有吉京子の『SWAN』を観る(4) ~「火の鳥」とマーゴ・フォンティーンの白鳥~

言わずと知れたバレエ漫画の金字塔。地方のバレエ教室の一生徒に過ぎなかった聖真澄が、ロシアの名教師アレクセイ・ミハイロフをはじめ、数多くの強敵や天才との出会いを通して、世界を代表するバレリーナへと成長していく物語。単なるスポ根的展開にとどまらず、人生とは何か、芸術とは何かを問いかける、深く哲学的な内容に仕上がっている。バレエに興味のない人や男性が読んでも学ぶところは多い名作だ。

その名作漫画『SWAN』を読むのではなく観よう、というのが当サイトの企画です。

今、本が手元にないので、セリフなど細かいところはうろ覚えになっていますが、順を追って説明しています。

STORY

栄えあるモスクワでの公演『眠りの森の美女』で大成功を収めながらも、舞台でアキレス腱を切ってしまい、長期の療養生活を余儀なくされた京極小夜子。
一方、聖真澄は、各国の一流バレエ学校から集まった優秀な生徒たちと交流を深め、世界を広げていきます。

真澄のルームメイトで、英国のロイヤル・バレエ学校から留学してきたシドニー・エクランドは、勝ち気で、闘争心あふれるダンサー。ボリショイ・バレエ学校がその存在をひた隠しにする天才リリアナ・マクシモーヴァの練習を覗き見たり、真澄に競演を申し込んだり、非常に積極的で、「エースをねらえ」の宝力冴子っぽいキャラクターです。

そんな彼女が発表会で演じたのが、ストラヴィンスキー作曲の『火の鳥』。
燃えさかるように激しい踊りで、真澄を圧倒します。

Diana Vishneva in Firebird

本場ロシアのバレエ団による『火の鳥』全編。
私もこのフィルムは見たことがないので、ソリストの名前などが分からないのですが、古典的な演出です。

日本ではあまりプログラムに組まれない作品ですね。私も見たことがありません。
ストラヴィンスキーの音楽もあまり聴かないせいか、この作品についてはほとんど無知でした(汗)

以下、ダンスマガジン「バレエって、何?」(1993年刊行)より引用。

この演目は、1910年、名うてのプロデューサーだったディアギレフ率いるバレエ・リュスがパリ・オペラ座で初演したのが始まりです。
初期の物語は、
「魔王カスチェイの棲む城に迷い込んだ王子イワンは、庭園で火の鳥を捕まえ、逃がしてやる代償に金の羽根を手に入れる。
城には美しい王女が囚われており、イワンは王女に恋をする。
いったんはカスチェイにつかまるイワンだが、黄金の羽根で呼びだした火の鳥が魔法で魔物達を踊らせている隙に、卵に閉じこめられたカスチェイの魂を破壊し、王女と結ばれる」
というものでした。
が、その後、著名な振付家らが様々な演出を創出し、二人の男性が火の鳥を踊るパルチザンの物語が生まれたり、両性具有的な商品が生まれたりと、初期の設定を超えて成長し続ける傑作です。

『SWAN』では、シドニーと真澄が技を競い合おうとした時、突然、二人の前にマーゴ・フォンティーンが現れます。
「面白そうね、私にも見せて頂きたいわ」(このあたりの経緯は覚えてないです、ゴメンナサイ)
すると、すかさずシドニーは、
「私たちの踊りを見て頂けるのなら、『白鳥』をお願いします!」
真澄にさえない勇気を見せて、マーゴの了承を取り付けます。
突然、世界随一のプリマに踊りを見てもらえることになった真澄は、ガチガチに緊張して立ちつくすばかりでしたが、マーゴの優しい言葉にリラックスし、技ばかりではなく人間性も磨き抜かれた芸術家の在り方に深い感銘を受けるのでした。

「ちょっと手を動かしただけで、白鳥が羽ばたくみたいに」見えた、マーゴ・フォンティーン。
その歴史的な名演がこちらです。

Swanlake,Margot Fonteyn,Rudolf Nurejev II

『白鳥の湖 第三幕』から。
ヌレエフ版は、王子もオデットも死んでしまう、悲劇のエンディングなんですね。
上記の音楽は、ボリショイのグリゴローヴィチ版では「黒鳥のパ・ド・ドゥ」で使われています。
私としては、グリゴローヴィチ版の選曲が好きなのですが、これも結構いけるかな。

奇跡のパートナー・シップと呼ばれた、ルドルフ・ヌレエフとのパ・ド・ドゥ。
マーゴとの出会いについて、「この出会いこそ生涯を通じての最良の一瞬」というヌレエフの言葉が残っています。

Nureyev – Fonteyn – Le Corsaire 海賊

きっと世界中のファンが二人の舞台に見惚れたことでしょうね。
私もライブで観たかったです☆

さて、聖真澄とシドニー・エクランドの競演ですが、マーゴのコメントは、
「そちら(真澄)の方の踊りの方が印象に残りますね」
それを聞いたシドニーは、
「私の踊りのどこが悪いのですか?」
と食って掛かります。すると、マーゴは、
「良いとか悪いとかではなく、”印象に残る”のです」
と優しく諭すのでした。
 ↑ ここもうろ覚えです。ぜひに原作を読んで下さい。
このエピソードの前後に「芸術とは何か」が語られています。
読み応えのある巻です。
確か、3巻だったと記憶。

『火の鳥』に関するCD・DVD

記事を作成した当時は下記のように書いてましたが、ロイヤル・バレエ団の舞台が全幕DVD化されています。

(過去記事)
残念ながら、「火の鳥」の全幕DVDは日本では発売されておらず、インポートのみになります。
こちらのDVDはリュージョンフリーなので、日本のプレイヤーでも再生できます。
レビューも上々で、とりあえず全幕見てみたい方におすすめです。

CDとして全曲聞くなら、こちらの定番がおすすめ。
値段も手頃で、初めての一枚として満足しそう。
私自身は、シャルル・デュトワ指揮 モントリオール交響楽団がおすすめですが、今は廃盤。
中古で4000円の高値が付いています。

これも再販なってます↓

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