27-3 経済特区の混乱と署名活動と運命の業

2017年9月27日社会の基盤と構築

リズはウィレム・ヴェルハーレンの招きで「経済特区開発会議」を傍聴する。
だが、そこでのやり取りは、区民が求める親身な協議とは程遠い。
区には自らの代表を選ぶ権利もなければ、このような会議に招かれることもない。
直接にはまったく関わりのない議員や関係者同士で身勝手な意見が取り交わされるだけである。

リズはいろんな意味で失望と無力感を感じながらウィレム・ヴェルハーレンの車に乗り込む。
ヴェルハーレンは、リズの様子から、「政治」だけが悩みではない雰囲気を感じ取るが、理由が分からない。

冷静に政治の現実を語るウィレムの言動に、リズは不満を感じ、異議を唱える。

一方、わずかな署名を集めたヴァルターは約束通り、出張所を再訪する。
だが、今回対応に出たのは、前回とはまったく異なる女性職員だった。
しかも、彼が請願するまでもなく、実態調査の指示が出ており、まるで宇宙の彼方でシナリオが書き換わった如くである。

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「政府は本当にアステリアを二分するつもりでしょうか」
と懸念した。
「二分した方が管理しやすいのは本当ですよ。ローレンシア島には現状に応じた制度を維持し、これから大きな発展が見込まれるローランド島とウェストフィリアには、より企業が活動しやすい新しい制度を設ける。今でさえペネロペ湾周辺には大企業や富裕層が続々と進出し、投資額でも税収でも大差がつき始めています。停滞する地方都市と急上昇する都心に同じ税制や政策を適用しても、かえって発展を阻碍するだけでしょう。それよりは、足の遅い選手と速い選手のレーストラックは分けた方がいいという考えですよ」
「だけども、不公平が生じて、争いの種になりませんか」
「多少はあるでしょうね。場合によっては、産業が一方に集中する事態になりかねません。でも、元々、人口十万弱の小さな社会です。憂うほどの結果になるとも思いませんが」
「私が懸念しているのは、人々の心情ですわ。ローレンシア島には何十年も前から裸地のような所に根を下ろし、自腹を切る覚悟で事業を推し進めてこられた方がたくさんいらっしゃいます。みな、アステリアの自由公正な社会の空気に触発され、希望を繋いでこられたのです。そして、今、アステリアは見違えるように豊かで便利になりました。それは単に技術の進歩や経済政策の恩恵ではありません。資本の乏しい会社でも、コネクションのない人でも、ここなら真っ当に報われるという希望があったからです。知恵を絞り、汗を流せば、誰でも活躍できる社会です。だけども、そこに不平等な制度を敷き、後から来た者ほど有利という状況になれば、人の心も挫かれます。制度が整ったところで、肝心の人にやる気がなければ、どんな発展が見込めるでしょう。社会は陸上競技ではありません。走りの遅い人でも仕事に甲斐を感じるのが真の幸福というものです」
 リズが淀みない口調で返すと、ヴェルハーレンも一瞬言葉に詰まったが、
「政策とは一種の賭けですよ。どんな方策を立てても、百パーセントに有効な良薬など存在しない。ならば、少しでも確率の高い方に賭けた方が有利でしょう。あなたの考えは理解できますが、現状を見る限り、それぞれの経済力や成長率に適った制度を適用した方が、ある意味、公平といえます。経済特区を二分したからといって、明日にも戦争になるわけではないでしょう?」

<中略>

「あなたも結局は『外の人』なのですわ。あの海で粉骨してきた人々の胸の内を知れば、簡単に次代などと口にすることはできません。もし、あなたのお父さまが何一つ報われず、時代の流れに掻き消される様を目の当たりにすれば、あなただって意欲を無くすでしょう。あなた方がなさろうとしている事は、施策という名の掠奪です。それが施された後には、稚魚の育つ川床さえ失われているのです」
「あなたの仰りたい事は理解できなくもありません。しかし、その時々の社会の現状と許容能力に応じた施策を選ぶことも、百年の計と同じくらい重要です。それは、あなたの理想と大きくかけ離れているかもしれませんが、無駄を省き、効率的に進めることもまた正義ですよ」
「だとしても、アステリアの未来は、アステリアに住む人々が決めるべきだと思いませんか? なぜ海を見たこともない人が、海洋都市のあり方を論じるのです」

Product Notes

こちらも楽しそうだけど、事故とか考えたら、安心して眠れる家ではないですよね^^; 私は無理です。

こちらは未来型の水上ハウス。悪くはないと思うけど、幼子とは住めないです。怖くって ^^;

住まいに関しては私は保守的です。