大人の優しさって何だろう ゴレンジャーを作った人たち

2017年9月15日アニメ&漫画

私と同世代の親で、子供時代に親しんだアニメを我が子と一緒に楽しんでいる人も少なくないと思います。

ヤマト、ガンダム、キャプテン翼、戦隊もの、etc

あの頃、自分が楽しんだように、我が子も喜ばせたい。

あの楽しさを我が子と共有したい。

子供には「アクションがいまいち」「美術セットがチャチ」「台詞が昭和っぽい」と感じるかもしれませんが、面白いものは世代を問わず面白いし、笑いや感動のツボも似たようなもの。

中でも、子供に大受けしたのが、『秘密戦隊ゴレンジャー』。

私も再放送に度に見てました。アクション、ギャグ、人情、友情、笑いの要素をぎゅっと詰め込んだ、完成度の高い子供番組でしたからね。

そんな折り、Amazonで見かけて、思わず購入したのが『ゴレンジャー大全』。

どんな人が、どんな思いで、あの番組を作っていたのか、無性に知りたくなったからです。

本書には、石ノ森章太郎の作画、当時販売されていたオモチャ、制作者のインタビューなどに加えて、全84話のエピソードと全怪人のプロフィール、予告編のナレーションまで掲載されている徹底ぶり。

情報の詰めすぎで、恐ろしく文字が小さいけど、好きな方には非常に読み応えがあります。

ゴレンジャーの魅力

ゴレンジャーの魅力は、なんといっても、お間抜け、かつ、ウィットに富んだユニークな怪人たちでしょう。

それでも、第一話から第十話ぐらいまでは、わりと真面目に「戦隊もの」してたんです。

でも、十話の中頃を過ぎた頃から、だんだん怪人が暴走するようになって、ストーリーもシリアスな勧善懲悪から、ドタバタ調のエンターテイメントに様変わり。

怪人の死に際も、十話ぐらいまでは単純に爆発してたのに、だんだん決め技が凝りだして、怪人も炎の中で辞世の句(?)を口にするように。「オレの時代は終わった」とか「オレはくやしぃ~~」とか。

怪人の名前も、最初は「黄金仮面」とか「武者仮面」とか、ごく普通だったのに、だんだん「パイナップル仮面」とか「ストーブ仮面」とか「蛇口仮面」とか、有り得ないようなキャラに進化。

とりわけ「テレビ仮面」「野球仮面」「機関車仮面」のシュールさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。

↓ ピアノ仮面。最後はリカちゃん人形が鍵盤の上を踊りまくり、「うわ~、そんな無茶な弾き方はしないでくれ~」と叫びながら爆発。
ゴレンジャー ピアノ仮面

↓ 電話仮面。途中で公衆電話に変身し、そうとは知らない若いサラリーマンが恋人に電話をかける。その後、怪人に戻った電話仮面が「あ~、もう、デレデレしやがって、ばばっちぃ~」と顔を拭く場面が笑える。
最後は、ゴレンジャーハリケーン・設計図=キック爆弾が変化した設計図が電話仮面の手中に舞い降り、「こりゃ凄い意力の爆弾だ。本部に連絡しよう」とダイヤルを回した途端、「うわ~、苦しぃ~」
赤レンジャー「ばーか、それはエンドボールの設計図だ」と嘲笑して、爆死。
ゴレンジャー 電話仮面

↓ ストーブ仮面。公団の一室に身を潜めたところ、外出から戻ってきた夫婦が些細なことで口論に。突然、ストーブが怪人に戻り、「まぁまぁまぁ、夫婦ゲンカはよしなさい」と諭す場面が秀逸。
「そんなことは I don’t know だよ」という台詞も好き。
ストーブ仮面 ゴレンジャー

↓ テレビ仮面。このシュールな目つきが好き。最後はエンドボールが『手』になり、テレビ仮面のチャンネルを回して「お・わ・り」と表示され、爆死。
テレビ仮面 ゴレンジャー

