映画『ボクシング・ヘレナ』 愛する女を箱詰めに・・ / 『エニグマ』 サッドネス

2017年9月11日映画, 愛と耽美の映画

映画ファンの間では、「禁断の夢オチ(今までのことは全部夢、という終わり方)」を使った作品として、かなり酷評されているジェニファ・リンチ監督の『ボクシング・ヘレナ』。(「箱詰めヘレナ」の意味。ジェニファは鬼才デヴィッド・リンチ監督の娘さん)
しかし、私は好きでした。
ヘレナを演じたシェリル・フィンの妖艶な美しさと、美男俳優ジュリアン・サンズのダメ男ぶりが際だっていたからです。
そして、何より素晴らしかったのが、ジュリアン・サンズと行きずりの女性とのセックス・シーン。
全世界にセンセーションを巻き起こしたエニグマの名曲『サッドネス』に合わせて、ゴージャスかつ官能的な濡れ場が繰り広げられるのですが、これはもう女性監督ならではとしか言い様がない。非常に美しく感じました。

なのに日本での評価はイマイチ。
Amazonでも輸入物のビデオしか手に入りません。

しかし、秘かなファンは多いようで、You Tubeにもダイジェスト版がアップされています。

日本ではほとんど知る人のない、そして、これからも知られることはないであろう『ボクシング・ヘレナ』の世界について簡単にご紹介します。

※これもしょっちゅうYouYubeにあがっているので「boxing helena」で探してみてください。

STORY

優秀な外科医のニック(ジュリアン・サンズ)は、冷酷な母とのトラウマを抱え、女性恐怖症にさいなまれています。
しかし、ずっと以前に関係をもったヘレナ(シェリル・フィン)のことが忘れられず、夜な夜な、彼女の家を覗き見しては、一人でその欲望を満たしています。

そんなある日、ニックは交通事故にあったヘレナを救い出し、自宅に連れ帰ります。
そして、ヘレナを自分だけのものにしたくなったニックは、ヘレナの両足をわざと切断し、家に閉じこめていまいます。

ヘレナは隙を見て逃げだそうとしますが、ニックに取り押さえられ、その夜、ニックはとうとう彼女の両腕まで切断してしまいます。


ヘレナに性的不能を罵られ、人間としての非道さを詰られながらも、彼女の愛を勝ち取ろうとするニック。
そして、ある時、彼のイメージの中で、ヘレナが囁きます。
「あなたは何を恐れているの? 恐れないで、女性を抱くのよ」

彼女を悦ばせる為に、彼女の目の前で、行きずりの女性とセックスしてみせるニック。
それから徐々に、ヘレナも彼に心を開くようになり、ある夜、ヘレナの方から「私を愛して欲しい」と告げます。
二人は結ばれかけますが、そこにヘレナのボーイフレンドが乱入し、ニックの夢は潰えてしまうのでした。


こちらがエニグマの大ヒット曲「サッドネス」をバックに華麗に繰り広げられるラブシーン。
この感性は女性監督ならではのものでしょう。
ヘレナの心まで濡らすようなエロティックな演出です。
(濃厚な性描写が含まれます。年若い方はご注意ください)

Boxing Helena Sexy Scene / Enigma “Saddness

こちらにも隠れヘレナ・ファン(?)による解説がアップされています。
どちらも読みごたえのある記事なので、ぜひご覧くださいね。

おちゃのま*しねま 「ボクシング・ヘレナ」
http://plaza.rakuten.co.jp/mirai/diary/200411280000/

「A Study of Julian Sands」
http://homepage2.nifty.com/lovelovejs/boxing.html

解説

『ボクシング・ヘレナ』は、今風に言えば、「監禁もの」とでもいうのでしょうか。
好きな女性にまともな手段で近づくことが出来なくて、暴力的に閉じこめ、独占し、愛情を得ようとする心理は、日本の猟奇的な事件に共通する部分があります。
ただ、『ボクシング・ヘレナ』の場合は、一方的に服従させるのではなく、ニックはニックなりに、懸命に彼女に尽くし、幸せにしようとした点で、いわゆる「監禁もの」とは根本的に違うと思います。

