密室育児と子育てストレス ~ママがただ側に居ることの幸せ~

2017年9月15日

下の子の保育園開始に伴い、私も午前中の数時間ですが、夫の会社で仕事を手伝うことになりました。
我が家は「引っ越し」が急務で、できれば来年、少なくとも再来年には家を購入しないと、今のアパートでは狭すぎるのです。

その他にも、不動産回りや、自動車免許の取得など、いろいろやるべき事があって、ちょっと早いとは思いましたが、下の子の保育園を開始しました。

まだ馴らし保育の段階なので、どうなるかは分かりませんが、何とか頑張ってくれているみたいです。

2004年に上の子が産まれてからこの3年余り、替えもなければ休みもない、人と話す時間さえない、「究極」とも言える密室育児を体験しました。

1日、いや1時間でいいから、誰かに替わって欲しい――。
「子供をちょっと見ててあげるから、買い物にでも行っておいで」ということを、夫婦以外の誰かに言って欲しい――。

そんなことも叶わず、ひたすら二人で頑張ってきました。
この3年間、自分の楽しみの為に一人でお出掛けしたのは、たったの1日だけ、それも、どしゃ降りの中を2時間歩いて終わりでした。(『マリー・アントワネット』の映画を見に出掛けたのですが、それも前日に公開が終了していて、見られなかったのです)

何処に行くにも、何をするにも、子供が一緒、手ぶらで外を歩けたらラッキーな方で、上の子が産まれた最初の一年なんて、10ヶ月間、一人で歩いたことがなかったんですよ。
たまたま、友人とキャンプに出掛けた時、トイレに行くために雑木林の中を5分ほど一人で歩いて、その時、初めて、「あ、一人で歩いてる!」って気が付いて……そんな感じでした。

ここには親戚も少なからずいて、まったくの『孤立無援』というわけではないのですが、これぞという人は共働きで忙しいし、一人でトイレも食事も出来る子供ならともかく、オムツを当てて、意志の疎通もできない小さな子供を進んで預かってくれる人なんて、やはり実母か義母ぐらいなのですよ。
他人は、親切心があっても、「責任もって見られない」と敬遠するものです。

だから、気分的にしんどかったですね。

特に、二人目出産を控えていた時は、もし夜中に陣痛が始まったら、誰に、どうやって助けを求めたらいいんだろう――って、それだけで大変なプレッシャーだったものです。

それに、家族や友達と話したくても、時差があって、電話できる時間帯は限られているし、格安のIP電話をかける為には、わざわざ夫の事務所にまで出向かなければならないし。
頼みのSkypeも、ナローバンドでは音質がいまいちで、あーだこーだいじくっているうちに、パソコンの音声デバイスが故障してしまって、全く使えなくなってしまうし。
踏んだり蹴ったりでした。

で、昼間、公園で会うのは、孫を連れたばーさまがほとんどだし、ママさんと話すといっても根本的なところで考えが違うし(置かれた立場があまりに違いすぎる)、育児雑誌は全部ポーランド語だし(読むのに疲れる)、本を読もうにもジャマされるし、外に出掛けてもお茶の一杯も飲めないし……ってな感じで、もう本当に「密室状態ここに極まれり」という感じでした。
特に、下の子が乳児の時は、メチャクチャしんどかったですね。
だから、私は、日本の都市部で、実家からも義家からも遠く離れた状態で密室育児されているママさんの辛さが非常によく分かるし、夫の帰宅が遅く、平日母子家庭状態になって、ストレスまみれになる人の気持ちもよく分かるんです。

「児童館や一時預かりを利用すればいい」「ベビーシッターを雇えばいい」「育児サークルに参加すればいい」といった声もありますけど、そんな都合良く、自宅の近くに施設があるわけじゃないし、気軽にサービスを利用するには時間料があまりに高すぎるでしょう。
(あれはどう考えても、普通の専業主婦のポケットマネーで出せる額じゃないですよ)

そういう不便がつのりつのって、引きこもりがちになる人の気持ちも分かるし、割と恵まれた環境で楽しく子育てしている人にコンプレックスを感じて、心を閉ざしてしまう人の気持ちも本当によく分かるんですよね。

