壊れそうに美しい『Love Theme from Spartacus(スパルタカス 愛のテーマ)』ジャズ・ピアノの傑作 by ビル・エバンス

2017年11月3日音楽, ピアノの話題

息をひそめて聞きたい曲がある。

しんと静まりかえった夜、ボリュームを少ししぼって、枕元でそっと流したいような……。

『Love Theme from Spartacus』はまさにそんな曲。

邦題では「スパルタカス 愛のテーマ」と訳されるので、一見、歴史スペクタクルのドンチャンドンチャンしたシンフォニーかと思うけども、ジャズにアレンジされた方は、いかめしいタイトルから想像もつかないほど繊細で美しい。

音を抱きしめる──とでも言うのかな。

まるでガラスのように透明で壊れやすいから、一音一音、耳元でそっと聞かないといけない。

ふうっ、と息をついただけで、音がパラパラと砕け散ってしまいそう。

それほどに美しい曲。

初めてラジオで聞いた時は、ほんと、息が止まったね。

時間も止まった。

世界中のあらゆる動きが止まった。

音が透明な高みからこぼれ落ちてくる……というのは、まさにこのこと。

弾いているのはビル・エバンス。朝の光を紡ぐような、詩的な演奏で知られる。

死へまっしぐらとひた走る……というよりは、一歩一歩、そこへ憧れて昇ってゆくような生き様そのままに、重力感がない。

音の響きからして、この世を離れてる。

彼にとっては自己表現というより、天国への階段ね。魂で見る、この世の果て。

だから、私たちには、空気のように軽やかで、今にも壊れそうに感じる。

それでもなお美しいのは、彼の見ている先が、完全に浄化された世界だからでしょう。


あんまり美しいからって、泣くことはないのよ。

もう彼の方で、いっぱい涙を流してくれてるから。

私たちは、ほんのちょっと、心を波立たせるだけでいい。

それ以上、悲しんだりしたら、彼がもっと悲しむから。

今にも壊れそうな音のしずくを、そっと抱きしめるだけでいいの。

音の響きと一つになれたら、それでいいの。

大好きです。

*

他にもいろんなバージョンがあります。
「Love Theme from Spartacus」で検索してくださいね。

こちらがオリジナルスコアです。映画のサウンドトラック。

映画の紹介はこちら→目と目で見交わす名画の愛 カーク・ダグラスの映画『スパルタカス』

関連アイテム

上記で紹介している演奏が収録されているのが、このアルバム。
ビル・エヴァンスのCDも膨大で、同じ Love theme from Spartacus でも、アルバムごとに演奏のスタイルが違います。

上記の「スパルタカス ~愛のテーマ」が収録されたベスト盤です。
もっと聞いてみたい方はこちらの二枚組限定版がおすすめ。

ピアノの詩人ビル・エバンスが、2人のフルート奏者と共演した2枚の秀作をカップリングした徳用盤です。最初の7曲は、ジェレミー・スタイグと共演した1969年録音の名盤「What’s New」(Verve)。1曲目のブルースからホットに盛り上がり、「ホワッツ・ニュー」や「枯葉」などの名曲をアグレッシブに演奏、最後はマイルスの「So What」で再び頂点に達します。後半の6曲は、もうひとりの人気フルート奏者ハービー・マンと共演した1962年録音の「Nirvana」(Atlantic)。こちらは静かな曲が中心で、「I Love You」「Lover Man」のほかエリック・サティの「ジムノペディ」が聴きどころでしょう。

ジェレミー・スタイグのフルート・バージョンが収録されています。(Amazonで試聴可)
『枯れ葉』や『so what』など、スタンダードな名曲をスタイリッシュにアレンジ。アーバンな雰囲気の漂う一枚です。
やっぱ「スパルタカス」が一番秀逸だけど。