音楽

失った恋にさ迷って ~松任谷由実の『届かないセレナーデ』

2010年9月27日

どんなに尽くしても、一所懸命に「いい女」であろうとしても、恋というのは失う時には失うし、愛されないものはどうしようもない。

それこそ彼氏に何遍手をついて、「私のこと、好きになってください」とお願いしても、一度醒めた人の心は1ミリだって動かいものだ。

でも、若い女の子は無知だから、全部「私のせい」と思う。

謝れば、もう一度、私に振り向いてくれる。

彼の心が醒めたのではなく、私の接し方が悪いのだ、etc。

そうして、しつこく、しつこく彼氏の後を追いかけて、もっと傷ついてしまう。

どこかで悟って止めればいいのに、諦めきれない。

彼と出会えそうな場所、出会えそうな時間帯に、ついふらふらと出かけてしまう。

ならないケータイを握りしめて──。

*

恋というのは、終わる時には終わるもの。

それを受け入れられないのは、女の子に魅力がないからではなく、人の心やこの世の物事にまだまだ無知だから。

いい年したオバサンにもなれば、「そういう時もあるさ」と腹を括って開き直る図太さもあるけれど、10代、20代の若い女の子には、あれほど自分を好きだと言ってくれた男の気持ちが180度変わるなど、絶対に理解できないだろう。

頭では薄々分かっていても、認めたくないし、受け入れたくもない。

そんなこと認めたら、「アナタには女の子としての魅力はありません」「アナタは誰にも愛されない、ミジメな女の子なのよ」って永遠に言われそうな気がして。

それは寝ても覚めても恋愛一色で、彼氏にドバっと自分を懸けてしまう女の子にとって、生命線を絶たれるのも同じこと。

彼女たちは、まだまだこれから先も生きて行かないといけない。

なのに、人生の出鼻で「お前、ダメだな」と言われたら、いったい何を心の支えに未来に向かって行けばいいのか。

ただでさえ無知で、無力で、世の中のどうしようもなさが理解できないお年頃、それは酸いも甘いもかみ分けた大人には想像もできなくらい衝撃的な出来事だったりする。

だから、周囲の人間は『失恋』ってものを甘く見てはいけないし、女の子自身もそれですべてを判断しちゃいけない。

また必要以上に自分を責めてもいけない。

いつか「分かるようになる」その日まで、自分が抱えている痛みとか淋しさとか悔しさを、一つの心の体験として持っておくことだ。

慌てて元気になろう、強くなろうとしても、かえってトラウマになって残る。

それよりユーミンでも聴いて、しばらく、どっぷり失恋の世界に浸ってみよう。

世の中にはそういうバカな女の子の気持ちも理解してくれる人がいるってことが分かるし、あなた一人が恋に傷ついているわけでもないと思える。

失恋の特効薬は、「失恋も人生の意義ある体験の一つ」と思えるようになること。

無意味な反省会や彼氏の心を取り戻すための策略に時間を費やすよりはね、多分、もっと前向きになれると思うよ。

*

LOVE WARS』に収録された『届かないセレナーデ』は、失恋した彼のことが忘れられず、夜の都会をさまよい歩く女の子の気持ちがせつなく謳われている。

もう会えない、会ってはいけないと分かっていても、大好きな彼の面影を追って出かけてしまう気持ち。

すれ違う人、遠くに見える人、もしかしたらあの人? と期待に目をこらしても、会えるわけがない。

そう分かっていても、ここに居れば、もう一度、やり直せるような気がして、ぐるぐる同じ場所を廻り続ける。

ごめんなさい 人違いです
逃げるようにして渡る 信号

いつまでも断ち切れぬ想い。

何処にも突き抜ける先がない。

だから今もこの場所に、抜け殻みたいに立ち尽くしす。戻ることも、進むことも、出来ぬまま──。

あなたと暮らした町で 今年も暮れて行くわ

※ 動画は削除されました

こういう痛みも、いつか、みんな、思い出に変わる。

思い出になった時には、「こういうことを経験してよかったのだ」と心の底から思えるようになる。

永遠に失恋している人などない。

失恋は、死に神の宣告ではなく、経験の一つに過ぎないのだ。

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