「私だって、隣に実母が住んでいて、夕方になったら食事を作りに来てくれるような環境なら、こんな事でイライラしたりしねーよ!!」って。
いろんな事に腹立ったりしてね。

このしんどさって、味わったことのない人には、どんなに言葉を尽くしても分からない。
1日24時間、1年365日、10分だって子供から離れることができなくて、昼夜逆転で頭がガンガンしている時も、乳腺炎で40度の熱を出した時も、いついかなる時も、どんな時も、「自分で見なければならない」、「替えがきかない」、それを新生児の頃からワガママ・ジコチューの3歳児ぐらいまで、絶え間なく経験すれば、そりゃもう、プッチンキレキレ、ノイローゼにもなりますわな。

私はまだ、夫が定時帰宅で、お風呂もオムツ替えも買い物もいろいろやってくれますから、助かってますけど、もし深夜帰宅で、土日も妻に任せっきり……だとしたら、おかしくならない方がどうかしていると思いますよ、ホント。

そんな『異常な状況』を理解せず、「ああしなさい、こうしなさい」と宣うているのが、密室育児とは程遠いところにいる育児の専門家なんですよね(泣)

私たちは理想論や慰めが欲しいんじゃない、人手が欲しいんだ!!

この一言に尽きます。

税金を軽くしたり、扶助を増やしたり、そんなの、何の救いにもならんのですよ。

「そのうち、ラクになるから」なんて慰めの言葉も。

私はこの9月で、とりあえず完全密着の育児生活に終止符を打ったわけですが、やはりこの3年間の精神的ショック……というか、極限の状況を思うと、自分以外の人の為に泣けますね。
今、こうしている間にも、「つらい」「眠れない」「どうしたらいいか分からない」……って、苦しんでいる人があるのだろうなと思うと、いたたまれない気持ちになります。

しかし、一方で、こういう密室育児を経験して本当に良かったと思うんですよ。
日本にいたら、恐らく、密室育児や専業主婦とは無縁の生活を送っていて、そういう状況で苦しんでいる人のことを単なる「引きこもりママ」と片付けていたかもしれません。

そういう物の見方しか出来ない――って、人間としてすごく損なことでしょう。

そういう意味で、私には、密室育児も専業主婦生活も、本当に良い体験だったと思うんですよ。

それに、親は大変でも、子供にとっては、密室育児って天国なんですよね。

怒鳴られようと、当たられようと、子供は親と一緒に居たい。
24時間でも40時間でも、ベッタリくっついていたいのです。
ただ一緒に居るだけで幸せなんですよ、ほんとに。
「こんなイライラママと一緒にいても、子供が可哀相なだけ」と否定的に取る人もありますけど、子供って、誰よりも、何よりも、ママが好きで、たとえママが鬼みたいと分かっても、それでもママ以外の誰かが欲しいとは思わないんですよ。多分、一生。
(大人になっても親を恨んでいる人がありますけど、そんな人でも、親の愛を求めているんですよね)

「優しくしなければ」「楽しく遊ばなければ」……って、強迫的に追い詰められている人も多いですけど、そんなものは第一じゃないと私は思います。
ただもう、「母親と居る」というだけで、子供にとってどれほど大きな幸せであるか――
なぜそれを声を大にして言わないのか――
私はそこに「子育てに対する誤解」があると思うんですよ。

母親も、社会も、「~ねばならぬ」にこだわり過ぎではないか、と。

「何かすること」が子育てではなく、時間なり空間なりを共有して「そこに在ること」そのものが、子供にとって大きな心の糧であるはずですのに(英語で言うところのSTAYですか)。
今の子育ては、「する Do it」ことばかりに囚われて(親にも子供にも)、Stay togetherの良さを見失っているような気がします。
だから、今、密室育児で苦しんでいる人があったら、「何もしなくていいんだよ、子供と一緒にボーっとしてたらいいんだよ」って言ってあげたいですね。

あなたが、ただそこに居るだけで、子供には大きな支えなんだ――ってこと。

Posted by 阿月まり