今日の敗者は、明日の勝者

先日、あるサイトを見ていたら、「今の若者は覇気がなさすぎ VS 夢を持とうにもお先真っ暗」なバトルが繰り広げられ、コメント欄が壮絶なことになっていました。

実際、「頑張れば、来月はカラーTV、来年は自家用車、二年後はグアム旅行」と段々にグレードアップした時代に比べたら、超高齢化、孤独死、派遣切り、年金破綻、等々、暗い話ばかりで、夢だの希望だの言っておれないのが現実だと思います。

でも、一方で、忘れないで欲しい。

世の中のシステムも価値観も、いつか必ず変わる、ということ。

一年、二年の短いスパンでは無理だけども、十年前の非常識は十年後の常識に変わるし、二十年後には誰も全く予期しなかったサービスや製品が登場して、人間の価値観もライフスタイルも根底から変えてしまう。それだけは確実です。

実際、1980年代、1990年代にも、パーソナルコンピュータの到来は予測されていましたが、『スマートフォン』の形態まで正確に言い当てた人は皆無です。概念はあっても、スマホでどんな事が可能になるか、具体的に思い描けた人はごく少数でしょう。

私がPCを始めた1997年頃、仕事の問い合わせでメールを使うと、「失礼なヤツ」と言われてました。時候の挨拶から始まって、電話やファックスで筋を通すのが礼儀だと、オジサン達に叱られてたのです。

でも、今は逆ですよね。「忙しい時に電話するな、業務連絡ならLINEで十分」という流れに変わっています。メールさえも「長い、くどい」と嫌がられる時代です。

海外の企業と仕事をするのも、昔は、電話料金を気にしながらNTT国際通話でしたけど、今はSkypeで無料通話が当たり前、契約書やインボイスのやり取りも、メールやDropBoxで一瞬です。いちいち海外郵便を使っていた時代が嘘のようです。

また、その頃は「24時間戦えますか」で、国際線で飛び回るビジネスマンが憧れでしたけど、今は国をあげて時短の方向で進み、企業戦士も会社人間と軽蔑され、「我が社に人生を捧げる」とか、いつの戦国時代?ですよね。

女性の価値観やライフスタイルも大きく変わりました。私が学生時代は、ナントカ都議みたいに、女子大生が深夜番組に出演して、男の数自慢、貢がせ自慢をするのがイケてる証でしたけど、今時、あんな番組を見て、心底憧れる女性の方が少数でしょう。 クリスマスにヒルトン? 誕生日にティファニーのオープンハート? お立ち台でパンツ見せながら踊るのが格好いい? ぎらぎらして気持ち悪い・・ そういう感覚に変わってきてますよね。

また、バブルでいけいけの頃は、若者が社会について語れば「ネクラ」だの「イチビリ」だの言われて、小馬鹿にされ
るのがオチでした。というより、何も考えてなかったですよね。でも、今は「社会起業家」のように良い風に解釈されて、子供食堂や復興ボランティアといった形で地域に貢献している若者もたくさんいらっしゃる。その点も、この数十年で大きく変わって、「昨日の笑いものが、今日の賢者」になっています。

こんな厳しい時代だからこそ、何が大事で、何が幸せか、じっくり考えることが可能になってきたのです。

そんな風に、今、この瞬間の価値観や常識など、数年後、十数年後には大きく揺らいで、まったく新しいものに置き換わります。

ある意味、若い人は、「昔の不便」や「昔の不条理」を知らないから、「今」と「未来」のポテンシャルを推し量ることが苦手なのだと思います。

たとえば、GoogleもAmazonも、今は当たり前のように存在して、何がどう凄いのか、まったく実感がないでしょう。

でも、マッキントッシュやWindows95から連なる、長いスパンの中で、ITの進歩を目の当たりにしてきた人には、その凄さが実感できるし、「昔の不便」を知っているからこそ、未来のポテンシャルについて熱く語ることができる。

昔、『北斗の拳』を買うのに、恥をしのんで書店のレジに並んでいた私からすれば、Amazonのワンクリックで好きなコミックが購入できて、その日のうちに自宅に届けてくれるなんて、夢のような時代だし、そこまで進化したなら、次は「廃刊になった書籍の電子化再版」「デジタル図書館」「ページの切り売り」etc、もっと出来る!! と、夢が膨らむんですよね。

その点、若い人は「時間をかけたダイナミックな変化」を経験してないから、「社会の価値観もライフスタイルも、あっという間に変わるよ」と言われても、いまいち実感できないと思います。

今、見ている、この瞬間が全て。

専門家や有名人が語る未来が、情報の全て。

その中で、暗い現実や暗い予測が目に付けば、それが全てと思い込み、この先も何十年と変わらないような錯覚に陥ってしまう。

喩えるなら、中学生で失恋して、「人生、終わった・・」と嘆き悲しむのと一緒。

30過ぎの恋愛豊富なお姉さまから見れば、中学時代の失恋なんて、傷のうちにも入らない。生きていたら、また良い人は現れるし、「こんな私でも結婚できました♪」という巡り会いの不思議を経験するからです。

