愛の言葉  名作マンガ『愛と誠』より

2017年9月15日メルマガ書庫

11日、日曜日。
読売TVの『知ってるつもり』で、「巨人の星」「あしたのジョー」
などの原作者で有名な梶原一騎さんの特集をやっていた。
ちょっと強面の梶原さんだけど、「愛と誠」だけは、あの風体からはとても想像つかないような(失礼……)、真摯なドラマと美しい言葉が詰まっている。

*

早乙女財閥の美しき令嬢、早乙女愛は、品行方正、成績優秀、スポーツ万能と、全てに恵まれた私立名門学校のアイドル的存在。
そんな愛の心の王子様は、幼い頃、「魔のスロープ」と呼ばれる雪山で、身体を張って命を救ってくれた太賀誠だ。

が、誠は、愛のスキー板で額に三日月傷を付けられてから、病気、落第、両親の離婚、一家離散と、すっかり運命を狂わされる。

そして成長した二人が再会した時、愛が”王子様”と信じてきた誠は心がすっかり荒みきり、額の三日月傷を脅しの武器にして、ユスリ、暴力、何でもござれの不良少年に変じていた。
それでも愛は誠に償うため、有力者の父親に働きかけ、少年院行き寸前だった彼を救い出し、同じ名門校に転入させる。

ところが誠は愛の気持ちに逆らい、更正どころか問題ばかり繰り返す。
それでも愛は、雪降り積もる中、誠を引き止めてその理由を問い、「償いたい」と訴える。
すると誠は、彼女が差し出した傘を手に、

「こんなオレに誰がした?!
この三日月傷を付けたヤツだ!
もともとお前さんの傘だが、俺への思いやり気取りで手渡したが百年目、もう返してやらねえ。
俺は俺だけの雪の冷たさを守りゃそれでいい。
つまりそういうことを!
この世は自分だけ大事にしときゃいいってことを!
この傷が俺に教えたんだ!
こっぴどく!」

と、自分の不遇をぶちまけるのだ。

誠に付けたあまりの傷の深さに愕然とする愛。
それでも彼女は、身をもって救ってくれた幼い日の誠の心を信じ、その真心の為に償い続ける決心をする。
やがて誠が暴力事件を起こし、名門校を追放されると、愛は誠を追って、不良の吹きだまりのような花園実業高校に転校する。

その一途さを懸念した愛のパパは、立派な事業家だった祖父の事を引き合いに出し、
「お前のお祖父さんも、一度決めた事はとことん貫く強い信念の持ち主だった。だが形勢を不利と見れば、どんなに心血注いだ事業も、きっぱり切り捨てられる決断力があった。それゆえに今の早乙女財閥があるのだ」
と、愛を説得する。

それでも彼女は誠への愛を貫く為に、両親から離れ、家を出る決心をするのだ。

その時、両親にあてた置き手紙の内容がこれ。

おとうさま おかあさま。
お二人は私に「愛」と名付けてくださいました。
愛―― 
人を愛することだけは
この世を支配する法則とは別世界のものです。
この世の法則――それは人間が幸福に生きていくことです。
幸福に生きるために利益をあげ、不利益をさけることです。

でも愛だけは愛する人のために自分の不利益をも選ばせる力をもちます。

事業は利益追求の代表です。
ですから形成に応じて変化する必要もあるでしょうが、真の愛は不変です。

真の愛は報酬を求めぬ故に。
「愛は死よりも強し」
この言葉を最近ずっしり実感できるようになりました。
どうかしばらく旅立つことをお許しください……。

集英社KCコミックス
【 愛と誠 】 原作:梶原一騎
作画:ながやす巧

「愛」を語った言葉は数あるけれど、未だ、これ以上に胸を打つ言葉に出会ったことがない。

愛だけは 愛する人のために 自分の不利益をも選ばせる力をもちます

という一文が良いですね。

参考記事→梶原一騎の名作漫画 『愛と誠』

*

この世には、どうしようもない事がたくさんある。

ずるい事、愚かな事、汚い事、醜い事……数え上げればキリが無いほど。
が、それもこの世を支配する法則に適えば、それで良い。

自分の利だけを追求し、他人の事などいっさい無視して、突き進んでいけば良い。
何だかんだいっても、結局は、それが一番利口なやり方だから。
理想でメシは食えないのと同じで。

それでも、それでも、「心」には、この世の法則を超えるものがあると信じたい。
最後には、それが全てに勝ると信じたい。

そうでなければ、魂をもって生まれてきた事の意味が無くなる。



『本当に人を愛したら
自分自身が変わる』とカコちゃんが言った。
無知は英明に、盲は賢明に……
世界の色まで変わったりして――。
愛されるのも心地好いけど、愛するのはもっと悦ばしい。
ただ愛しているというだけで、幸せな気分になる。



何を得ても『幸せな気分』になれないのは、愛が無いから。

その希求を履き違えている人が余りにも多い。

なぜ愛するのかと問われたら、「訳など無い」と答えるしかない。
ただ愛しいから愛するのだと。

人間、思うにならぬ事が数え切れぬほどある。
だから苦しみ、傷つく。
迷いもすれば、悲しみもする。

そして、その苦痛と寂寥を感じるほどに、愛しさもまたつのる。

愛しているのは、その人の美しさではなく、弱さや淋しさの方――

心魅かれるのは美しさでも、愛を覚えるのは、その影――

目には見えない心の姿を、感性という光で照らし出せば、いつだって、そこに君の影を感じる。
ひしひしと胸にしみるような哀しさを。

そこで光を
ほんのひとたらし、ふたたらし……

波が静かに広がるように光が差して
――少しは明るくなりました?

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いろんな出来事があって
いろんな人の心の器を見る

*

「暑い」というから
ウチワであおいであげたら
それだけで
たまらん嬉しそうにしてた君

ウチワであおぐぐらい
一日中でもやってあげるのに……

今日もまた
君の悪口を聞いた
そう言われても仕方の無いことだった

いいものをイッパイもってるのに
どうして生かしきれないんだろう
君は……
見当違いの井戸をしゃにむに掘ってるうちに
いつか君の心が死んでしまうよ……

笑って
笑って
あの頃は――
あんなに楽しそうにしてたのに――
また しかめっ面してるのかと思うとたまらない

それでも
それでも
Marieの唯一の救いは
どんな状況になろうと
君が『沈黙』の中に誠実を貫いてくれると
心から信じられることだ

腹黒いタヌキと
口の巧いキツネに突つかれながら
Marieは今日も頑張っている

今となっては

君の純情がたまらなく懐かしい

初稿:99/07/25 メールマガジン 【 Clair de Lune 】 より