映画

「時は金なり」「貧乏ヒマなし」人生とは時間そのもの 映画『TIME/タイム』

2012年1月12日

科学技術の進歩によって、人間の生体は25歳で成長を止めることが可能になった。

だが、しかし、25歳を過ぎると、与えられる時間は「1年」限り。大半の人間は労働し、通貨の代わりに「時間」を稼がなければならない。一方、裕福な「時間もち」は、100年も200年も生き長らえ、あくせくした労働とは無縁の生活を送っている。

文字通り『時は金なり』の世界観をリアルに描き出した近未来SF映画「タイム / TIME」(原題は In Time)。

セクシーなパフォーマンスで人気を集めるジャスティン・ティンバーレークが主役をつとめ、映画「インセプション」でアイデアを植え付けられる御曹司をクールに演じたキリアン・マーフィーや、映画「マンマミーア」でキュートなヒロインを演じたアマンダ・セイフライドが個性的な魅力を醸し出している。

ハリウッドのSFアクション大作を見慣れている人には、映画全体に漂うB級っぽさが物足りなく感じるかもしれないが、与えられた時間の中からバス代を支払い(乗車一回2時間)、高級車を買い(一台59年)、貨幣の代わりに持ち時間をやり取りするユニークな設定は見応えがある。

また、貧しいスラムから富裕層の町にやって来て、優雅なランチを楽しむ主人公のウィル(Will。未来形の名前)に、美人のウェイトレスが「あなたは外から来たでしょう?」「どうして分かる」「だって、動きが忙しいもの」と答える場面など、ブラックな会話も満載だ。

作品としては、ドラマに重きを置いたのか、アクションや展開を見せたいのか、どちらも中途半端な印象があり、「もう少しテーマを掘り下げてもよかったのでは・・」という感想が否めないが、『時は金なり』の世界観は上手に描けていたのではないかと思う。


……そう、まさに『時は金なり』なのである。

「お時間もち」の富裕層はともかく、社会の底辺で毎日僅かな「時間」を稼ぐためにあくせく動き回るスラムの人々は、決して心穏やかではない。
たとえば今の日本社会で全財産を失っても、とりあえず生存の権利は保障されるが、この世界では持ち時間が尽きれば死ぬしかないのだから。
その証拠に、道端には、タイムアウトから命尽きた人のボディがあちこちに転がっている。人目に触れぬ場所でひっそりと死を待つ人もいる。どんな事情があろうと、持ち時間がゼロになればそれで終わり。容赦ない。

そんな過酷な世界で、「100年」もの時間を得たウィルは、命を懸けて富裕層の町「ニューグリニッジ」へと乗り込む。

その100年を与えたのは、老いることもなく死ぬこともない人生に絶望しきった富裕層の男だった。

追っ手から逃れる男と古びた建物で一晩を過ごしたウィルが目覚めた時、窓に書かれていた言葉は「Don’t waste my time」。ここでの意味は「僕があげた時間を無駄にするな」。

それは映画の世界でなくても同じ事。

人生とは、まさに『時間』。お金に換えられるものではない。

金持ちも貧乏人も、与えられた時間は「一日24時間」。みな平等だ。

もっとも金持ちはあくせく働く必要もなく、医療費や美容費にも湯水のようにお金を注ぐことができる。

一方、貧乏人は、1円でも稼ぐ為に朝から晩まで働きづめに働き、まさに「貧乏ヒマなし」を地でゆくような生き様。

ただ生きる対価となるものが「貨幣」であるというだけで、実質的には、腕に持ち時間が刻まれた映画のスラムの住人と変わりない。金持ちが10年の歳月を遊びに使えるとしたら、貧乏人は一日の休みもなく──なのだから。

『人生の格差』というのは、着る物や食べる物や住まいに現れるのかもしれないが、本当のところは、「人生に対する余裕」ではないかと思ったりもする。もし、働かなくても、着るにも食べるにも困らないとしたら、自分の好きなことだけして、世の中の楽しい部分だけを享受することが出来る。でも、そうでない場合は、生きる為に、やりたくない仕事をし、無茶な要望にも堪え、私生活を犠牲にしても仕えなければならない。「仕事が生き甲斐」というけれど、果たしてそうか? もしかしたら、働かなくても世の中の美味しい部分だけ味わえる人に比べたら、そんな悦びは微々たるもので、生き甲斐という言葉で自分を慰めているだけではないのか?

