背徳の美愁・映画『アナザー・カントリー』 ~もう女は愛さない~

その昔、「やおい」と呼ばれ(今もそうだが)、どこの誰がやっているか分からない通信販売で、あるいはアマチュア作家が「先生」と呼ばれて一日に何十万単位もの売り上げを記録するオタクのコミックマーケットで、こそこそと売られていた同性愛小説が、今では「BL(ボーイズラブ)」と呼ばれ、すっかり市民権を得ているらしい。

……っつーか、得るなよ。

あーいうのはコソコソやるから面白いのであって、おおっぴらに紀伊国屋のような大型書店の店頭で売られ、40代や50代の女性が恥ずかしげもなく買っていくボーイズラブ小説なんて、「同性愛」じゃないやいっ!

……と、古くからの「お耽美ファン」は思ったりもするわけです。

男が男を愛するって、そんな簡単なものじゃないと思う。

現実であろうが、文学の中の話であろうが、どこかに禁断の要素があるからこそ、美しい男同士の愛が際だつんではない?

竹宮恵子の『風と木の詩』も、萩尾望都の『ポーの一族』も、「好き」とおおっぴらに言えない部分があったから、ファンは萌えた。
作品の神秘性があった。

それがさ。

大型書店の店頭に平積みにされてごらんなさい。

味気ないよ。

それって「同性愛」を描いたものじゃなくて、ただ単にオカマみたいな受けキャラに自分の願望を投影して、結局は、男女の恋と同じ性質のものを追いかけているだけじゃないの――と私は言いたくなる。

本物は、懊悩する。

背徳と禁断の罪にふるえて、目を合わすことさえ躊躇われる。

まして××なんて――。

そんな苦悩の翳りのないBL小説なんて、ただのレディコミSMAP版じゃないか……なんて言ったら、全国津々浦々のBL小説ファンに殺されるのかな^_^;

*

私はやはりオーソドックスな「同性愛」ものに惹かれる。

背徳の罪におののきながらも、相手の心も肉体も求めずにいない禁断の恋に美しさを感じる。

たとえば、一昔前のオタク女史が涙を流して悦んだ、ルパート・エヴェレット主演の映画『アナザー・カントリー』。
英国のパブリック・スクールを舞台に繰り広げられる学生同士(お前ら本当に高校生なのか~と言いたくなるような嘆美)の権力闘争と、心ならずも道を踏み外し、共産主義の友人に感化されてソ連のスパイへと転身する美青年ガイ・ベネットの孤独と恋は、
芸術的なまでに儚く、美しい。

もう女は愛さない I will never love women.」

という、全国の腐女子が泡ふいて卒倒しそうな強烈なキャッチコピーが、実は、俳優ルパート・エヴェレットの本音だったことを近年になって知り、改めてこの作品をじっくり見直したという人も少なくないはずだ。

私が公開当時に買ったルパート・エヴェレットの写真集のプロフィールには、「好きな女性のタイプ:今度はいつ会えるのだろうと不安にさせる女性」と書いてあったものだが、あれは、実は、「好きな男性」のタイプだったのね。嘘ツキ。。。

そして、彼に見初められる、これまたカワイコ系美青年ケアリー・エルヴィスが天使のように愛らしいこと。

二人が口づけを交わすでもなく、また愛を囁きあうわけでもなく、揺れる小舟に乗って身を寄せ合う場面は、天下の竹宮恵子先生にもちょっと描けないだろうな~と思うほど甘美でロマンチック。

敵対する生徒の罠にはまり、
「なぜいつもの手を使わなかった? (=もし不都合が生じたら、自分と肉体関係のあった男子生徒の名前をバラすというガイの常套手段)」
という親友ジャドの進言に対し、
「そんなことをしたら、ジェームズ(恋人)まで破滅する。『遊び』なんかじゃない、真剣に愛しているんだ」
と涙ながらに訴えるガイ。

そして、その言葉通り、敵対する生徒達の目の前でみじめに鞭打たれ、権力闘争に敗れるのだが、プライドが高く、人一倍野心家のガイが、そうまでしてジェームズとの恋を守りたかったのか……と思うと、胸キュンを通り越して、come to me の気持ちになってしまうんである。(女の所には来ないのだが……)


STORY

物語は、二人の少年が、物置で愛し合っているところを舎監に見つかってしまうショッキングなシーンから始まる。

進級を前にして、学内で最高の権力グループである幹事入りへの野心に燃えるガイ・ベネット。
親友で、共産主義に傾倒するジャドは、そんな彼の野心を「奴隷根性」と嘲る。

そんな二人の耳に飛び込んできたのが、舎監に同性愛の現場を見つかって、首つり自殺してしまった下級生マーティンの悲劇だった。
騒然とする学内を抑えるために、幹事はもちろん、学内で強硬な力を振るうファウラーの管理がいっそう厳しくなる中で、かつてガイの同性愛相手だったデラヘイは、「君も気を付けろ」と忠告する。


