11-3 鉱業資源データベースと土地開発の問題

鉱山

ヴァルターとリズは鉱業局の一部署である鉱業資源調査部を訪れ、ネンブロットとトリヴィアの鉱業の基幹である『鉱業資源データベース』を参照する。
それは海洋情報ネットワークの概念に非常に似通ったものだった。

続いて、区の土地開発部を訪れ、急ピッチで進む土地開発と、それに伴う詐欺や売買のトラブル、投機ブームなどが問題になっていることを知る。

鉱業資源データベースに活路を見出したヴァルターとリズは、続いて、土地開発部のグレアム部長を訪ねる。
都市の拡大に伴い、用地不足や人手不足、詐欺、転売といった犯罪も多く、新たな情報共有システムを模索している最中である。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「『MRDS(ミネラルリソース・データシステム)』は、アステリアのみならず、トリヴィア、ネンブロット、現在探査中の惑星も含めて、広域な鉱物資源データを取り扱っています。さかのぼれば一世紀近く続いているデータベースシステムで、拡張と改良を重ねながら現在の形態に落ち着きました。管理の権限は鉱業局にあり、技術面は民間のIT会社がサポートしています」
 次に、MRDSの概要やポリシーを記したページを見せ、
「データベースの目的は大きく分けて二つです。一つは調査データの収集、分析、管理。いわば『図書館』としての役割です。もう一つは鉱業政策です。内外にトリヴィアが管轄する鉱区の鉱業的価値をアピールし、産業の発展や資源戦略に役立てる役割があります。この二点は海洋情報ネットワークに通じるものがあるのではないでしょうか」
「一つ実例を見せてもらえるかな」
「いいですとも。たとえばネンブロットの鉱物資源データベースを呼び出してみましょう」
 ナイジェルはキーボードを操作し、ネンブロットの全域地図を写しだした。
「この検索窓に『マンガン』と入力すると――ほら、こんな風に、マンガンの分布図が赤いマークで示されます。さらに場所をフォーカスして三次元の衛星写真や地質図に切り替えたり、補足情報として、地層の堆積構造や土壌分析、その他の埋蔵資源を呼び出したり、さらにはこの一帯を調査した鉱山会社の詳細や、今後の鉱業活動の予定、入札情報など、自然科学的データと社会的データの両方を一覧することができます」

<中略>

「たとえば、このエオリア島には商業的価値の高いバナジウム鉱床が存在することで知られています。ほら、この辺り、陸地から沿岸にかけて、高品位な含バナジウム・チタン磁鉄鉄鉱床が広がっているんです。確認されたのは今から四十五年前、ローレンシア海域の海台クラストが見つかるより以前の話です。しかし、エオリア島はそれこそ絶海の孤島ですし、海岸線も起伏が激しく、港湾施設や産業基地を建設するには大きな困難を伴います。海台クラストの採鉱に乗じてトリヴィア政府もエオリア島の鉱業的価値をアピールしていますが、今の投資環境では誰も関心など持ちません。エオリア島および周辺海域に関する情報も僅少なら、公的支援も貧弱で、調査船を係留する場所さえ無いんですからね。いくら豊富な鉱物資源が確認されても、採鉱に適した環境が整っていなければ、鉱業的には無価値です。今後、アステリアが新たな可能性に向かって大きく舵を切れるかどうかは、情報共有に対するトリヴィア政府の認識にかかっています」
「その通りだ。昔から情報を制するものが世界を制する」

<中略>

「僕も、鉱物資源情報に限らず、産官学が一体となった汎用データベースシステムは必要だと思います。たとえば、ネンブロットが一部の企業に寡占された理由の一つは、地質構造や地形図など、本来なら社会の情報資源として共有すべきデータを鉱業局で意図的に操作し、一部企業にだけ便宜を図るような失策を行ったからだと言われています。悪い慣習がはこびれば、真に優良な企業が撤退し、中小企業は参入のチャンスを失い、寡占によって市場価格も信頼と安定を欠いて、結局は業界全体の衰退に繋がります。それ以外にも、環境破壊労働問題、技術開発の立ち後れなど、挙げればきりがありません。いろんな勢力が一気に入り込み、寡占や混乱をきたす前に、産業、学術、市民生活に広く利益を還元する知的基盤を整備することが、この先何十年の発展の足がかりになると思いますよ」

Product Notes

鉱物資源データベースについては、下記のような会社情報を参考にしています。

まあ、ほんと、いろんな業者、いろんなニーズがあるものだと、つくづく。

[blogcard url=”http://www.sgsgroup.jp”]

こちらは総務省の提供する「地盤情報二次利用ガイドライン」。
一般人にはとんと縁のない世界ですが、専門業になればニーズが高いのでしょう。
こんなデータベース、普通に暮らしていたら、目にすることもなければ、存在も知りませんよね。

それの「海洋情報版」を構築し、一般にも広く普及しようというのが『海洋情報ネットワーク』の趣旨です。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000233140.pdf

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