図書館の兄弟とエジソンの教え

2017年9月15日メルマガ書庫

今日、図書館に行ったら、小学生の兄弟とちょっとした知り合いになった。
兄ちゃんは、静かに椅子に腰掛け、好きな本を読みふけっていたが、弟くんの方は、書架と椅子の間を行ったり来たりし、てんで落ち着きが無い。

聞けば、弟くんは今、エジソンにはまっているらしく、エジソンの本を一所懸命探している。が、あいにく町の小さな図書館のこと、エジソンの本といえば、『発明競争エジソン』しかない。

「他にも、ベートーヴェンとか織田信長とか、面白いのがいっぱいあるよ」
と言うと、
「お医者さんの本がいいねん」
「じゃあ、シュバイツァーは? アフリカで人の為に尽くした、立派なお医者さんの話だよ」
「ちがうねん。科学のお医者さんの話がええねん」
「それならキュリー夫人とか、ライト兄弟は? HONDAの本田宗一郎の話も面白いよ」
と、あれこれ説明したが、弟くんはやっぱりエジソンの本が良いらしい。
『発明競争』の本を手に、「なあ、エジソンとベルって、どっちが勝ったん?」と聞いてきた。

「ベルが電話を思い付き、エジソンがそれを工夫して、今のような電話機を作り上げたんだよ」と答えると、兄ちゃんの方に嬉しそうに走っていき、「やっぱりエジソンが勝ったんや」と話していた。

エジソンの伝記は私も好きだった。
子供の頃、いろんな偉人伝をむさぼるように読んだけど、教師に「バカ」と切り捨てられながらも、必死に努力して、世界的な発明王となったエジソンの話は、一等お気に入りだった。

私がエジソンから学んだ事は、『最初の着想を決して諦めない粘り強さ』と、『自分の仕事に忠実であれば、必ず誰かが助けてくれる』という当たり前の道理、そして『自分が確信を持った事は最後まで貫き通す』という意志の強さだった。

とりわけ好きなエピソードは、自分の研究所が火事にみまわれた時、大事な資料や実験道具が灰になろうというのに、じっと炎の前に立ち続け、気遣う周りの者に、「滅多に見られない光景じゃないか」と揚々と語ったという話だ。

皆はてっきりエジソンが気が触れたものと思っていたらしいが、当のエジソンは、大事な研究所を焼き尽くす炎の中からも、新しい何かを見出そうと一心に目を凝らしていたのである。

偉大な功績を残した人々に共通していえるのは、闇を光に変える知恵と熱意と不屈の意志――自分の不幸からも何かを学び取れる高次な視点を有していたことだ。

そしてエジソンも、その最たる人だった。

弟くんがエジソンのどんな所に引かれたのか知らないけれど、幼い心にも、彼の強さや情熱は十分伝わってあまりあるにちがいない。

兄弟仲良く腰掛けて、大好きな本に見入る姿を遠くに見ながら、私は図書館を後にした。

今日の感動を糧に、いつか弟くんも立派な仕事を為してくれる事を願って――。

初稿: 99/04/18(日)  メールマガジン 【 Clair de Lune 】 より