15-3 復讐するは我にあり・科学の良心

火山

瀕死の重傷を負い、病床に伏せるダナの元にアルは毎日訪れ、聖書の一句を繰り返し唱えるようになる。

アルは悲しみに打ちひしがれるイーサンに再会し、これまでの研究資料を受け取る。
「君はよく言ってたな。本来、石に意味はない。人間がそれに意味を持たせると。君なりに答えを見つけて、世界に示せ。君なら出来ると信じている」

だが、一方で、ウェストフィリアに眠る鉱物資源への執着は叔父の心を狂わせる。
叔父はローガン・フィールズ社を立ち上げ、雑貨やアクセサリーの分野で著しく業績を伸ばす『マニュエル&マクローリン』の資本とコネクションをバックに、アステリアで初となる民間の海洋調査船『コンチネンタル号』を建造。積極的に沿岸調査や資源探査などを行うが、無茶な運航計画が祟り、船は座礁してしまう。

多額の負債を抱えたローガン・フィールズ社は倒産し、ローガンも浴室で溺死する。

この問題を目の当たりにしたアルとダナは、ウェストフィリアではなく、ローレンシア島に拠点を築くことを考え、一歩ずつ、既存の概念を突き崩すことを考える。
そして、ついには採鉱プラットフォームを完成して「小天体衝突説」の定説を覆し、ファルコン・マイニング社を追い込む。

一方、ダナはウェストフィリア調査に出掛けるヴァルターに謎めいた言葉をかける。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
 フィールズ社は民間として初めて「アステリア資源探査事業部」を立ち上げ、ウェストフィリアの基礎調査権を取得した。また鉱業局と連携し、資金と設備の両面から支援を行うことも約束した。確かに、それは画期的な事業だった。
 でも、ウェストフィリアは容易に上陸できる場所じゃない。
 当時は港湾施設もなく、陸海両用ベースシップで近海に着水し、そこから小型ボートかヘリコプターでオデッサ湾の砂浜にアクセスするしか手立てがなかった。しかも、天候が荒れれば、上陸はおろか、海上で待機することさえ危うくなる。ただでさえ限られた日数と物資でやり繰りせねばならない上、ベースシップで待機となれば、それだけで時間とエネルギーを無駄にしてしまう。
 また、泥温泉や間欠泉、噴気孔や変色帯など、学術的にも見所のあるスポットはたいてい山の奥深くにあり、そこまでアクセスするにはプロの登山家でも何日もかかるほど。陸軍のオフロード車を使っても危険な箇所が多いし、高性能のヘリを使っても安全に離着陸できる場所は限られている。
 その上、絶え間ない噴火や大地震、激しいブリザード、未知の有毒ガスや上空数千メートルに達する火山灰など、想像を絶する自然環境もあり、技術だけで到底克服できるものではない。
 父もその点を案じ、同じ事業として取り組むなら、遠回りしてもまずは後方支援のシステムを整え、政府や学術機関と連携しながら半官半民のプロジェクトとして取り組むべきだと何度も叔父を説得したわ。
 だけども、ローガンはファルコン・マイニング社のように先行者利益にこだわり、他を出し抜くことに傾注した。周囲の制止を振り切るようにして計画を進め、資金を集めてメアリポートの造船所で海洋調査船の建造を始めたのよ。
 それが『コンチネンタル号』。
 長距離の連続航行能力とベースキャンプの後方支援、音響測深や音波探査、無人探査機の遠隔操作システムなどを備えた本格的な特殊船舶だった。
 海洋調査に十分な設備と、洋上基地としての性能を兼ね備え、思いのほか、多くの支援を得て、コンチネンタル号は好調な滑り出しを見せた。
 実際、マーテル沖の長大な海底火山列やL字型に交わる二つの海溝の発見、沿岸の海底地形や海象の把握、洋上の長期観測ブイや海水分析装置などを設置できたのはコンチネンタル号の功績が大きいし、それまで年に二、三回しか実施されなかった陸上調査も二ヶ月に一度のペースに増えた。オデッサ湾のベースキャンプも施設が拡充し、そのまま堅実に操業すれば、学術でも、産業でも、大きな成果を上げたかもしれない。
 でも、ローガンも周りの者も調子に乗って、船のキャパシティを越える探査計画に着手するようになっていた。
 その度に設備投資や人件費がかさみ、ローガン・フィールズ社の財政を圧迫するようになっていたけど、いよいよトリヴィア政府も破格の予算を組み、アステリア開発に乗り出す機運が見えたことで、多少の損失も後で回収できると踏んだのでしょう。
 一六五年、島の北側にもベースキャンプを開くため、基礎調査を持ちかけられ、初秋に北部沿岸の地形探査を敢行した。
 でも、北方の海は予想以上の厳しさだった。 

