書籍と絵画

大宰相・田中角栄 編 ~さいとうたかをの劇画

2010年10月6日

夜の世界に詳しい私の友人がよく言っていた。

「男は、お金が手に入ると、今度は権力が欲しくなる」

「男の嫉妬は、女の嫉妬とは比べものにならないくらい深く、激しい」

残念ながら、その生々しい現場を見る機会はなかったけれど、「お金はどこまでいっても”金”でしかない」というのはいろんなサラリーマンから聞かされた。

私たち庶民から見れば、うなるほどのお金があるだけでも羨ましいのに、そんなものはある世界においては紙くず同然、人が頭を下げるのはやはり名誉と権力だという。そして、名誉と権力があれば、お金はいくらでもついてくるのだそうだ(確かに)。

そう考えると、『総理大臣』という肩書きは、やはり特別な響きを持っているのだろう。

総理大臣と言っても、自分一人の実力でなれるわけじゃなし、なればなったで、自分を支援する組織や団体のために傀儡のように働かなければならない、そんな一見最高の権力者に見えて実は操り人形のような生き方、どこが魅力的なんだろと思うけど、死んで墓場に入る時、「元・総理大臣」として葬られるのと「一議員」として葬られるのには雲泥の差がある。その差にこだわる限り、やはり『総理大臣』とうい肩書きは最高に魅力的なのかもしれない。

それにしても、日本の政治家もどんどん小粒化している印象が。

私はやはり、ロッキード事件に始まり、ゼネコン汚職やリクルート事件など、あの頃の記憶が強烈なので、へんに清潔なイメージで売り出されるとかえって「大丈夫か?」と首を捻りたくなる。

汚職や犯罪を褒めるわけではないけれど、一国の宰相はあらゆる意味で「怪物」であって欲しい。

かつての『子なきジジイ』みたいに、プレジデントメーカーと言われ、表だって『政界のドン』と称されるような人がないのが、なんとも淋しいかったりするのだ、今にして思えばね。

そんなバブル世代のノスタルジーを刺激するようなコミックが、さいとうたかをの『大宰相シリーズ』。

戦後日本を率いた吉田茂にはじまり、田中角栄、福田赳夫、三木武夫、竹下登といった、あの懐かしい面々の権謀術策をゴルゴ調の濃厚なタッチで描いた政治劇画だ。

私もロッキードの頃は子供だったし、ゼネコンやリクルートの頃もカラオケパブをはしごする頭の軽いオネーチャンだったから、事件のことなどほとんど理解してないし、まして政治のことなんて「はぁ?」って感じ。

せいぜい世間と一緒になって「何億も賄賂~。政治家ってキタナ~イ」程度のものだったから、今、すごく興味があるのだ。

今とは何が違ってたんだろう、そして何が引き金になって下り坂になってしまったのだろう、って。

そう思うようになったのも、時々、若い人のネットの書き込みに、「これだからバブル世代は……」なんて文句を目にするようになったからかもしれない。

そうか、リクルートの頃、『新人類』と呼ばれ、世のオジサン達を嘆かせた私たちも、もう下の子からそんな風に言われる年代になっちゃったんだなあ、って。

でも、そのバブル世代もさ。

豊かな時代の被害者と言われてきたんだよ。

私たちが女子大生の頃、人気占い師が「あんたたちが母親になり、その娘が母親になる頃には、日本は滅びる」と警告してずいぶん顰蹙をかったけども、今の綻びのルーツはバブル世代が起点ではなく、大宰相の時代にまでさかのぼるんだよ。

で、ある意味、バブル世代は、反省しない世代だから。

先代からのツケをそっくり下の子に回して、年金問題も少子化もギリギリセーフで逃げ切る、その要領の良さが下から見れば「ムカツク」のかもしれないね。

ともあれ、今、ゆっくり読み返してみたい「大宰相シリーズ」。

私の好きな早坂茂三さん(参照記事はコチラ早坂茂三の言葉 ~田中角栄と共に闘ったオヤジの遺言~)が寄稿しておられるのも興味深い。


↑ Amazonの立ち読みで早坂さんの寄稿文が一部参照できます。
ぜひご覧あそばせ。

田中角栄と言えば『日本列島改造論』。

大宰相の寄稿文を借りれば、「大都市の過密と農村の過疎を同時解消するため、高速自動車道、新幹線網のネットワークを形成し、時間距離を短縮して、国内を1日交通圏、1日生活圏にする」──という構想。

今、これをやってるのがポーランド。

EUから多額の資金を借り入れ、高速道路の延長、主幹道路の再建、特急鉄道の整備、等、ものすごい勢いで取り組んでいる。

以前は「建設予算」が意味不明に消えることが多かったが、今はEUとの提携があるから、お金がちゃんと目的のために使われるようになった部分も大きいらしい。

あちこちの道路が掘り返され、数年前まで野原だった所にズドンと高速が延びている光景を見ると、なんか角さんの時代の日本みたいだな~なんて思ったりする。

でも、確かに、ポーランドがこれからますます発展するためにも、「1日交通圏、1日生活圏」というのは非常に重要な課題だから。

地方の県庁都市から首都ワルシャワにアクセスするのに電車で5~6時間もかかっているようでは産業はおろか、文化やサービス面でもだめだもん。東京ー大阪間なんて3時間きってるのにね。

地方格差なんて、日本より深刻ですよ、こっちは。

そう考えると、裏で大金を動かしたとしても、北陸や東北や山陰の過疎化した地方にドカンと新幹線や高速を引き入れ、主要都市とのアクセスを一気に縮めた大宰相etcは、地方の一部住民から見れば神様みたいなもんだし、「我が町にも高速引いてくれるなら、一票」と支持する人が増えてもおかしくない。まあ、そうした成長過程の必要性もあって、ああいう金と利権の権謀術策が生まれたんだろうとは思うが、この金の出所がEUだったら、日本の政治も全然違ってたんだろうな──というのは、私の妄想です、ハイ。

ともあれ、ノスタルジーにひたりつつ、この大宰相シリーズを読破してみたい私。

あわせて立花隆の「田中角栄研究──その金脈と人脈」も読めば、もっと楽しいかもしれませんね☆(ペンの力で政治家を倒した、という伝説の記事です)

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