異色の名作『タクシードライバー』 / ロバート・デニーロ&ジョディ・フォスター

マーチン・スコセッシ監督というと、「ギャング・オブ・ニューヨーク」や「アビエーター」を連想する人が大半かもしれませんが、彼の真の代表作は、ロバート・デニーロ主演の『タクシ・ドライバー』だと思います。

私から見れば、スコセッシ監督は、これ一作で世に出て、これ一作で燃え尽きたという感があり、どこをどうあがいても『タクシー・ドライバー』を超える傑作は生まれそうにない──という気がするのですが、どうでしょう?

それくらい、この映画と主演したロバート・デニーロ……というより、主人公の『トラヴィス・ビックル』は、映画史に残る、強烈なインパクトを持ったキャラクターなのです。

これは若きロバート・デニーロの出世作にして、天才ジョディ・フォスターの名を世に知らしめた異色の名作なんですね。

こんなこと言ったらファンに怒られるかもしれないけど、『タクシー・ドライバー』を見ずして、「ロバート・デニーロがいい」とか、「ジョディは演技派だ」なんて言わないで欲しい。

それくらい傑出した、現代映画を代表する作品なのです。

作品の魅力

ロバート・デニーロ

『タクシー・ドライバー』は、それまでの映画に無かったドキュメンタリー・タッチを取り入れ、独自のリアリティを生み出しました。

大統領選挙を通して世相を皮肉り、血まみれのバイオレンスを描きながらも、行き場のない若い魂の苦悩や葛藤を描いたこの作品は、観客のみならず世界中のクリエーターを刺激し、今なお、似たようなショットが撮られたり、パロディ化されたりして、不滅の輝きを誇っています。

一方、元アメリカ大統領(ロナルド・レーガン)狙撃事件において、犯人の男に「ジョディの為にやった」と言わしめた問題作でもあり、同世代の若者に与えた影響の大きさは測りしれません。

私が『タクシー・ドライバー』を知ったのは、バーナード・ハーマンによるテーマ曲がきっかけでした。
都会の孤独を映し出したようなサックスのソロが素晴らしく、夜に一人で聞いては、トラヴィスの内面に思いを馳せたものです。(生まれて初めて買ったCDがこの映画のサウンドトラック盤でした)

ベトナム帰りの若い兵士で、不眠と頭痛に悩まされるタクシー・ドライバーのトラヴィスは、大統領選の運動員である白いドレスを着たベッツィに一目惚れします。
しかし、初めてのデートで彼女をポルノ映画に誘って嫌われ、トラヴィスの心はますます孤独と迷いの中に落ちていきます。

そんな時、トラヴィスは、混沌とする夜の街で少女娼婦アイリス(ジョディ・フォスター)に出会います。
まだあどけない少女を言葉巧みに操り、客を取らせては稼ぎをピンハネする麻薬売人スポートに憎悪を抱いたトラヴィスは、ついに銃を手に取り、「腐敗しきったこの街をオレが浄化してやる」と、麻薬と売春の巣に乗り込みます。

激しい銃撃戦の末、アイリスを救い出し、一躍、ヒーローとなったトラヴィスの前に再びベッツィが現れますが、トラヴィスはもう二度と彼女に関心を示すことはなく、夜の街へと去っていくのでした……。

名場面

拳をガスコンロにかざして、腕の筋肉を鍛えるシーンや、ジャケットの袖の中に小銃を仕込むシーン。
モヒカン刈りにサングラスという出で立ちで(これはいろんな人が真似してます)、大統領候補の暗殺を試みるシーンや、一人で敵を想定して射撃の練習をするシーンなど、今に語り継がれる名場面も多く、思い詰めたような眼差しの奥に、不可解な狂気をはらんだロバート・デニーロの演技はまさに白眉のもの。

また、当時13歳とは思えないジョディ・フォスターのシャープな魅力や、『ゴッドファーザー』ではクールなコンシリオーリ(顧問弁護士)を演じていたハーベイ・カイテルが、ここでは薄汚いポン引きになりきっているなど、脇の固めも申し分なく、「よくこんな奇跡的な作品が出来たなあ」と感嘆せずにいません。


こちらが数多くの作品でコピーされたり、パロディにされたりしている、映画史上に残る名場面です。
人によっては「どこが」と言いそうですけどね。
デニーロの演技をよく見て下さい。
この鋭さ、迫力、狂気。
主人公トラヴィスの魂が見事に凝縮されている一コマです。


