地殻の割れ目と生の哲学 ~グランドキャニオン編

2017年11月15日Notes of Life

グランドキャニオンは私のバケットリストの一つで、今回、ようやく訪問が叶いました。

凄い所だろうとは想像していたけども、実物は想像以上。ファインダーには収められない美しさでした。

こういう深い峡谷を見ていると、地球というものが人間には計り知れない長いスパンで動き、呼吸し、刻一刻と姿を変えていることを実感します。一見、不動に見えるものも、さらに高い視点に立てば一瞬の変化でしかないし、我々、人類も、宇宙のスケールから見れば虫の命に過ぎない。まして一個人の存在など、霞か塵か、何の意味もないかもしれません。

だとしても、この一瞬、地上に生を得て、美しいものに出会ったり、新しいことを考えたり、胸の震えるような体験をすることは、我々、人間にだけ与えられた大きな恩恵です。たとえ誰知る人なくとも、この地に何も残らなくとも、一瞬、一瞬を、想い、考え、作り出す。その過程そのものに、人生の意義があるのではないでしょうか。

グランドキャニオンは、生のままの大地、地球の息吹をそのままに感じられる世界でも希有な場所です。先住民がここを聖地と崇め、過酷な環境にもかかわらず住処とし続けた気持ちも解ります。夜明け、正午、日の入り、刻一刻と移り変わる峡谷の色合いを楽しみながら、自然と一体になって生きるのも、また素晴らしい人生だったでしょうよ。

人類が自らの過ちによって滅び去ったその後も、グランドキャニオンは何億年と続くし、最後は太陽系と運命を共にし、宇宙の塵に帰って行くだけ。そこに作為も見栄もありません。

だからこそ、大いなる自然を目の前にした時、人間は己自身を振り返り、謙虚と敬虔を感じずにいないのかもしれません。

グランドキャニオン

「神は六日間で世界を創造し、七日目にお休みになった」と言いますが、ここは今も分刻みで新たな造形を作り出しています。

グランドキャニオン

谷の奥底にちらりと見えるのが、グランドキャニオンを形作ったコロラド川です。数日かけてコロラド川をリフティングで川下りするツアーもありますが、摂氏40度以上の中、トイレも宿泊施設も飲食店も無い中、数日間、ぶっ通しで川下りするのは恐ろしくハード。私の知り合いの話では、ツアーに参加する前、一ヶ月以上ジムに通って、体力増強に努めたそうですよ。ほんと、最悪、死ぬからね。

グランドキャニオン

樹木に年輪があるように、大地にも年齢がある。ほんと、地層の見本市のような場所。こういう所は、地学者と一緒に来るべき。身内に、鉱物学や惑星物理学をやってる人があればなあ……。

グランドキャニオン

グランドキャニオンの素晴らしいところは、日の角度によって、刻一刻と色合いが変わるところ。
二十年間、毎日グランドキャニオンに通い、絵を描き続けた方もあるそう。

それにしても、プロのカメラマンは偉大だわ。日光があまりに強すぎると、かえって対象物の色がぼやけて、そのままを写し取ることができない。
天候が好いからといって、よい写真がとれるとは限らないだな。

グランドキャニオン

グランドキャニオン

グランドキャニオン

胸に去来する想いは人それぞれ。

ここまで来ると、どんな人も、大いなる存在に打たれたような気持ちになる。

はしゃぐ人もなければ、悪ふざけする人もない。ただただ、圧倒され、見入るばかり。

グランドキャニオン

人が命に「ありがとう」を言うのは、きっとこんな瞬間。今日もまた、一日が暮れていく。そして、今沈む日は、海の向こうでは朝日になる。

グランドキャニオン

峡谷の底に見えるのがコロラド川。人間社会の思惑など何の関係もないように、雨の日も、晴れの日も、ひたすら流れ続ける。

グランドキャニオン

おやすみ、世界。ありがとう、今日の日。

宇宙の片隅の一期一会。

たとえ私が世界から消え去っても、今日という瞬間、ここで出会えたことが、この地に生まれてきたことの意義。

グランドキャニオン

冒険とは細心のこと

「Discovery」や「National Geographic」などでサファリな男性リポーターを見ると、冒険する人は大胆で強靱というイメージがあるけども、実際には、繊細で、注意深い人の方が冒険に向くと思うのですよ。大股で歩くけど、内側がノミの心臓、みたいな。細部まで考えない人は、思いがけないところで過つし、自動車の運転でも、危機意識のない、「オレは走れる」みたいなタイプの方が事故を起こしやすい。小心者は、「そこの角から子供が飛び出してくるのではないか」と冷や冷やしながらハンドルを切るからね。

こちらはビジターセンターに掲げられた注意書き。

「自分自身に問いかけなさい。あなたは華氏100度(摂氏37度)以上の天候の中、4~10時間、ハイキングしたことがありますか? 1000フィート、峡谷を下るごとに、気温は華氏5度~10度、暑くなります(華氏110度=摂氏43度)。ハイキングを始める前に、レンジャー(係員)に状況を尋ねて下さい」

つまり、一般的な観光スポットは峡谷の上部にあり、当然のこと、谷底より涼しいです。登山やハイキングに不慣れな人は、その涼しさが谷底まで続くと錯覚し、無謀な長時間ハイクに乗り出して、途中で脱水や日射病で倒れてしまうんですね。グランドキャニオンの登山道にはトイレもなければ休憩所もなく、下れば下るほど、気温は上昇し、過酷な自然環境が待ち受けています。雷雨が襲ってきても、身を隠す場所もありません。コロラド川があって、涼しいだろうと思ったらとんでもない。川の外は灼熱地獄です(経験者談)。川に落ちても、川岸に上がれば、数時間で身体が乾ききるそうです。なまじ体力があると、何となくやれそうな気がするけども、非常にデンジャラスな場所なのです。

グランドキャニオン

ここにも本日のコンディションが明記されていますが、グランドキャニオンも場所によってまちまちですし、ベテランのレンジャーでも、いつ雷雨が来るかなど分かりませんから、本当になれた人でないと難しいと思います。谷底にも行ってみたいけどね。

グランドキャニオン