社会的には裕福で、才能にも恵まれた外科医が、実は、女性恐怖症の性的不能者で、自分だけの隔絶された世界の中で幸せを掴もうとする姿は、現代の男性の心の歪みを物語っているような気もしますが、実際のところ、どうなのでしょうね。
私としてはお薦めの映画なのですが、日本では書籍『ボクシング・ヘレナ』しか手に入らないみたいですね。残念です。

母親の愛を得ることなく育った青年医師ニックは、美しい女性ヘレナに嫌われながらも彼女のことを思い切ることができない。
そんなある日ヘレナが目の前で交通事故に遭う。ニックはヘレナを自宅に運び、手足を切断して監禁してしまう……。
幼年時代の母親のイメージがトラウマとなっていて、そのせいなのか缶ジュースの飲み口を一度ふいてから飲んだりする妙に潔癖な所はなんとも不気味で印象に残る。監督のJ・リンチはデヴィッド・リンチの娘で、本作がデビュー作品。
マドンナが出演を拒否し、キム・ベイシンガーが途中降板したといういわく付きの映画だ。
一般の評価はものすごく低いけれど、私は好きだった。何と言っても四肢を切断され、異形の女となってしまうヒロインを熱演したシェリリン・フェンが素晴らしくセクシーで美しい。
キム・ベイジンガーやマドンナより、ずっとはまっているのではないか。
また潔癖症で、セックスに強い不安を持つ青年医師役のジュリアン・サンズも、「情けないマザコン男」を見事に演じきっている。
『タイタニック』で男臭いお宝ハンターを演じていたビル・パクストンが、マッチョで直情径行のセクシー男を演じているのがミソ。
ストーリー的には、禁断の「夢オチ」のせいで評価ががくんと下がるのだけれど、『性』というものを素直に見つめれば、その秘められたメッセージを感じることができる。
セックスしたくても出来ない子供のような青年医師を軽蔑していたヘレナが、最後は聖母のように彼の心の傷を受け止め、自ら愛を求める場面は神々しいばかり。
また、ヘレナを悦ばせる為に、彼女の目の前で他の女性とセックスして見せるシーンでは、エニグマの名曲「サッドネス」(ロックとグレゴリオ聖歌の融合で世界的な大ヒットとなった)が非常に効果的に使われ、稀に見る美しい濡れ場だった。
今はもう輸入盤のビデオしか入手できないのが残念。

*

こちらが、全世界にセンセーションを巻き起こし、グレゴリオ聖歌ブームに火を付けたと言われる、エニグマの大ヒット曲『サッドネス』。ロックとグレゴリオ聖歌を見事に融合させた名曲です。
『ボクシング・ヘレナ』のラブシーンで非常に効果的に使われていたので、てっきり映画のオリジナルかと思ったら、エニグマの代表作でした。
音楽の独創性と新しさにおいては、他に並ぶ物がないエニグマ。
リラクゼーション・サウンドとしても世界中で絶大な人気を博しています。


こちらは、sadnessの続きに歌われる「ミア・カルパ」。
こちらも宇宙的な広がりを感じさせる名曲です。


関連アイテム

本作は90年発表のファーストで、クレトゥのソロプロジェクトである。
ヨーロッパにある再現可能な最古の音楽、ローマカトリック教会のグレゴリオ聖歌をサンプリングし、ダンスのリズムやビートにのせるといった、それまで考えにも及ばないようなタブーへのチャレンジを見せてくれた。
幽玄のなかの美を見出したようなサウンドは、ヨーロッパのクラブシーンを中心に大ブレイク。
世界中を震撼させるのに、さほど時間はかからなかった……。

ジュリアン・サンズのセックス・シーンのあまりの美しさにノックアウトされて、すぐに買いに走ったのがエニグマの『サッドネス』。最初は、誰の何という曲なのか見当もつかなかったが、CDショップで「グレゴリオ聖歌とユーロビートの融合」というキャッチコピーを見てすぐに分かった。それぐらいインパクトのある音楽である。
エニグマの曲はどれも独特の世界観があって、聞き惚れる。

Photo : http://www.moviehousememories.com/boxing-helena-1993/