<中略>

「マイニング社は今もブルーディアナイトを追いかけているのですか」
「そうは思わない。ブルーディアナイトの事は一握の人間しか知らないし、当時の関係者の大半は既にこの世にないから。ウェストフィリアに目を向けたのは、他企業と同じ、鉱業的ポテンシャルに目を付けたからでしょう。ブルーディアナイトでなくとも、商業的価値のある鉱物は多種多様に存在するわ。インフラさえ整えば、遠からず本格的な探鉱が始まるでしょう。でも、それはそれで構わない。どのみち、アステリアにも資源供給地は必要だし、人道的なやり方で開発が進むのであれば、社会の活性化に繋がるでしょうから。マイニング社も、学界ぐるみの『小天体衝突説』の虚偽がばれて、今も必死に釈明してるぐらいだから、次はもうちょっとまともなやり方でアプローチするんじゃないかしらね。現社長のロバート・ファーラーも、先代のドミニクに比べたら、まだ常識的な方だから」
「ニムロディウムはどうです?」
「可能性は高いでしょうね。陸上から、海底から、今後も様々な場所でニムロディウムを含む鉱物が見つかるはず。イーサンがよく言ってたわ。『人間には想像もつかない方法でニムロディウムを凝集する何かが存在する』。それが火山なのか、海洋なのか、私にも分からないけど、アステリアにはネンブロットやトリヴィアとは全く異なる物質循環のシステムがあるのは確かよ。あなたならよくご存知でしょうけど、アステリアの海も広大で、調べても調べてもきりがないほど。科学的に判明している部分は数パーセントにも満たないわ。あなたもウェストフィリアに行くなら、ただ目の前のデータを追うのではなく、その符号に秘められた宇宙の意図を読み取ることよ。もっともこれはイーサン・リースの受け売りだけども」

Product Notes

「北方の海」といえば、やはりコレ。ディスカバーチャンネルでもぶっちりぎの人気を誇る、ベーリング海のカニ漁です。ワンシーズンで一年分、あるいはそれ以上の収入を得るという、命がけの漁。

こちらは北海を航行中の船を襲う特大級のストーム。よくこんな中、転覆もせずに操縦できるものだ。
高波が『壁』のように目の前を塞ぐ。

宝石の加工処理や、採掘にまつわるエピソードなどは、こちらのリンクが参考になります。
真偽はともかく、こうした現実があることも頭にクリップして頂けたらと思います。

こちらはナミビアの漂砂鉱床のダイヤモンドの話です。
アフリカの大地を横断するオレンジ川によって遠い山地から大西洋まで流されてきたダイヤモンド。
その管理も非常に厳しいものがあります。
本作の「マグナマテル山脈の間を流れるマーテル川の渓流で見つかった」という設定は、これをモデルにしています。

http://www.flir.jp/cs/display/?id=44096

宝石の人工処理(エンハンスメント)に関する記事は、こちらが参考になるかと思います。
「人工処理しているから悪い」という訳ではなく、商品価値を高める為に、ある程度手を加えるのは仕方がないと思います。ただ、それを「100パーセント天然」と偽ったり、法外な値段を付けたりするのが違反なんですね。

http://www.gem.or.jp/ngl/mame/qa/q23.html

http://www.rare-stones.com/html/tennen-jinzou.htm

ウォールのPhoto : http://www.dailymail.co.uk/news/article-2967672/Russian-bid-raise-wreck-American-vessel-tried-conquer-North-Pole-crew-trekked-500-frozen-miles-survive.html