本作、最高の怪人、野球仮面。声は、故・永井一郎センセイです。

このシュールな眼差し。ボールの縫い目がさりげに『口』になっているのがええですな。

野球仮面 ゴレンジャー

野球仮面 ゴレンジャー

この回では、野球チームを結成。手下にも背番号が付いてます。

野球仮面 ゴレンジャー

対決も野球。打率10割とのことだが、三球三振で目を回し、「ついに引退の時が来たか~」と叫びながら爆死。

野球仮面 ゴレンジャー

機関車仮面も笑える。町中でこんなのがシュッシュポッポ、シュッシュポッポ、と言いながら走ってたら驚愕するわ。胸元にぶら下がっているのは石炭袋です。

ゴレンジャー 機関車仮面

走りすぎて、頭が熱くなったと喫茶店に水を飲みに来る。どこまでもシュール。

機関車仮面 ゴレンジャー

すごいなと思ったのが、黒十字軍総統を演じた安藤三男さん。最初、KKKみたいな白い頭巾を被ってたのだけど、「役者はTV画面に顔が映ってなんぼ」との思いから、顔出し総統に。

黒十字軍総統 ゴレンジャー

こんなヒトデみたいな被り物でも、やっぱり顔を映してもらいたいんですね。

自分の父親や旦那がこんなだと、私はちょっと複雑かも^^;

でも、役者さんは、やっぱり凄い。

黒十字軍総統 ゴレンジャー

黒十字軍総統 ゴレンジャー

大人の気遣いと子供の幸福

私がこの本を読んで一番感心したのは、当時の制作者=大人が子供のことをよく考えてた、って事です。

昔から子供相手の商売は盛んだったし、「あれ買って」とせがまれたら、ついつい財布の口が緩むのはいつの時代も同じです。

子供向けイベントにしても、マンガにしても、純粋に「遊びだけ」というのはなくて、どこか算盤勘定は見え隠れしている。

それでも「儲け心」と「子供の福祉」に折り合いをつけて、やり過ぎない範囲で知恵をこらしていた。

子供を欺し、堕落させてまで、がっぽり稼ごうという魂胆は見えなかった。

『商人の良心』とでもいうのでしょうか。

10円玉で買える節度は保っていたような気がします。

今は、私が子供の頃より、はるかにたくさんのオモチャやツールに恵まれ、公共サービスも以前と比較にならないくらい充実していますが(子供客に塗り絵のサービス、歯医者のTVゲーム専用ブース(治療中にはアニメも流れる)、子供向けのTVチャンネル、ショッピングセンターのプレイルームなど)、欲しいものが手に入らなかった時の飢餓感の強さは、今の方が百倍じゃないかな。

私の時も、「リカちゃんハウスが二つもある家」とか「オセロゲームも人生ゲームも持ってる子」とか、羨ましい人はたくさんいたけど、自分が買えないからといって、そこまでキーキーとヒステリックに叫んだり、人生に絶望感を感じたり、持ってる子を苛めたり、そこまでは無かったですからね。

無いなら無いで納得して、持ってる家の子に集合したり、各自オモチャを持ち寄りで何種類ものゲームを楽しんだり、子供の知恵でやり過ごしてきました。

今、つくづく思うのは、子供番組でも、雑誌でも、スーパーのイベントでも、「買え! 買え! 買って!」のPRが以前に増して強くなっていること。

町中でも、TVでも、至るところに子供の「欲しい」をそそるような宣伝があって、あんな強烈なメッセージに囲まれて暮らしていたら、欲しがらない方がどうかしてますよね。

自分が持ってないことに対する飢餓感も、以前はそれなりに諦めがついたけど、今はいずこも少子化で財布が潤っているせいか、子供も大人世代が「自分のオモチャ代」は持っていると認識して、「買えるくせに、買ってくれない」と悪く取ることが多い。

いわば、絶対的に物が少なかった昔に比べて、今は、たとえ親の懐に一銭もなくても、デパートのオモチャ売り場に行けばうなるほど商品が置いてあり、子供服ブティックでも、大人顔負けのお洒落なドレスやアクセサリが溢れんばかりに陳列されているから、子供は、社会=親=リッチ、と思い込んで、親が出し惜しみしているように受け取るんですよね。

欲しい物を買ってくれなかったら、親の愛情欠如と解釈し、ますます飢餓感を深めていく。

それに負けて、結局、買い与える親御さんも多いのではないでしょうか。

子供相手の商売で食べている人がいるのも現実だけど、やり過ぎたら、因果は自分に巡ってくるのも本当。

ゲーム代欲しい少年強盗に我が子が恐喝されたらシャレにならないし、遊んでばっかりで勉強しない、仕事もしない、生活不能者が増えたら、その社会保障費を負担するのは、その人自身ですからね。

