酒の飲み方は『あぶさん』に教わった 現役引退、お疲れさまでした!

2017年11月15日アニメ&漫画

子供の頃、夏になると、山の麓にある父の実家に1週間ほど滞在するのが楽しみだった。

京都の町中では決して体験できない、山の村の生活と海遊び。

五右衛門風呂に風穴洞、巨大な鶏舎にスイカ畑。

都会っ子の私にとっては、まさに自然がいっぱいのワンダーランドで、ついで言えば、「米子一の美男子」と誉れ高く、芸能プロからスカウトも来た、草刈正雄にそっくりの従兄に会えるのも大きな楽しみだった。(小学校の頃、うちの父に、「○○クンと結婚したい」と打ち明けたら、「いとこ同志で結婚はできない」と怒られた^_^;)

そんな父の実家にあった、秘密の間。

そこには少年誌とエッチな男性まんが雑誌がうずたかく積み上げられ(誰が読んでいたのかは不明)、子供が入室することは固く禁じられていた。

が、「入るな」と言われると、入りたくなるのが子供心。

祖父母や両親の目を盗んでは、姉と二人で忍び入り、週刊ジャンプや週刊マガジンといった少年誌はもちろん、裸のお姉さんが大股開きしているような雑誌も手にとっては、「すごいねー」と感心していたものだった。

あの黴びたような古雑誌の匂いは、今でも忘れられない。

そして、小学校5年の夏の日に、積み上げられた雑誌の中からたまたま見付けたのが、水島新司の『あぶさん』だ。

分厚い単行本で、タイトルは「母子酒」。第四巻である。

「代打屋」「一発屋」と言われる、南海ホークスのピンチヒッターで、普段は大酒飲みの二日酔い、だが外野から一投でランナーを刺す強肩とバツグンのバッティングセンスを持つ。

名捕手と呼ばれた野村克也監督に育てられ、セ・パが認める、当代最高の代打バッターだ。

打席に入る前、グリップに「ブフォ」と酒しぶきを浴びせるお決まりのポーズや、「物干し竿」と呼ばれる丈の長いバットを軽くスウィングする逞しさ。

何より、お酒を飲んだ後の、「うまい!」というキュートな微笑み。

マンガながら、「こんな素敵な男性が世の中にいるのかしら」と一目惚れ、それから毎月一冊ずつコミックを買い続け、コレクションは、いつの間にか、10冊を超えるようになった。

が、しかし。

『あぶさん萌え』も、突然、終わりを迎えた。

六畳一間の男住まいのあぶさんが、ついに、というか、とうとう、というか、飲み屋の娘・さっちゃんと結婚してしまったのである。

それ以前、トーク番組「徹子の部屋」で、黒柳徹子の「いつか、あぶさんも、結婚するのですか?」という質問に、「ええ、結婚する時は、さっちゃんと」と明言されていたので覚悟はしていたが、本当にその場面が来ると空が落ちてきたようなショックで、ついに読むのを止めてしまったのである。(それぐらい惚れていた、ということ)

とはいえ、『あぶさん』恋しさは相当なもので、あぶさんが美味しそうにお酒を飲む度に、

「私もお酒に強くなりたい。どうせなら、『いい酒飲み』になりたい」

と、どれほど強く心に思ったかしれない。

仕事に差し支えるような酒の飲み方はするな

酒を飲むなら、美味しい酒を飲め

これらの教訓は、18歳未満の私の心にも深く響いた。

晴れてお酒が解禁となり、浴びるように飲むようになっても、『あぶさん』の言葉を決して忘れることはなかった。

*

今でも、

「一緒に飲んで、楽しい」

そう言われることが、何よりも嬉しい。

『酒』というのは、もちろん、悲しみを忘れたり、苦しみを紛らわしたりするのに最適な連れではあるけれど、基本は、ディオニュッソス──豊穣と情熱と陶酔を司る神の賜だから。

