バレエ&オペラ&クラシック

有吉京子の『SWAN』を観る(3) ~「眠りの森の美女」~

2010年5月1日

名作漫画『SWAN』を読むのではなく観よう、というのが当サイトの企画です。

今、本が手元にないので、セリフなど細かいところはうろ覚えになっていますが、順を追って説明してまいります。

STORY

かくして、ロシアの天才少女、ラリサ・マクシモーヴァとの『ジゼル』の競演で、その実力を認められた京極小夜子は、日本を代表するプリマとして、栄えあるボリショイ劇場のステージに上がります。
演目は、『眠りの森の美女』。

「SWAN」での説明によると、「精神的にキツイのが“ジゼル”で、肉体的にキツイのが“眠り”」とのこと。
確かに全幕通して、ほとんど出ずっぱりで、しかも各幕ごとに見せ場となるソロがあったり、パ・ド・ドウがあったり、失速せずに踊り抜くのは大変だろうなと思います。

そんな『眠りの森の美女』の見所は、何と言っても、オーロラ姫の誕生日、四人の王子のプロポーズを受けて踊る「バラのアダージョ」でしょう。
クライマックス、ポアントで、アティチュードの姿勢を保ちながら、四人の王子と踊る部分はプロでも緊張するという難度Cの大技です。

オーロラ姫のチュチュも、真っ白だったり、マッシュルーム型(?)だったり、いろいろあるのですが、私はやはりピンク色で、短めのチュチュが好きですね♪

Svetlana Zakharovaのローズ・アダージョ。

『眠り』は英国ロイヤルバレエのお家芸なのですが、私が見に行ったロイヤルの公演では、デボラ・ブルさんという、日本ではあまり名の知られていないプリマがオーロラ姫を踊られました。
しかし、相当緊張されていたのか、見せ場のアティチュードで足がぶるぶる震えて、今にも落ちんばかりだったのです。
でも、必死で持ちこたえようとする気迫が会場いっぱいに広がって、見事、成功した時には、会場中が割れんばかりの拍手と歓声で、大変な盛り上がりでした。
この難度Cのアティチュードも微動だにすることなく、バシバシ決める世界的プリマは大勢いるのですけど、完璧に踊るばかりが全てではない、断じて失敗の許されない生の舞台で、気迫を込めて踊る姿こそが観客の胸を打つのだ――と考えさせられる出来事でした。
後にも先にも、あれほど盛り上がったローズ・アダージョは、デボラ・ブルさん、ただ一人です。

さて、小夜子のオーロラ姫は、目の肥えたロシア人観客を魅了し、舞台も佳境にさしかかります。
これは日本人初の快挙となるかと思われた時、誰のセリフだったか忘れたが、(ラリサだったけな?)
だけど、彼女は、最大の見せ場である第三幕を踊っていないのよ
という言葉がありました。

そうです、第三幕は「オーロラ姫とデジレ王子の結婚式」。
ここで踊られる愛のパ・ド・ドゥこそ、全幕の要といっても過言ではありません。
しかも、相当に疲れの出る第三幕で、最高の踊りを見せなくてはならないのですから、プロのダンサーでさえ「キツイ」と感じるのは当然至極と思います。

こちらはルドルフ・ヌレエフとラリサ・レジュニナのグランパ・ド・ドゥ。(キーロフ・バレエ団)私もこのビデオは持っていました。

この時、主役のレジュニナは18歳。次のキーロフのスターと目されていましたが、その後はあまりぱっとしなかったような……。
このオーロラ姫も、なんかヨタヨタとして危なっかしいのだけれど、それがまた初々しくて、可愛らしい。
そう考えると、オーロラ姫は超絶技巧ばっちりのベテランが踊るより、デビューして間もないお嬢ちゃんが踊る方がより魅力的――かもしれないですね。

こちらは、青い鳥のパ・ド・ドゥ。
この演目も非常に人気があって、ガラ・コンサートでもよく取り上げられます。
京極小夜子と草壁飛翔もコンクールで踊っていましたね。
「男性も、ダンスール・ノーブルとしてのマナーをわきまえている」
というようなセリフがありました。

Sleeping Beauty Princess Florine Bluebird Pas de Deux

こちらは、オーロラ姫を幸せに導くリラの精の踊り。
『眠り』では、オーロラ姫に次ぐ非常に重要なパートです。
オーロラ姫一人がいくら頑張っても、リラの精に威厳と優しさが無く、存在感が薄いと、舞台全体が白けてしまいます。
(来日公演にそういうのがありました)