今はマンガもアニメもゲームも、「子供を楽しませるもの」から「大人が楽しむもの」になっていて、そのこと自体はちっとも構わないのだけど、子供の福祉を欠いて、「大人が自己実現する手段」になってしまうと、それはもはや「子供向けの娯楽」ではなく、『大人の商品』に他ならない。

子供の福祉とは、「刺激が強すぎるのではないか」「かえって情緒不安にならないか」「犯罪に結びつかないか」といった、子供の成長や幸福に対する配慮です。

その線引きも難しいけど、どこに作り手の愛があるかは、作品や言動を見れば分かります。

制作者として利益を上げるのは最重要だけども、あまりに「儲かればいい」「自分が有名になればいい」といった、大人中心の価値観が透けて見えると、子連れは敬遠するのが当たり前。一時期、話題になっても、親子何代にもわたって、その作品のファンになることは難しいと思います。

今は、子供一代限りの娯楽ではなく、親子二代、孫三代と、一緒になって楽しむ人も多いですから、親子ファンを獲得すれば、その先、数世代のファンを獲得したも同じこと。一見、古くさいテーマでも、本当にいいものは何代にもわたって受け継がれますから、案外、古典的手法に則った方が手堅いかもしれませんよ。

ゴレンジャーも制作者のこだわりと、東映の商売っ気と、いろんな企図が絡んだ番組ですが、ネーミングひとつとっても、「こうしたら子供に分かりやすいんじゃないか」「こういうコスチュームなら子供も喜ぶんじゃないか」と、いかに子供を楽しませるかに大きなウェイトを置いていること。

また役者さんたちが、本当に「いい大人」で、子供番組のヒーローのイメージを損なわないよう、撮影の外でも気遣っておられたこと。

ドタバタやってるようで、ドラマはきっちり描かれていたこと。

当時の大人の気遣いが随所に感じられ、改めて感謝の気持ちを抱かずにいないほど。

「役者さんも、声優さんも、作り手も、みな優しかったな」と。

そういう大人の優しさの中で育ったのは本当にラッキーだったと、しみじみ思うこの頃です。

ゴレンジャー大全

インタビューの概要を紹介しときます。

岩佐陽一

「五人揃ってゴレンジャー」なんたる素晴らしい響きであろうことか。

※作品が成功した要因は二つある。ひとつはゴレンジャーというチーム・ネーム。ファイブレンジャーではなく、ゴレンジャー。
レッドレンジャーではなく、赤レンジャーだから、子供受けした……といった解説。

平山亨

モモレンジャー=ペギー松山というキャラクターの成功が心底嬉しかった。

※「スタイルがよくてアクションができる女性を」と条件を出したところ、マネージャーが連れてきたのがモモレンジャーの小牧さん。「アクションはやったことがないですけど、モダンダンスをやってました」と言うから、ちょっとキックしてみてよとお願いしたところ、足の付け根から上がるキックは綺麗な弧を描いて鮮烈だった……というエピソードなど。

田口勝彦

「人の裏をかくのが”悪”であり、それを考えるのが面白かったんです」

※当時の特撮の手作り感、役者さんの個々の役作りなど。

飯塚昭三&島田彰

飯塚「”言う”ことよりも”聞く”ことを学ぶのが大切だと思うんだ」
島田「自分が声を化けさせることを楽しまないと、観るほうにも伝わらないんです」

※声の演技で工夫したことなど

丸山詠二

あの頃の怪人とか怪獣はどこか人間味があってよかったんだよね。

※直接の周囲じゃないですけど、やっぱり舞台畑だと、子供相手のマンガだ、みたいにバカにしている仲間もいたんですよ。でも、僕は子供番組のほうが難しいと思うんです。付き合いとか、とらえず、とかいう感覚がない分、ずっとシビアな目を向けられますからね。面白くなければ、すぐそっぽを向かれてしまうわけでしょう……みたいな話。

ブルーレイ…

全84話、スケールアップして、ブルーレイ化!

約18000円!

ブルーレイ化で、初めて「本当の色」を知った。

それでもやっぱり、子供番組にしては格闘、爆発、武器使用が多いのは本当。手下の怪人を銃で撃ち殺す場面もあるけど、海外なら高確率でNG。スティーブン・スピルバーグの名作『E・T』も、激情公開では大人がピストル片手にE・Tを追いかけたけど、後に画像修正され、携帯電話に置き換わっています。

ちなみに、敵の下っ端の顔を仮面で隠すのは「これは人間じゃないんだよ」というのを子供にアピールする為だそうです。
ジョージ・ルーカスも同じ事を言ってましたね。