今は日本酒ではなく、もっぱらウォッカとワインだが、時々、「あぶさん」の升酒を思い出す。

あの升の角っこに盛り塩して、ぎゅーっと一気に飲むのが美味いんだ。

本物の酒飲みは、伯方の塩だけを肴に楽しめるんだぜ、ほんと。

いつかまた日本に帰ったら、越乃寒梅で升酒するのが夢。

あぶさんの故郷は新潟なので、やっぱり新潟のお酒が好きになってしまった。

*

そんなあぶさんも、マンガの中では62歳。

ついに現役引退とのこと。

お疲れさま。

そして、ありがとう。

あなたのおかげで、私は「いい酒飲み」になった……と思います。


画像:「あすなろの木の下で」より


★ニュース元 http://www.daily.co.jp

 37年間のプロ野球選手生活にピリオド-。水島新司さん(70)の人気野球漫画「あぶさん」の主人公、あぶさんこと景浦安武選手が5日発売の漫画誌「ビッグコミックオリジナル」(小学館、10月20日号)の中で現役を引退することが3日分かった。作品の連載は続けられる。

同号に掲載されるのは「さようなら90番」というタイトルの第873話。プロ野球福岡ソフトバンクホークスに所属する62歳のあぶさんがレギュラーシーズン最終戦に出場し、試合後、ファンに引退のあいさつをする-というストーリー。

作品は1973年連載開始。実在のプロ野球選手や監督らを登場させながら、あぶさんの活躍を描く物語で、現在までに単行本94巻、2千万部が刊行された。今年3月、作品中で今季限りの現役引退を予告していた。

小学館は「引退後のあぶさんの活動に期待してほしい」とコメント。水島さんも「あぶさんの人生はこれからです」と話しているという。

私が「エロまんがの間」で見付けた単行本。『あぶさん』との初めての出会い。
表題の「母子酒」は、あぶさんこと景浦安武の実母(今は再婚して、他に所帯を持っている)が、いきつけの飲み屋『大虎』にひょっこり現れるものの、結局、行き違いになる物語である。
「さっき、そこに座っていた女の人も、銘酒『立山』を浴びるように飲んでいったわよ」
という、さっちゃんの言葉で、それが自分の母であることに気付くが、「今から追いかけていっても、特急立山に間に合わん」と、後を追う代わりに、母が使っていた大桝で『立山』を一気飲みする、というオチ。
あぶさんほど美味そうに酒を飲む男はいない──という周囲の言葉通り、あぶさんの飲みっぷりは本当に惚れ惚れする。
それが仕事=バッティングに絶対に響かない、という点が、最高に好きだった。

「あぶさん」の名前の由来は、19世紀ヨーロッパで「緑の妖精」と呼ばれ、多くの中毒患者(?)を出した、度数70パーセントの『アプサント』。
アプサントに溺れた芸術家の一人に、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホがいる。

「グリーンフェアリー」は、映画『ムーラン・ルージュ 』にも登場した。

アプサント

スプーンの上に角砂糖をのせ、酒を滴らせながら飲むのが通。私も一度、やってみたい。

アプサント

日本酒の最も美味しい飲み方

そりゃもう、升酒に限ります。

小ぶりの白いお皿に升をのせ、よく冷やした酒をなみなみと注ぎ、升の角にひとつまみの粗塩(岩塩)を盛って、ずずず~っといただく。

和製ソルティドッグです。


フォト:Yoichi Suzuki / Music Optical Vibration

この飲み方も「あぶさん」に教わりました。

あぶさんが、南海電車で居合わせた飲んだくれのおじいさん。

居酒屋に誘うと、おじいさんは塩と升酒だけを注文。

店のオヤジが「他に肴は?」と聞くと、

「アホッ! 美味い酒に肴などいらん」(確かそんな返事だった)

そして、なみなみと注がれた升酒にたっぷり盛り塩して、ずずず~~っと飲み干すのです。

その飲みっぷりを見たあぶさんが、「この人は本当の酒好きだ」と納得する。

そういう場面でした。

「そうか、本物の酒好きは粗塩だけで飲むんだ」と子供心に学んだ私が、升酒を実践するようになったのは20代後半になってから。

なぜか私の周りにも日本酒大好きの女の子が多かったので(類は友を呼ぶ)、よく居酒屋に出掛けては、升酒しましたなぁ。。

「塩! 塩、持って来て!」と、お店のおじさんに注文したりね(笑)

「お姉さん、よう飲むなあ、あんた、ホンマもんの酒好きやな」

と言われたこともあったワ。

そりゃ、「あぶさん」読んで、筋金入りだもん(笑)