8-1 鉱山会社の進出 海洋資源調査権

鉱山

ファルコン・マイニング社が北方のウェストフィリア近海に、広大な海洋資源調査権を申請したニュースが駆け巡る。
予想以上に早い動きに、採鉱プラットフォームにも動揺が走る。

ヴァルターは改めてトリヴィアとネンブロットの鉱業の仕組み、ニムロディウム採掘にまつわる社会問題、ファルコン・マイニング社の実態を調べる。

ファルコンの陰に怯えるリズに、ヴァルターは「海底鉱物資源の採掘など、簡単に真似できるものではない」と言い聞かせる。
そして、彼女とMIGのため、防波堤を作ってやることを約束する。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
「ファルコン・マイニング社って、そんなに大きな会社なのか?」
と尋ねた。
「鉱山会社としての規模は世界第四位だが、ニムロディウムに関しては採鉱から販売まで市場の九割を独占してる。やってることは阿漕(あこぎ)だが、ニムロディウムが無いことには宇宙船も飛ばないからな」
「なぜマイニング社だけがここまで巨大化したんだ?」
「第一にニムロデ鉱山というバカでかい鉱床を手に入れた。しかも彼らのバックにはクレディ・ジェネラルという巨大金融グループがついて、ありとあらゆる業界にコネクションがある。第二に、採掘した原鉱を粉砕して分級洗浄し、高品位の精鉱を採収するノウハウに長けている。つまり、違法採掘でトラックいっぱいにせしめても、そこからニムロディウムを豊富に含む精鉱を分離する技術がなければ使い物にならないということだ。他にもニムロイド鉱石を採掘している会社は幾つかあるが、マイニング社に比べたら、鉱床の規模も選鉱技術も遠く及ばない」
「だが、なぜウェストフィリアに? 陸地の大半が氷原みたいな高緯度の島で、港も、道路も、何も無い所だろう。そんな島で採鉱を始めようと思ったら、インフラを整えるだけでも莫大な経費が必要じゃないか」
「オレが思うに、ウェストフィリアは口実だね」
 ダグがコーヒーをすすりながら言った。
「海洋資源調査権なんてのは、あくまで通行手形に過ぎない。たとえ魚一匹しか見つからなくても、結果はさほど重要じゃないんだよ。それより進出の足がかりとしての意味合いの方が大きい」
「どういう意味?」
「アステリアは経済特区だから、企業活動には細かな規約がある。『税制の優遇や公的扶助を得られる代わりに、事務所や倉庫は区内に設立しなければならない』「最初の一年間で収益の数パーセントから数十パーセントを投資をしなければならない』『技術系従業員の四十パーセントをトリヴィア領内から雇用しなければならない』等々。投資や減税目的にペーパーカンパニーを作ったり、用地を買い占めたりするのを防ぐためだ。そこでアステリアに進出するための手っ取り早い方法の一つに『海洋資源調査権』がある。調査するだけだから、特区法で定められた投資も、企業監査も、従業員の雇用も必要ない。期限の半年間、申告した条件で調査を行い、そのデータを開発局に提出するだけだ。調査に必要な施設や設備は比較的自由に持ち込めるから、とりあえず権利を取得して、その間に足場を固めればいい。マイニング社も調査の拠点としてローランド島にオフィスを開設し、ウェストフィリアの資源調査に取り組む傍ら.事業拡張の準備を進める手はずなんだろう」

<中略>

「『海洋資源調査』と一口に言うけどね、野山を探査するのとは訳が違うんだよ。地上のことなら観測衛星でおおよその地質も把握できるけど、海はたとえ水深数メートルの沿岸でも、特殊な音響調査機や水中カメラを使ってデータを取得しないといけない。地質サンプルを採取するにも、ツルハシで地面を掘り返すのと同じようにはいかないんだよ。そんな技術的問題が山積する中で、直ちに水深数千メートルの世界が把握できると思うかい? 俺は断言してもいい。どれほどの資本、どれほどの技術をもってしても、海底鉱床のターゲットを絞って本格的に採鉱に乗り出すには最低でも五~六年はかかる。たとえ有望な鉱床が見つかっても、採鉱システムの出来が悪ければ、無価値な石の塊を吸い上げるだけで一銭の得にもならないだろう。海台クラストの採鉱に成功したのは運も大きい。あれだけの人材を揃えるだけでも、企業にとっては大変な投資だよ」

Product Notes

私たちが日常的に使う製品の原料がどこから来ているか、時に関心をもって、考えることが肝要。
こういうのを見ていると、現代人は存在するだけで罪深いような気もします。

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