もちろん、不況や増税、少子高齢化など、個人の努力ではどうにも変えられない深刻な問題も多く存在します。

でも、一方で、世界全体には予期せぬことが次々に起こり、世の流れは確実に変わってきています。

こうしている間にも技術は進歩し、5年後、10年後には、誰も想像もしなかったようなサービスや商品が再び登場して、また新たな価値観が生まれるかもしれません。

誰も幸福を予測し得ないように、不幸も100パーセントは当たらない。

高齢化や人口減少の影響も、もしかしたら、想像以上に小さいかもしれない。

日本は大変だ、大変だ、と騒いでいるけども、海外ではトントンと持ち直して、また新たな経済の仕組みができるかもしれないんですよ?

松田聖子(さやかのママ)のプロマイドが受験生の部屋を飾っていた頃、ソビエト連邦と東欧の共産主義圏が終焉し、ワールドトレードセンターにテロの飛行機が突っ込み、東芝やSHARPが赤字に転落し、中国産のスマホが世界中に席巻し、アイドルの歌がYouTubeで無料で視聴できる時代など、誰も想像しませんでした。

それと同じで、今、専門家の描く未来が100パーセント的中し、今の若者が悲惨な目に遭うというシナリオがどこまで現実になるか、誰にも分かりません。

一つだけ確かなのは、5年後、10年後には、また予期せぬ事が起こり、人の価値観もライフスタイルも変わって、今日の敗者が明日の勝者になる可能性が出てくるということです。

*

「どうせ頑張っても報われない」のは、どこの世界も同じです。

日本のみならず、先進国も、中進国も、手を叩いて喜んでる方が少数でしょう。

私が住んでいる町も、若者の失業率は20%超えで、いよいよとなれば、大都市に行くか、移民になるか、起業するか、どこかで大きな決断しないと生きていけません。カルパチアの寒村に行けば、時給いくらのバイトすらなくて、ちょっと勉強を頑張ったぐらいでは到底抜け出せない過疎の生き地獄が待っています。

ただ一つ、日本と決定的に違うのは、『正規の移民ルート』が存在し、その気になれば、いつでも生まれついた共同体を抜け出して、より大きな可能性に飛び込んでいけることです。(国境破りではない)

周りを見回せば、「親戚や知人が先進国で働いている」という人が当たり前に存在して、聞けば、いくらでもノウハウやを教えてくれる。気のいい人なら、「一度、オレの所に様子を見にこいよ」と誘ってくれて、宿泊や食事の心配なく、外国の事情を自分の目で見て確認することができます。大学生が夏休みを利用してドイツ在住の伯父さんの家に泊まり込み、現地でアルバイトを経験して、手応えを見る……というような感じです。

いわば、共同体そのものは壊滅的だけども、四方八方に脱出ルートが延びていて、しかも親切に手引きしてくれる人があちこちに存在する。ドイツにはドイツの、アメリカにはアメリカの、同胞コミュニティがあり、常識を弁えた人間であれば、誰もが歓迎されて、仕事の口利きから移民手続きのヘルプまで、親身に手伝ってもらえるのです。そのあたり、華僑に似ているかもしれません。

対して、日本は、手頃で明確な脱出ルートもなく、親身に世話してくれる在外コミュニティもなく、日本で生まれたら、日本という枠の中に閉じ込められ、その中でぐつぐつ煮詰まっていくだけですよね。

同じ貧困状態でも、どこかしらに抜け道があるカルパチアの若者と、袋の口をぎゅっと閉められた日本の若者では、閉塞感や絶望感がまったく違うと思います。

右を向いても、左を向いても、どこにも脱出口が見えなければ、「何をやっても無駄」と諦めムードに陥るのも当然かもしれません。

でもね。

世の中のシステムも、価値観も、いつかは変わります。

最近、バーチャル・リアリティやAIがよく話題に上りますが、それだって具体的に何が出来るようになるのか、100パーセント確実なことは分かっていません。「こんな事ができるでしょう」という想像だけで、それはパーソナルコンピュータ以前の「予測の話」と同じです。

いざ、実用化されたら、今まで考えもつかなかったようなビジネスが生まれ、人々の暮らしも、友だち付き合いもがらりと変わるでしょう。

その時にはスマホでさえ古いと感じ、今隆盛をきわめているものが、まったく別のものに置き換わっていると思います。

私は今日、Spotifyでスティングのニューアルバムを聴きましたけど、私がEnglish man in New Yorkやシンクロニシティに夢中になっていた時、スティングの新曲を自宅のパソコンで聞く日が来るなど夢にも思いませんでした。

