バレエ&オペラ&クラシック

有吉京子の『SWAN』を観る(1) ~マヤ・プリセツカヤの黒鳥~

2010年4月30日

言わずと知れたバレエ漫画の金字塔。地方のバレエ教室の一生徒に過ぎなかった聖真澄が、ロシアの名教師アレクセイ・ミハイロフをはじめ、数多くの強敵や天才との出会いを通して、世界を代表するバレリーナへと成長していく物語。単なるスポ根的展開にとどまらず、人生とは何か、芸術とは何かを問いかける、深く哲学的な内容に仕上がっている。バレエに興味のない人や男性が読んでも学ぶところは多い名作だ。

その名作漫画『SWAN』を読むのではなく観よう、というのが当サイトの企画です。

今、本が手元にないので、セリフなど細かいところはうろ覚えになっていますが、順を追って説明してまいります。

STORY

北海道の地方のバレエ教室に学ぶ聖真澄は、ロシアの名バレリーナ、マヤ・プリセツカヤの『白鳥の湖』を観るために、東京の会場に駆けつけます。しかし、チケットは既に売り切れでした。
が、どうしても舞台が観たい真澄は、警備員の制止を振り切ってホールに飛び込み、プリセツカヤの踊る黒鳥(ブラック・スワン)に感銘を受けます。
一方、若手ホープとして期待される鳳バレエ学校の優等生、京極小夜子は、パートナーの草壁飛翔とともに、プリセツカヤに花束を贈呈するために楽屋を訪ねます。
そこへ真澄が現れ、プリセツカヤと、王子ジークフリートを演じたアレクセイ・ミハイロフの前で、裸足のブラック・スワンを踊って見せます。
プリセツカヤは、「彼女は感動したままを演じて見せてくれたのです」と賞賛し、京極小夜子はその踊りに強烈な印象を感じて、楽屋を後にします。

この後、真澄は、バレエ・コンテストに参加し、京極小夜子や草壁飛翔、彼の友人である柳沢葵らの志の高さに刺激され、彼女もまたバレエの王道を目指す決心をするのでした。

こちらが、真澄を大いに感動させたロシアの名バレリーナ、マヤ・プリセツカヤの黒鳥です。
実際、プリセツカヤは1970年代に来日し、日本の観客の前でも素晴らしい踊りを披露しました。
ある舞台では、カーテンコールが100回近く繰り返され、世界最高記録として残っているそうです。

マヤ・プリセツカヤについては、ぜひこちらのコーナーもご覧下さい。
マヤ・プリセツカヤの『瀕死の白鳥』

SWAN LAKE – BLACK SWAN PD2 (Plisetskaya-Kovtun, 1973)

プリセツカヤは、最大の見せ場である32回連続の大回転(フェッテ)を踊りません。
「優雅な黒鳥の踊りに、あのようなアクロバティックな振り付けは必要ない」というのが彼女の考えだからです。
『SWAN』では大回転のポーズが描かれていますが、私の知る限り、プリセツカヤは、フェッテで踊ったことがないのではないか……と思います。(1960年代に撮影された相当古いビデオでも、やはりフェッテはなかったです)

私としては、この映像よりも、今はもう廃盤となったボリショイ劇場のライブ版の方が、彼女の魅力をより良く伝えていると思います。今はもう手に入らないのが残念です。

ちなみに、ボリショイの白鳥を振り付けたユーリー・グリゴローヴィチの選曲は、オーソドックスな黒鳥と若干違っています。

こちらはボリショイ劇場のライブ映像。
今はもう廃盤となってしまいましたが、プリセツカヤの最高の演技を見ることができます。
少し画像は悪いですが、一見の価値有りです。

Plisetskaya dances Black Swan PDD “Swan Lake” Pt. 1

Plisetskaya dances Black Swan PDD “Swan Lake” Pt. 2

ちなみにこちらが一幕の登場の場面。
さざ波のようなアームの動きと、白鳥から人間に戻る瞬間の素晴らしい演技に注目。

Plisetskaya Odette’s entrance Act II “Swan Lake”