しかし、ガイは、美しいジェームズ・ハーコートに一目惚れし、すれ違いざまに彼のポケットにデートの申し込みのメモを忍ばせる。紳士淑女の集う高級レストランで秘かに落ち合う二人。
ガイは孤独だった。
たった一人の身内である母親とも、父親の腹上死の現場を目撃してから上手くいっていない。
そんなガイの心の内に優しく耳を傾けるジェームズ。
二人が惹かれ合うのは必然だった。

アナザーカントリー

まあ、これだけ美しい男達が「男だけ」で集っていたら、そりゃあ同性愛者にもなりましょう。

でも、イギリスの上流階級の子弟って、本当にこんな感じなのかしら。
どきどきしますね♪

関連アイテム

英国の厳格なパブリックスクールの寮生のガイは、表向きは優秀なエリート候補だったが、陰では美青年好きの同性愛者だった。その事実を知った寮生は、彼を追い込んでいく。やがて彼は復讐を誓い、親友の共産主義に染まっていく…。
この作品で、ルパート・エヴェレットがブレイクし、耽美好きの女性ファンを熱狂させた。
表向きが上品で清らかな見えるほど、同性愛の事実が艶かしく映り、見つめ合う美青年たちにドキドキさせられる。
まるで少女漫画のような世界だが、主人公のガイは、実際に起こったスパイ事件の中心として名を残した人物。
もともとは舞台劇で、ガイの親友を演じたコリン・ファースは舞台ではガイ役で出演している。

初めてこの映画を見た時、しばらく食事が喉を通らなかった。
舞台も、俳優も、物語も、あまりに麗しくて、その余韻から抜けきれなかったからだ。
何と言っても、若き日のルパート・エヴェレットが美しい。
彼に寄り添うコリン・ファースも男らしくて格好いいし、ルパートに愛されるケアリー・エルヴィスも可愛くて、もう溜め息でまくり。
やはりイギリスの殿方はスタイルがいいよね。首が長く、背筋が猫のようにしなやかで、両足が地に向かって真っ直ぐ伸びていて。それでいて知的、うっとりするほどエレガントなのに、いざとなると恋人を軽々と抱き上げるような強さを秘めている。同じこの世の男性とは思えません^_^;
私はこの作品でルパートが左手の小指に幅広のシルバーリングを付けているのを見てから、ピンキーリングをするようになりました。
もう溜め息しか出てこない、麗しい一品です。

【Amazon レビューより】
みずみずしく、透明、耽美的、繊細な美、なんと表現したらよいのでしょう。
登場人物も景色も音楽もみな美しくて、芸術的なのです。
感嘆に値する、というのでしょうか。
主題はパブリックスクールでの少年達の権力抗争がメインのようです。
同性愛はこのお話をさらに艶っぽくしてました。
実在した人物をもとにしているとか。その時代や政治主義のこと、上流社会のことなどいろいろ考えさせられました。

伝統的な服装や思考の中で苦悩するガイに親近感が沸きます。実はジャドもなかなか色気がある。二人が議論しあう所が好きかな。双眼鏡で庭を眺める姿も素敵。そっと寄り添いながら夜を過ごす時間が羨ましい、私が男でないのが残念。

強く関連する記事

「非実在青少年」アニメ・マンガ表現規制 と 竹宮恵子「風と木の詩」
The Paris Macth / スタイル・カウンシル ~世界で三番目に好きなラブソング ~

これも見て欲しい

「ただの友達」のつもりだったマイケルが、突然、他の女性と結婚すると知って、はじめて彼への愛に気付いたジュリアン。
結婚式まで、あと4日。
大金持ちの令嬢で、顔よし、性格よしの婚約者(キャメロン・ディアス)からマイケルを奪回できるのか──?
ラブコメはほとんど見ない私も、これだけはディスクを買うほど気に入っている作品。
主演のジュリア・ロバーツはじめ、キャメロン・ディアス、そしてジュリアンの友人であり、ゲイの編集長でもあるルパート・エヴェレットの爽やかな演技が楽しめる。
みんな、きらきら輝いて、とても幸せな気持ちにさせてくれる、上質なコメディ。

冴えない30代シングル、ブリジットの率直な気持ちを綴った共感度いっぱいのラブコメディ。
コリン・ファースも素敵な独身男性として登場。
でも、「ジャド」のイメージがあまりに強くて、なんか意外な感じも。
コリンは、にこにこ笑うより、どこか突き放したような、それでいて優しいキャラクターがよく似合います。

Leave a reply: