ユーミンのカセットテープ(昔はこう呼んでいた)を作る時、必ず一番最初に吹き込む曲がある。
それは『曇り空』。
「荒井由美」さんだった時代の作品で、伝説のデビューアルバム『ひこうき雲』に収録されている。
煙るようなモノトーンのイントロからぐいぐい歌の世界に引き込まれてしまう。
派手なフレーズがあるわけでもなく、凝った歌詞が並んでいるわけでもない。
朝、目覚めた時の気持ちを、ぶつぶつ綴ったような何でもない曲なのだけど、何度聞いても「飽きる」ということがない。
「そうだ、今日はユーミンを聞こう」と、数あるカセットテープの中から『ユーミン・ブランド』と背中に書かれたケースを取り上げ、デッキにセットして、PLAYボタンを押す。
二階の窓を開け放したら 霧が部屋まで流れてきそう
それはまるで「曇り空」そのもの。
煙るような淋しい日にも、こんな優しい瞬間があったのだ──と思い出させてくれる。
人は孤独や哀しさを嫌うけど、それも人間の美しい感情の一つだと思えば、生きることがいとおしくなる。
きまぐれだって おこらないでね
本気で好きになりそうだから約束だけは気にしてたけど
急にやぶってみたくなったの
誰かに強く引き寄せられながらも、ふと背中を向けたくなることがある。
もっと自分を知って欲しいのに、これ以上踏み込まれるとかえって辛く感じられる瞬間だ。
それを「きまぐれ」と言われたら、そうかもしれないし、振り回される方はたまったものじゃないと思う。
でも、それぐらいの我が侭は許してよ……と、甘えられるのはアナタだけ。
人を好きになるのは、せつないこと。
だから余計で距離を置きたくなる気持ち、分かるような気がする。
昨日は曇り空。外に出たくなかったの
シンプルな言葉とフレーズの繰り返しなのに、なぜこの曲はこんなにも心に染みるのだろう。
まるで水に溶かしすぎたような水彩画のように、ぼやけて見える窓の向こう。
曇っているのは涙のせいじゃなく、今すぐ誰かに愛されたいわけでもない。
ただ、何となく、一人のままこうしていたい──。
そういう心象風景を描いた、傑作だと思います。
ひこうき雲 (CD)
by 荒井由実
価格: 1,982円 18点の在庫あり 中古価格 1,545円より
細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆らによるキャラメル・ママの全面参加で完成をみた、1973年11月リリースのユーミンの記念すべき1stである。シンガー・ソングライター=フォーク歌手といった風潮にあってのデビューであったわけだが、それまでにないスタイリッシュでセンシティブな音楽性は多に類を見ないもので、本作を引っ提げての彼女の登場というのは、日本のミュージック・シーンに新たな時代の到来と、ニュー・ミュージックというカテゴリーの誕生をもたらした。<2>は松任谷正隆のサイド・ヴォーカルが妙。(春野丸緒)
世代を超えて聞き継がれるユーミンのデビューアルバム。
アコースティックでシンプルな作りがら、胸が痛くなるほど映像美にあふれ、彼女の歌に自分の青春を重ね見ない人はないのではないかと思う。
「雨の街で」も泣かせる曲。
ほっとしたい時、優しい気持ちになりたい時に聞きたいアルバム。
今は絶版になってしまったけれど、荒井由美さん時代のヒット曲がずらりと収録されたベストアルバムの第2弾。
これもテープがすり切れるぐらい聞きました。
カセットテープは「MP3」になり、「お気に入りカセットラック」はiTUNEに変わったけれど、ユーミンはいつ聴いてもいい。



