チャーリー・パーカーと映画『Bird』 伝説の「Lover Man」レコーディング

先日、クリント・イーストウッドの映画を探していたら、天才サックス奏者チャーリー・パーカーの伝記映画『バード』に行き当たった。

チャーリー・パーカーは「モダンジャズの父」と呼ばれ、勢いのあるアドリブで一世を風靡したが、若い頃から麻薬とアルコールに耽溺したため、35歳の若さで急逝する。

数ある名演の中でも特に知られているのが「ラヴァー・マン」のスタジオ録音。(ラヴァー・マンに関してはこちらの記事を参照→

パーカーは、スタジオ入りする前にウイスキーをガブ飲みして、泥酔状態のままレコーディングを開始した。

http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/o-style/jazz/070112.html

それはそうと,意識朦朧としたままでレコーディングはスタートした。1曲目は「マックス・イズ・メイキング・ワックス」である。パーカーとトランペットを吹くハワード・マギーとのユニゾンで始まるこの演奏は最初からばらばらの状態で,パーカーのソロも何とか最後まで辿りつけたという感じだった。

続いてパーカー自身の強い希望で「ラヴァー・マン」が演奏される。ピアノによるイントロの次に彼がテーマを吹くことになっていたが,演奏が始まらない。うとうとしていたのだ。やっと気がついたパーカーが何とか吹き始める。しかしアイディアが纏まるはずもない。最後まで演奏はしたものの,内容は支離滅裂で,閃きに富んだ日頃のプレイとはまったく違う。

そんな状態でもう2曲が録音されたものの,この日のパーカーは結局クリエイティヴなプレイをすることがなかった。しかしこの演奏は,のちに《ラヴァー・マン・セッション》と呼ばれ,研究者やファンからは珍重されている。

この後、パーカーは精神に錯乱をきたし、ついに病院で療養生活。

にもかかわらず、ラヴァーマンを吹き込んだレコードはリリースされ、今に語り継がれる伝説の名演となる。

こちらは映画『バード』で描かれたラヴァーマンの録音シーン。


こちらが実際に吹き込まれたチャーリー・パーカーの演奏。ピアノの伴奏が始まるも、二拍遅れて「あっ」と気がつく感じで始まるのがいい。
「泥酔」「朦朧」── 確かにそうかもしれないが、あるいはあっちの世界に行って、神様に遭ってたのかもよ。


私も名前だけは知ってたけど、じっくり聞くのはこれが初めて。ラヴァーマンと言えば、先に挙げた記事でもあるように、私が世界で二番目に好きなラブソングで、特に日本の有名なジャズ・ヴォーカリスト、阿川康子さんの濃厚なクリームみたいな歌唱が大のお気に入りだった。

ところが、パーカーのラヴァーマンは「Love」というよりズタ袋。瀕死の白鳥でさえ、もうちょっとマシな鳴き方をするのではないかと思うほど。

でも、皆さんが仰っるように、不思議な迫力と美しさに満ち、何度でも繰り返し聞いてしまう。

砂糖菓子のような甘さこそないけれど、夢の中に誘われる感じだ。

偶然でも、この曲の存在に気がついて良かった。とても気に入ったのでクリップ。

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モダン・ジャズの原点ともいうべきビ・バップの最大の巧労者であり,ジャズを語る上で欠くことの出来ない天才チャーリー・パーカーがCDで登場した。ここにはダイアルへレコーディングした1946年から1947年の全録音から,大和明氏によって,彼の最良のアドリブ演奏を各セッション毎に録音順にセレクトしてあり,よほどのマニア以外この37曲は満足のゆく選曲といえよう。あの有名な,酒でほとんど意識不明の状態での悲痛なセッションも,もちろん収録してあり,パーカー全盛時の神髄にふれることができる。