ユーミンのカセットテープ(昔はこう呼んでいた)を作る時、必ず一番最初に吹き込む曲がある。
それは『曇り空』。
「荒井由美」さんだった時代の作品で、伝説のデビューアルバム『ひこうき雲』に収録されている。
煙るようなモノトーンのイントロからぐいぐい歌の世界に引き込まれてしまう。
派手なフレーズがあるわけでもなく、凝った歌詞が並んでいるわけでもない。
朝、目覚めた時の気持ちを、ぶつぶつ綴ったような何でもない曲なのだけど、何度聞いても「飽きる」ということがない。
「そうだ、今日はユーミンを聞こう」と、数あるカセットテープの中から『ユーミン・ブランド』と背中に書かれたケースを取り上げ、デッキにセットして、PLAYボタンを押す。
二階の窓を開け放したら 霧が部屋まで流れてきそう
それはまるで「曇り空」そのもの。
煙るような淋しい日にも、こんな優しい瞬間があったのだ──と思い出させてくれる。
人は孤独や哀しさを嫌うけど、それも人間の美しい感情の一つだと思えば、生きることがいとおしくなる。
きまぐれだって おこらないでね
本気で好きになりそうだから約束だけは気にしてたけど
急にやぶってみたくなったの
誰かに強く引き寄せられながらも、ふと背中を向けたくなることがある。
もっと自分を知って欲しいのに、これ以上踏み込まれるとかえって辛く感じられる瞬間だ。
それを「きまぐれ」と言われたら、そうかもしれないし、振り回される方はたまったものじゃないと思う。
でも、それぐらいの我が侭は許してよ……と、甘えられるのはアナタだけ。
人を好きになるのは、せつないこと。
だから余計で距離を置きたくなる気持ち、分かるような気がする。
昨日は曇り空。外に出たくなかったの
シンプルな言葉とフレーズの繰り返しなのに、なぜこの曲はこんなにも心に染みるのだろう。
まるで水に溶かしすぎたような水彩画のように、ぼやけて見える窓の向こう。
曇っているのは涙のせいじゃなく、今すぐ誰かに愛されたいわけでもない。
ただ、何となく、一人のままこうしていたい──。
そういう心象風景を描いた、傑作だと思います。
世代を超えて聞き継がれるユーミンのデビューアルバム。
アコースティックでシンプルな作りがら、胸が痛くなるほど映像美にあふれ、彼女の歌に自分の青春を重ね見ない人はないのではないかと思う。
「雨の街で」も泣かせる曲。
ほっとしたい時、優しい気持ちになりたい時に聞きたいアルバム。
今は絶版になってしまったけれど、荒井由美さん時代のヒット曲がずらりと収録されたベストアルバムの第2弾。
これもテープがすり切れるぐらい聞きました。
カセットテープは「MP3」になり、「お気に入りカセットラック」はiTUNEに変わったけれど、ユーミンはいつ聴いてもいい。
ツイートSuper Best Of Yumi Arai 荒井由美ベスト盤
ユーミン初期の傑作がすべて網羅されたベスト盤。世代を超えて心に響く名曲ぞろいです。
Neue Musik 松任谷由実ベスト盤
ドラマやCMで使われたヒット曲はもちろん、ファンには忘れがたい30曲を収めた2枚組ベスト盤です。
Comments
私は「雨の街を」派でした。
「ひこうき雲」は別格として(これはあなたのイーストウッド映画と同じでシンドイ)、
映像美溢れる楽曲でした。少女趣味の極致と言っても良い。嘘も貫き通せば真実が見えてくるように、少女趣味も極めれば「凄み」があります。
矢張モノトーンでエッチングのような画面を、後姿の少女が蛍のように点滅しては現れ地平線の彼方へと消えてゆくのです。
確かに美しい楽曲は絵画的であるのかもしれません。こころに残る絵から旋律が聞こえてくるように。
私もタイムリーに「雨の街を」のレビューを書いていました。
あの頃のユーミンの作品は、ほんと、女のコらしい世界を歌っていると思います。
私も無料動画をいろいろ見ますが、
ユーミンの楽曲には、自分のオリジナルのフォトを合わせている人が実に多い。
(他のアーティストはライブの映像だったり、ジャケ写真だったり、ですが)
誰もがイメージを掻き立てられるんですよね・・。
こんにちは、はじめまして。hiroと申します。
先日偶然”calling you”の検索で貴方の素敵なブログを見つけてから、お気に入りに登録させていただきました。
高校生の時にユーミンのこの1枚目のアルバムが出て、たしか3枚目あたりまでは聞いていました。 最近になってYouTubeなどで当時の音楽を見つけては聴いたりしています。
もう数十年前の話ですが、それでも今聞いても新鮮で、また当時のいろいろな出来事を思い出して切なくなったりします。
バクダッドカフェのコラムも素敵でした。
普段あまり書込みしませんが、また拝見させていただきます。
hiroさん、こんにちは。
メッセージをありがとうございます。
ユーミンのヒット曲はたくさんありますが、やはり「荒井由美さん」時代の曲に気持ちは帰って行きますね。
あれほど聴く人の心に共感する歌を作る人も希有だと思います。
バクダッドカフェもご覧いただいたんですね。
本当にありがとうございます。
うちのブログ、ヤクザな記事もいっぱいありますが^_^;
ゆっくり楽しんでいってください。