これも映画史上に残るエンディング。
少女娼婦を救い出し、一躍ヒーローになったトラヴィスを尊敬の眼差しで見つめるベッツィですが、トラヴィスは二度と関心を示すことなく走り去っていくという究極のカッコ良さ。
ラスト、料金を払おうとしたベッツイに、ざくっとメーターを切って、さりげなく拒絶の意を示すトラヴィスの仕草は心憎いばかり。
この「美女を振る」という設定も、当時としては斬新だったと思います。
残念ながらドイツ語版しかアップされていません。
バックには、トム・スコットのサックス・ソロによるテーマ曲が流れています。
本当に美しく、クールな名曲です。


こちらは、町のダニ共を一掃する為に、身体を鍛え始めるデニーロ。
全身からにじみだすような狂気が秀逸です。


サウンドトラック

映画『タクシー・ドライバー』の第二の魅力は、何と言ってもバーナード・ハーマンによる音楽でしょう。
気怠い夜のNYとトラヴィス・ビックルの彷徨える魂を物語るような美しいサックスや、白いドレスをひるがえして颯爽と生きるベッツィーのテーマなど、サウンドトラックだけでも十分にその世界が堪能できます。


Jazzyなメロディが素晴らしい。『I work the whole city』
途中で入るサックスのソロと、スネアドラムが泣かせる。(このリズムを刻むのはかなり難しいと思う)


関連アイテム

上記にも書いていますが、私が生まれて初めて買ったCDがこのサントラ盤です。
魂の震えるようなトニー・スコットのサックスに痺れること数十年。
今もその魅力は色褪せることがありません。音楽だけで酔ってしまう、名盤中の名盤です。

おすすめは、

14.タクシー・ドライバーのテーマ
15.アイ・ワーク・ザ・ホール・シティ
16.白いドレスのベッツィー
17.人生は淋しく
18.タクシー・ドライバーのテーマ

Amazonサイトにて試聴できます。ぜひぜひぜひ!聴いて下さい。

【Amazonレビューより】

「タクシーは動く密室で、孤独のメタファーである」と原作者のP.シュレイダーが語っている。
苦しいほどにその通りである。大勢の人たちの中をかき分け走る。
しかし彼らと直接ふれあうことはない。乗客として室内に迎え入れても決して人間関係ができる訳でもない。限りなき断絶。人混みの中の孤独。他人をただガラス越し(室内では鏡越し)に「眺める」ことしかできない。
そして私も、たった1人、他の車もまばらな夜の道をこのCDを聴きながら運転するのだった。
甘いバーナード・ハーマンの旋律が少しは救いだ。映画もこの美しい音楽によって、そのおぞましい孤独世界が救われていた(トラヴィスを救ったのはベッツィでもアイリスでもなかったのだ!)。
映画音楽の力。
キャリアの最後に見せたバーナード・ハーマンのグレート・ワーク。

*

この映画をしびれるほどに好いている人は多いと思う。
ビデオショップでこの傑作をレンタルすれば、映画館の暗闇でポルノを眺めたり、部屋の中で白黒のブラウン管を見つめていたトラヴィスに心情一致することはできるかもしれない。
でもやはり汚れたN.Y.の裏街道を流しているトラヴィスの気分に浸りたいのだ。
それにはやはりこのサウンドトラックをかけて夜をドライブすることに尽きる。
そしてあなたもまたタクシードライバーなのだ。
〈追伸〉映画にも採録されなかった曲が幾つかあって絶対に「買い」です。
それにしてもこれほどまでにB.ハーマンのテーマソングは偉大だったのか、と改めて感じ入ります。
サントラは映画本編とは別個の魅力があるのですが、このCDは凄みさえ感じます。
ただし孤独は必ずしも悪いものではありませんが、あまりにはまってしまうと危険です。
この映画、そしてサントラにそんな麻薬的側面があることには気をつけて

ロバート・デ・ニーロ&マーティン・スコセッシのコンビによる映画史の流れを変えた衝撃作。
映画史上、最も力強く心に深く染入るクライマックス。
そしてデ・ニーロの演技とスコセッシの演出が本作を比類ない作品に仕上げている。

私もブルーレイで買いました。
日本語吹き替え版も収録されて二度美味しいDVDです。

トラビス 宮内敦士
ベツィ 井上喜美子
アイリス 木下彩華

Photo : http://desktop.freewallpaper4.me/download/7546/taxi-driver-1976

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