21-1 公聴会の召喚 ~全ての証拠を残せ

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惑星

ヴァルターは気を取り直し、再びメイファン女史と連絡を取り、海洋情報ネットワークへの協力を申し出る。
意見書などを見る限り、内外の関心は上々で、学術調査も産業開発も順調に進みそうだ。
そんな中、アルは宇宙開発機構の公聴会から呼び出しを受ける。生物のこと、初期の海洋開発のこと、どこからか匿名の告発があったからだ。

ヴァルターは協力を申し出るが、セスは「自分の仕事に専念しろ」と取り合わない。

そんな中、ヴァルターは福祉施設で療養中のダグを訪ね、元機関士長のワディと一緒に証拠集めをする。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
まあ、いい。ともかく本題に入ろう。ブライト専務からも話があったが、要は『ティターン海台の調査で土着生物は見つかっていない』『民間主導で開発を推し進めたのは、トリヴィア政府が支援を拒んだから』、この二点を明確にすることだ。宇宙開発機構に規定通りの報告がいかなかったのは、こちらの落ち度じゃない。属領(アステリア)の直轄はトリヴィア政府だ。彼らが隅々まで責任もって対処することだ」
「トリヴィア政府はそんなに非協力的だったのかい?」
「そうとも。オレの親父も悔しがってたよ。トリヴィアの企業には適応される新技術サポート制度が『行政区分が違う』という理由でエンタープライズ社には適応されなかったり、実験に使用する特殊な化学溶液の許可を得るのに半年も待たされたり。それも『アステリアの安全性が確認できない』という訳の分からない理由だ。道路や通信設備の拡張も、湾岸整備も、生活用品を仕入れる物流システムさえも、MIGやその他の企業に丸投げして、自己負担を強いてきた。あれがなければ、採鉱システムの実験も、もっとスムーズに運んだだろう。一七六年にアステリアが経済特区に指定されるまでは、苛めとしか言いようのない事が立て続けにあった。メアリポートのJP SODAやブルーライン海運公社のような、政府繋がりの会社は手厚く保護してきたくせにな」
「それを裏付けるものは何も残ってないのか?」
「それを今から探すんだよ。親父もたくさんの資料を残してる。企画提案書の下書きや産業省からの返信、オンライン会議の議事録、音声ファイルや動画もある。個人のフォトアルバムやプロジェクトノートでも何かの参考にはなるはずだ」

<中略>

「きわめて基本的なことを聞いていいか? なぜ、今頃になって国際宇宙開発機構がネジ込んできたんだ? アステリアで開発が進んでいることも、海台クラストの採鉱が行われていることも、周知の事実だろう。それほど権限のある機関なら、最初から直接監理も可能だったはずだ。ローレンシア島に支局を開設するとか、エンタープライズ社に定期的に監査に入るとか」
「だから、そこが曖昧なんだよ。『属領』を地方都市に置き換えれば分かりやすい。たとえば、トリヴィアがエルバラードの隣に新たな町を作るのに、いちいち宇宙開発機構に報告する義務はない。トリヴィアは既に自治権を獲得しているし、都市管理も政府に一任されているからだ。アステリアも、いわば地方都市と同じ扱いだ。その監理機関はトリヴィア政府であって、宇宙開発機構じゃない。そんでもって、宇宙開発機構というのは、旧時代の名残だ。宇宙植民が始まった頃、環境破壊や非人道的行為、寡占といった違法行為を監視する為に設立された。だが、ひとたび植民地が開かれたら、当地の行政機関が最高意志決定権を有することになる。オランダやオーストラリアも各国の政府が統治するのと同じ理屈だ。宇宙開発機構も、今ではお飾りみたいなものだ。目に余るような違法行為がなされた時ぐらいしか介入できない。それでも、超国家的な第三機関として各地の宇宙開発や植民政策を監視しているのは事実だし、学術的な立場でも様々なデータを分析して、植民地の安全や宇宙科学技術の向上に努めている。今回、出てきたのは、土着生物の発見も大きいが、さかのぼってみれば、『伝わるべきことが伝わっていなかった』のが一番の理由だ。だが、それは決して企業だけの責任じゃない。ちゃんと地方の税務署に収支の報告をしてるのに、それが中央の税管理局に伝わってなかったら、それは税務署の手落ちだろう。だが、税務署は『企業の申告の仕方が悪い』と責任転嫁してる。自分たちの過ちを認めれば、既存の企業に不正な対応をしてきたことも白日の下に晒されるからだ」

Product Notes

地球外生命は存在するか、という問いかけは間違いなくYES。

何をもって「生命」「生物」と定義するかは分からないけれど、ナノスケールのものはそこら中にいるでしょうね。

どこかに存在する地球型惑星。海はあるか? もちろん、どこかには。

地球も昔は灼熱の地獄だった。

惑星

惑星

生物(生命)はどこから生じてもおかしくはない。これから調査が進めば、「生命」と「物体」の境界も紙一重ということが明らかになるかも。