15-2 血塗られた青い貴石と神の噴気孔

2017年9月27日産業と社会, 自然と科学

ダナは春のパレードで迷子になったのをきっかけに、鉱物学者のイーサン・リースと、息子のダニエルと知り合う。
ファルコン・マイニング社の技術顧問も務めるイーサンは、高徳の人でもあり、自らの研究を通して鉱業界の問題を是正したいと願っていた。

イーサンは弟のアルにも鉱物や金属について詳しく説いて聞かせ、姉弟は鉱石の世界に夢中になる。

そんなイーサン父子は政府の公式調査でウェストフィリア島のマグナマテル火山を訪れ、温泉の湧く噴気孔に足を踏み入れる。
そこで採取した鉱物資料は、マイニング社にとって「絶対に存在してはならないもの」、ニムロディウムを含む硫化物だった。

ダニエルはダナにプレゼントする為、青い石を知り合いの宝石研磨士のアトリエに持ち込む。
研磨士が作り上げたのは、六条の星彩効果を放つ、素晴らしいジュエリーだった。
だが、その存在もマイニング社に知れ渡り、研究の存続ばかりか、生命までも脅かされる。

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 実際、イーサンの語るニムロディウムの話はエキサイティングなものだった。
 私もアルもMIGの一員として知識を深めるのは当然の義務だったから、専門の先生に付いてある程度のことは学んでいたけど、イーサンの話は単なる科学知識にとどまらない、『物質と社会』、しいては文明の根源に迫る、非常に哲学的なものだった。
 イーサンはよく言ってたわ。
 石の起源や性質だけを追い求め、学界に名誉の旗を立てるだけが学問だろうか。
 マイニング社のやり方を批判するのは簡単だが、批判するだけでは決して問題は解決しない。金属は富と権力の源泉でもあるけれど、一方で不可能を可能にし、人々の生活に進歩と救いをもたらす。わたしは鉱物学の立場から現状を変えていきたいと。
 でも、それは学者として社会的生命を失いかねない危険な行為だった。
 マイニング社は真実をねじ曲げてでも自社の利益を守ろうとする。
 たとえば、ニムロディウム鉱床の成り立ちには多くの疑問がつきまとっていた。
 一般にニムロデ鉱山は「小天体の衝突によって惑星深部の物質が表面に噴出した」と言われているけれど、それだと同じ恒星系の惑星や衛星の表面にも少なからず存在する現象が説明つかなくなってしまう。それに、小天体が衝突したという割には、それを裏付ける物的証拠が何も無く、年代さえ測定できない。
 にもかかわらず、マイニング社は「企業機密」を理由に部外者の立ち入りを許さず、学術調査にも協力しなかった。誰かが新しい学説を立てようとすれば、あの手この手で妨害し、御用学者を使って完膚なきまでに叩き潰した。
 それこそ大量のニムロディウムを含む鉱物が予期せぬ場所から出てこない限り、彼らは『小天体衝突説』を主張し続け、一切の反論を許さない。ニムロデ鉱山が「世界唯一」であることを印象づけ、市場を操作し続ける。
 でも、別の見方をすれば、彼らの理論を突き崩すのは簡単だった。
「存在してはならないもの」を彼らの眼前に突きつければいい。
 その証拠を得る為に、一部の地学関係者はアステリアに注目していたの。

<中略>

 その頃、アステリアは牛歩ではあるけれど、着実に調査が進んでいた。
 わけても一部で注目されていたのが、『海のニムロディウム』よ。
 アステリアの海水には微量ではあるけれど、ニムロディウムが含まれている。
 ステラマリスの海水にも、一トンあたり数ミリグラムの微量金属として、マンガン、コバルト、バナジウム、リチウム、ウランなどが溶け込んでいるように。
 それまでニムロディウムは、ネンブロットやトリヴィアのようなPAS6恒星系に属する岩石型惑星に固有の物質といわれてきたから、PAS9恒星系の海の惑星からも見つかったことで、これまでの定説が覆る可能性が出てきた。もしかしたら、みなみのうお座星域にとどまらず、宇宙の広範囲に普遍的に存在する物質ではないかと。
 それに『自然界ではニムロディウムは酸化物として存在し、単体では存在しない』が定説だったけど、アステリアには意外な形で存在するかもしれない。海底の堆積物や火山性の硫化物、噴気孔のガスや温泉の沈殿物といった形で。
 もし、それらがニムロイド鉱石のように複雑な還元プロセスを必要とせず、有害な廃棄物も出さずに高純度のニムロディウム精製を可能にするとしたら、特大級の技術革新よ。ネンブロット以外でも大量に採掘できるとなれば、マイニング社は元より、ニムロディウム市場そものが変質してしまう。
 たとえば、金(aurum)が海水から簡単に抽出できるとしたら、金の市場価値はもちろん、それを所有する人の資産価値まで下落するでしょう。金はあくまで希少金属だから破格の値段が付いているのであって、もし食卓塩ほどの価値しかないと分かったら、世の中がひっくり返るわよ。
 それと同じで、ニムロイド鉱石も、ネンブロットに限定された鉱物だからこそ価格も安定し、鉱山会社も金属会社も計画的な経営ができる。もし、あそこからも、ここからも、ニムロディウムが大量に採掘されたら、鉱山会社に限らず、金属業、製造業、流通、様々な業者が多大な影響を被ってしまう。
 それゆえ、トリヴィア政府も、学界も、「海のニムロディウム」の取り扱いには慎重だった。むしろ無視しているような向きさえあった。
 その中で、イーサンが参加していた『ジオ・サイエンス』という有志のグループだけが地道に研究を続け、様々な仮定を打ち出していたの。

Product Notes

「母岩の付いた原石」は、こうした写真が参考になるかと思います。
鉱物専門店などで高額で取引されていますので、興味のある方は「母岩付き 原石」などで検索してみて下さい。

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ドゥーニクリスタルというお店で紹介されているパイライト。100パーセント天然の黄鉄鉱原石だそうです。自然にこうした造形がなされるって、本当に凄い。
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興味があれば、こちらのサイトもご覧ください。不思議で、美しい鉱石の写真がたくさん紹介されています。

『カルパチア』
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52189530.html

http://karapaia.livedoor.biz/archives/52186836.html

宝石のインクルージョンについて知りたい方はこちらのサイトが参考になります。
どれも美しく、不思議なものばかり。自然の妙ですね(^^)

http://srilanka-jewels.com/index.php?main_page=inclusion

こちらは世界的に有名かつ高価な宝石と産地の紹介。我々庶民には完全に無縁の世界です^^;

こちらは宝石研磨の動画。普通の石のかけらが、とろとろのキャンディみたいなジュエリーに。

これでウェストフィリア&マグナマテル火山のモデルはバレバレですね(°°)。
でも、ダイナミックで、素晴らしく美しい島だと思います。チョー寒いけど。

 

その他のダイナミックで美しい風景写真はコチラ。Pinterest

Photo : https://goo.gl/Q5bT0E

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