毅然としたコーダ。女王の気品あふれる白鳥です。

Plisetskaya as Odette “Swan Lake” Act II Grand Pas Coda

こちらは、パリ・オペラ座の名手、マリ・クロード・ピエトラガラによる黒鳥。相手役はパトリック・デュポン。
超絶技巧が冴える彼女ならではの32回転が観られます。
四拍目のドゥーブル(2回転連続)も綺麗に決まるのはさすが。

ちなみに、『Swan』の世界バレエ・コンクールでは、真澄の好敵手ラリサ・マクシモーヴァが全てにドゥーブルを入れるという離れ業をやってのけます。いったい、どんな感じだったんでしょうね(汗)


こちらはGillian Murphy(with アメリカン・バレエ・シアター)によるパ・ドゥ・ドゥと大回転。
繊細ながら、技は大胆で正確。
ドゥーブルも楽々きまって、会場の興奮が伝わってくるようです。


『白鳥の湖』に関するVIDEO

白鳥の湖 [DVD]”>白鳥の湖 パリ・オペラ座 主演:マリ・クロード・ピエトラガラ&パトリック・デュポン[DVD]

上記映像の出所。このブルメイストル版は序曲にも振り付けがあり、美しい姫が悪魔の呪いによって白鳥に変えられるエピソードを付け加えている。
演出はパリ・オペラ座らしい、華やかで近代的なものだが、古典的な感動を求めている人にはちょっと期待外れかも。
ピエトラガラとデュポンの華麗な演技を堪能するならお薦め(どっちもモダンバレエの方が似合ってるけども)

チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」全2幕 ボリショイ・バレエ団 アーラ・ミハリチェンコ [DVD]

グリゴローヴィチらしい、全てを踊りによって表現するドラマティックな演出。特に、オディールに騙され誓いを破ってしまう場面からオデットの嘆きへと繋がる第二幕と第三幕を一つの流れにまとめ、たたみかけるようにクライマックスへ持っていく手法は見応えがあり。アーラ・ミハリチェンコの演技も繊細で美しく、いかにもボリショイらしい舞台。
ロットバルトを演じるアレクサンドル・ヴェトロフも迫力がありますヨ☆
個人的にはおすすめ。

【Amazon レビューより】
「白鳥の湖」の中で最高傑作と言っても過言ではない舞台だと思います。旧ソ連時代の舞台で、現在は見ることの出来ないグリゴローヴィチ版。バレエ団幹部としては問題もあった人のようですが、演出家としては、やはり天才です。各踊り手達を踊らせ、魅せるよう作られています。
例えば、王子の友人役の男性舞踏手をカットし、王子に統合する等、 一人の人間の踊りを思う存分に楽しむことが出来ます。
ですので、2幕という形式を取っていますが、踊りの見応え等は充分。
現代人の感覚にはテンポ良く進んで、寧ろ合う方もいらっしゃいます。
そして、白鳥・黒鳥のアラ・ミハリチェンコは絶品です。
技術も演技も素晴らしく、二役を別人のように踊りわけます。
どんな小さなパも力を抜いていないし、型の乱れる一瞬もない技巧、それでいて、情緒豊かな、プロ中のプロです。
王子のヴァシュチェンコもキーロフ出身と言うこともあり、ボリショイのダイナミックな動きに、柔らかさが加わっています。
悪魔のA.ヴェトロフは抜群の跳躍力で、ヴァシュチェンコとの息も合っています。後に王子を踊っている彼は当時、ドゥミ・キャラクテール的存在で、悪役・敵役だけではない、魅力的な悪魔となっているのもポイント。
後、「白鳥の湖」は道化が巧くないと、正直、しまらないのですが、シャルコフの出来も素晴らしいです。その他、王妃のリエパ、ポーランドの姫のスペランスカヤ等、超豪華な出演者で、二度とこんな勢揃いの舞台は見られないのではと思います。

チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」全3幕 キーロフ・バレエ ユリヤ・マハリナ[DVD]

キーロフの名花、ユリヤ・マハリナによる白鳥。肉感的な魅力のあるマハリナだが、ここでは瑞々しく上品なオデットを演じている。
演出も古典的で、「これが白鳥」といった仕上がり。初心者向けですね。

全曲を楽しむなら、華麗で、現代的なデュトワの指揮がおすすめ。
録音も透明感があって素晴らしく、ホールで聴くのとはまた違った味わいがあります。

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