だとしたら、本当の不公平は、悦びとか、余裕とか、心に現れる格差であり、「働いて稼がねば」と考える時点で、すでに多くのものを損しているのではないか──と思ったりもする。

もっとも、着るにも食べるにも何の不安もない、遊んで暮らせばいいような富裕層にも虚しさや絶望は存在し、映画の中では、その極みにいる男が、100年の持ち時間をウィルに与えて自殺するわけだが、それでも1分1秒を惜しんであくせく働く人間の余裕のなさに比べたら、彼らの絶望など流感みたいなものだ。

そう考えると、私たちは、お金を得る代わりに、人生の本当の醍醐味や魂の幸福というものを、自分の気付かぬところで片っ端から盗まれているのかもしれない。「仕事が生き甲斐」といっても、この社会に存在する以上、何かに繋がれ、左右されている部分は絶対にあるはずだから。

「時間」という人生最大の財産。

普段意識しないけれど、あなたは本当に自分の心の幸福のために使っているといえるだろうか?

様々な理由の中に、時を無駄に消費しているのではないか?

『TIME/タイム』は、そんな庶民が意識しない時間の価値を目に見える形で描き、その本質や使い方を問いかける、非常にユニークな作品である。

だからこそ、時間に追われる人間の葛藤、逆に、時間はたっぷりあるけど満たされない人間の虚しさみたいなものを、もっともっと掘り下げてドラマにして欲しかった。

前半がいい線いってただけに、後半のヒネリがちょっと物足りなかった私です。

§ ジャスティン・ティンバーレーク

私がジャスティンを知ったのは2006年。世界中で大ヒットした「セクシー・バック」のMTVがきっかけです。
最初はよくあるクラブ系のアーティストだと思っていたら、次々にリリースされる楽曲の個性に目が釘付け。
とりわけ素晴らしいのが、官能的な美人女優スカーレット・ヨハンソンを相手役に迎え、昔のヨーロッパ映画風の演出で注目された「ワッツ・ゴー・アラウンド」。歌声もセクシーならメロディも綺麗。これは本当におすすめの曲です♪


モノトーンの演出が美しい『Let Me Talk To You/My Love』。最初はクラブ風のサウンドで始まりますが、途中でメロディアスなバラードになります。一糸乱れぬバックダンサーの踊りと、ジャスティンのパフォーマンスが素晴らしい。


世界中で大ヒットした「セクシーバック」。スパイ・アクション風の演出とスリリングな男女の絡みが秀逸。
こういうキャリアがあるから、「タイム/TIME」の主役にも抜擢されたんでしょうなあ。
今後が楽しみなアーティストです。


マドンナと共演した『4 minits』もノリのいい曲です。この時、マドンナ50歳。奇跡のような肉体です。


§ CD

若きスーパースター、ジャスティン・ティバーレイクが、約1年をかけてレコーディングした待望のセカンド・アルバム。2004 年グラミー賞2 部門(最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンス、最優秀ポップ・ボーカル・アルバム)、2003 年MTV ビデオ・ミュージック・アワード3 部門、2003 年アメリカン・ミュージック・アワードなど数多くの賞を受賞。

上記で紹介した「セクシーバック」「ワット・ゴーズ・アラウンド…~…カムズ・アラウンド」「マイラブ」などが収録。ジャスティンの魅力がぎゅっと詰まった一枚です。
ジャスティンは曲にも恵まれてるのね。どれも個性的です。

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