21-2 鉱物学者の父子と噴気孔の生物

ケーブ 洞窟

いよいよ公聴会にアルが呼ばれ、演壇に立つ。
賢人と称えられるカリスマ経営者にカルテルや隠匿の嫌疑がかけられ、世間も興味津々だ。
会場は傍聴を希望する関係者や野次馬でいっぱい、好奇の目に晒され、父の隣に付くリズも恐怖に青ざめている。

質問はさっそく「土着生物の存在を知っていたか、否か」に注がれる。

そして、アルはとうとうダニエル・リースの殺害事件にダナが居合わせたことを告白せざるを得なくなる。
やはり組織ぐるみの隠匿があったのではないかと追及される。

その後の追及も、ダグやワディが用意した証拠資料が物を言い、身の潔白は明らかだ。
尋問を終えたマクダエル父娘に取材のフラッシュが焚かれる中、ヴァルターはわざと廊下で植木鉢をひっくり返し、父娘を無事に建物の外に逃がす。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「イーサン・リース博士、もしくはそのご家族は今も健在でいらっしゃいますか」
「いいえ。事件以来、当方への連絡は一切ありません。年齢的にも、既にこの世の人ではないと推測します。しかし、バダミ博士とは交流が続いていたはずです」
「あなたに連絡されなかった理由は何だと思いますか」
「推測するに、わたしたち姉弟に事件の余波が及ぶのを恐れて、距離を置いたのではないかということです。周知の通り、ニムロデ鉱山がニムロイド鉱石の供給源として大きな位置を占めるようになってから、その成因については『小天体衝突説』が一世紀以上も支持されてきました。揺るがぬ潮流の中で、それを覆す新説を唱えることは、学者としての生命も脅かしかしかねません。まして、わたしと姉はニムロイド鋼の事業に深く関わり、社会的立場も一般庶民とは大きく異なります。下手に関われば、わたしと姉の将来はもちろん、MIGにも大きな影を落とすかもしれない、という深慮でしょう。本来、マグナマテル火山における硫化ニムロディウムの発見は、学術界のみならず、鉱業、金属業、製造業、末端の業者に至るまで、エポックメイキングとなるものでした。イーサン・リースは自身の学問が社会の役に立つと信じ、どれほど圧力をかけられても、科学的事実を捩じ曲げようとはしませんでした。その姿にパダミ博士も心を動かされ、わたしも人生を懸けて海のニムロディウムの可能性を世に知らしめようと決心したのです。もし、そこに悪意があれば、パダミ博士も、ジオサイエンスの同志も、命がけでマグナマテル火山の噴気孔に入ることはなかったし、発展途上のアステリアで不便な暮らしを強いられても、採鉱システムの開発に尽力する人もなかったでしょう。わたしやパダミ博士が正義の使者とは言いませんが、真に正しい学説が人の目を開かせ、海底鉱物資源の採鉱が鉱業の在り方に一石を投じたなら、それは真理の勝利でしょう。ここでいう真理とは、イーサン父子の信念と科学的事実です。わたしもパダミ博士も徒弟に過ぎません。それだけに、最愛の息子を失い、生涯のテーマと定めた研究も、途中で断念せざるを得なくなった無念は計り知れません」

<中略>

「カーネリアンⅡ号とプロテウスの建造は、ノボロスキ社にとっても大変な賭でした。マクダエル社長を信用しない訳ではないが、建造費を回収できない可能性も十分にあった。道理至極に海洋調査の必要性を訴えても、『現段階で遠洋調査は必要ない』『何の為に高価なボーリングマシンや深海探査の無人機が必要なのか』と無視されてきた。いずれローレンシア島とローランド島を繋ぐ航路を開くなら、今後の安全を確保する為にも、せめてローレンシア海域だけでもリアルタイム観測や精密調査を行ってはどうかと提案しても、『そんなに金が欲しいのか』。ええ、あの時、言われたことは死ぬまで忘れませんよ。重ねて言うが、マクダエル理事長が動かなかったら、アステリアは今でも絶海の孤島だ。うちが調査船や無人機を作らなかったら、航路の拡張もままならなかっただろう。そして、その資金はどこから出た? 八十パーセント以上が民間だ。これが独占やカルテルと言うなら、ここにおられる皆さんに伺いたい。あなた方は今まで一体、何をしてきたのかと」

Product Notes

火山ほどダイナミックな自然現象も二つとありません。
まさに惑星の息吹。
この世に鉱物をもたらす巨大なエネルギーです。

Lava Tubeと呼ばれる溶岩道。壁面に珍しい鉱物が生成されていることがあります。

Lava Tube

lava tubes IMG_0153

Hana Lava Tube 2

Lanzarote caves snap seed edit

Lava Tubes in Flagstaff, AZ

こちらはクレーター。海底カルデラの探査というのは、こういう巨大な凹みを真っ暗な中、潜水艇一隻で、うろうろ探し回るわけです。

クレーター