当のスティングでさえ、自分の楽曲がネットで切り売りされ、瞬く間に世界中で(タダで)視聴される日が来るなど、夢にも思わなかったでしょう。ここではCDは完全に終わりました。代わりに勢いづいているのは、アーティストやレーベルではなく、Spotifyのような配信サービスです。

今日が20年前なら、私はレコードショップに足を運び、StingのCDを買うついでに、他のアーティストのCDも衝動買いして、帰りにマクドナルドのハンバーガーでもかじっていたかもしれません。でも、今日、私は繁華街に行く必要はありません。自室のパソコンでSpotifyの再生ボタンをクリックするだけです。恐らく、世界中のスティングのファンが、CDショップではなく音楽配信サービスにお金を払い、スマホ片手に満足したことでしょう。カフェに立ち寄ることもなく、他にどんなアーティストが売り出しているのか、興味をもつこともなく。

そんな風に、世の中がどんどん移り変わる中で、「終わった」と諦めるのはまだ早い。 

今の若い人が、40代、50代になって、今を振り返った時、その変わりようにきっと驚くはずです。

そして、おじさん、おばさんになってから、あの時、もうちょっと頑張っていたら・・と後悔しても、もう二度と、若くて体力のある時代は戻ってきません。

夢も希望も持ちにくいけれど、一方で、今日の敗者が明日の勝者になる可能性は残されていますから、どこかに小さく希望の星は持っておいて欲しいと思います。

私たちバブル世代は、戦前・戦中派のおじさんに、こんな風に叱られました。

「おまえ達は平和のありがたみを知らない。飢えや空襲の恐怖にさらされることなく、勉強に集中できる環境にありながら、その恵みを当たり前のように享受して、遊んでばかりおる!!」

でも、私たちはこう反論してきました。

そんなもん、知るか。

今は時代が変わったんや。

戦中派のおっさんの、しんきくさい説教は聞きたくない。

今しか遊べる時はない。遊んで何が悪い。

そして、遊んで、遊んで、遊びまくって、なーんもしてこなかった人が、今、若い子から何と言われているか。

「バブルの上司は働かない」「社畜」「老害」etc

さて、今の若い人たちは、おじさん、おばさんになった時、下の世代から何と呼ばれるでしょうか。

*

大きな事など成し遂げられなくてもいい。

生活レベルでは低空飛行でも、なんとか身を立てて、他人にも親切にできる余裕があれば十分。

その中で、何かしら、楽しんだり、チャレンジしたり(趣味でも仕事でも)、いろいろ取り組む中で、時代の流れが味方してくれることもあります。

でも、その手応えを得るには、本屋や図書館に通ったり、イベントに出掛けたり、友だちに会ったり、町中で困っている人に手を貸したり、自分から手足を動かすことが必要だよ、という話です。(どうせ何をやっても無駄と開き直るのではなく)

スティングのニューアルバム↓

関連記事

労働相談苦情処理システム(3) 労働訴訟等にかかる資金の貸付制度 以下の資料は2000年に調べ物をしていた時に入手したものです。現在の内容とは異なりますし、自治体によって労働相談のサービスも異なりますので、あくまで参考にご覧ください。 職場で問題が生じた時、いきなり労働監...
政治家 たんに就職しただけ 文:中野 翠 満月雑記帳より サンデー毎日00/07/23号 政治家、特に自民党の政治家の言動を見るたびに、私の頭にはある一つの言葉が浮かぶのだった。「就職」という言葉である。 あの人たちはべつだん政...
私は電子の海で産まれた新たな生命体 ~スティーブ・ジョブズの訃報に思う~ 私が子供の頃──昭和50年代の話──『コンピューター』と言えば、機械化帝国の地下の奥深くにあり、その全容は霞ヶ関ビルより大きく、ものすごく複雑なキーボード操作が必要で、まさに『SF小説の産物』。自分達の日常生活には絶対に...
「公平」という名の不公平 医療に限らず、教育でも、飲食業でも、どこの業界でも、「クレーマー」「モンスター○○」が問題視されています。 でも、それは今に始まったことではなく、遠い昔から商売人(サービスや公職を含め)は「難しいお客さん」に頭を悩...

Site Footer

Sliding Sidebar

プロフィール

阿月まり

看護職を経て、旧共産圏に移住。
映画・音楽・本・漫画が大好きなオタク主婦です。
趣味は登山とドライブ。欧州の韋駄天を目指してます。
詳しくは<a href="/profile">プロフィール</a>を参照のこと。
お問い合わせは<a href="/mail">メールフォーム</a>からどうぞ。
<a href="/sitemap">サイト内の記事一覧</a>
Tumblrミニブログ「<a href="/sitemap">Poetry 言葉の倉庫</a>」