶん手こずらせたが、最終的に承諾した。本当の強さはそういうものじゃない、受け入れることだと痛感した。あれで一皮も二皮も剥けたような気がする。今でも突っ張る性格は変わらんが、それでもあの頃よりましだ。ガーフやマードックとも仲良くやれるようになった」