キーロフでは、ユリア・マハリナが非常に美しいリラの精を披露していました。
ラリッサ・レジュニナのオーロラ姫、ファルフ・ルジマトフのデジレ王子という魅惑の組み合わせです。
このビデオでは5分以降にマハリナのソロを見ることができます。
お姉さまのような、温かく、優しい感じのリラの精です。


最後に、「英国の至宝」と呼ばれ、オーロラ姫を最大の当たり役としていたマーゴ・フォンティーンの映像をどうぞ。
躍動感あふれる演技です。

Margot Fonteyn dances Sleeping Beauty

さて、全幕を完璧に踊り通し、一夜で世界のプリマになったかに見えた小夜子ですが、次の日の公演で、彼女はアキレス腱を切ってしまい、長い療養生活を余儀なくされます。
原因は、何の準備もないままの、ラリサとの無理な競演でした。

そして、この一件が、聖真澄の運命を大きく変えることになります。。。

「眠りの森の美女」に関するDVD・CD

1989年6月カナダ・モントリオールでの公演のライブ版。
オーロラ姫は、当時、キーロフの若手No.1だった、ラリサ・レジュニナ、デジレ王子は、キーロフが誇るエキゾチックな貴公子、ファルフ・ルジマトフ。

これぞ「キーロフ!」といった感じの、非常にクラシックな演出と、目もくらむほど豪華な舞台装置が素晴らしい。
他のプリマの名演に目が馴染んでいれば、レジュニナのオーロラ姫は物足りなく感じるだろうが、その若さや未熟さが、かえって初々しく、魅力的。
ルジマトフが、妙に舞台馴れしているだけに、レジュニナのぐらぐらアラベスクによってバランスが取れて、良いカップリングだと思う。
悪の妖精カラボスは男性ダンサーが演じているが、これまた演技達者で、私が見た中では一番上手。
リラの精のユリヤ・マハリナも、肉感的で存在感があり(レジュニナが若いだけに、お姉さまという感じ)、彼女だけでも一見の価値有り。

【Amazon レビューより】
プロローグから始まり1幕~3幕まで夢中で見ました。
レジュニナのオーロラ姫はローズアダージオで腕がプルプル震えていたり、ところどころ着地がぐらついたりと技術的に気になる点はありましたが、若さが良く表現されていて、とてもかわいらしかったです。
デジレ王子のルジマトフも跳躍がとても高く、男性にしては高いアラベスクに改めて惚れ惚れしました。
リラの精のマハリナもとても素晴らしかったです。
プロローグよりは3幕に向けてだんだん良くなっている感じでした。
プロローグと3幕はクラシックチュチュですが、2幕ではロングのジョーゼットのような衣装で、こちらも素敵でした。
プロローグでは6人の妖精達のバリエーション、3幕ではダイヤモンドの精のバリエーションや金・銀・サファイアの精のパドトロワ、赤ずきんちゃんと狼のバドドゥ、長靴を履いた猫のパドドゥ、青い鳥のグランパドドゥもあります。
発表会等で参考にされたい方にもオススメです。

キーロフ版は魔女カラボスを男性が演じていて、それが最高に上手いんですよね。
私も『眠り』はいろいろ見ましたが、このカラボス以上の演技は見たことがないです。

英国ロイヤルの名花、アリーナ・コヨカルの可憐なオーロラ姫が堪能できる一枚。
『眠り』は英国ロイヤルのお家芸だけあって、装置も、演出も超一級。
いかにもお伽噺らしい、ファンタジックな舞台が楽しめます。

こちらは一世代前のロイヤル・バレエ団。ヴィヴィアナ・デュランテがちょっぴり大人ムードのオーロラ姫を演じています。

*

舞台に興味をもったら、全曲盤もぜひ聞いてみたい。
「眠り」に関しては不思議と全曲版の録音が少ないですが、名盤でしたらアンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団がおすすめ。
古典的で堅実な名演を聴かせます。
私も持ってましたが、誰もが安心して聴ける感じです。

三代バレエのハイライトを楽しむなら、お洒落なシャルル・デュトワ&モントリオール管弦楽団がおすすめ。
録音も非常に綺麗です。
洗練された現代的な演奏を楽しめます。

You are here

レビュー > バレエ&オペラ&クラシック > 有吉京子の『SWAN』を観る(3) ~「眠りの森の美女」~