ポリスの『シンクロニシティ』を旅する -ロック史に残る名盤-

スティング&ポリスを語る上で絶対に欠かせないのが、ポリス最後のアルバムとなった『シンクロニシティー』。

ユングの心理学から名をとったこのアルバムは、グラミー賞を受賞したロック史上に残る名盤であり、これを聞かずして「ポリスが好き」「スティングが好き」といっても、眉唾モノなのである。

この『シンクロニシティ』のどこが凄いかといえば、まず完成度が高い。

今や世界的スタンダードである『Every breath you take(見つめていたい)』をはじめ、『Syncronicity Ⅱ』『Wrapped around your finger』『King of pain』はいずれもヒットチャートの上位を占めたし、アルバム最後の収録曲『Murder by Numbers』のスティングのヴォーカルも非常に印象的でありながら、「ポリスはもう終わりだよ」と言っているようで心に突き刺さる。

多くのヒット・アルバム、ベスト盤と呼ばれるものを聞いても、どの曲も似たり寄ったりで、曲名すら思い出せないような代物が結構あったりするが、ポリスに関しては同じものは二つとしてなく、どれもが強烈なインパクトをもっている。

そして、『シンクロニシティ』は、世界を駆け抜けたポリス、とりわけスティングの前半期の実力の集大成であり、その後、解散してしまっただけに(25年目にひょっこり再結成などなさったが)、余計でその輝きが不滅のものに感じられてならない。

別の見方をすれば、解散スレスレの状態で、よくもこんな完成度の高いアルバムが制作できたものだと感心せずにいないのである。(スティングの著書によれば、この頃、スチュワート・コープランドとの亀裂はもはや修復不可能なほど悪化していたという)

さて、本作の要は、やはりアルバム・タイトルにちなんだ『シンクロニシティⅡ』であろう。

家族病理を歌ったようなこの曲は、何とも奇怪な世界観をたたえている。

ビデオでは、スティングがパンクなヴォーカルを披露して、なんとも魅力的。
今のおじさまスティングも良いけど、私はやっぱり昔のパンクなスティングが好きかな。

ちなみにこのコスチュームは当時スティングが出演した『デューン 砂の惑星』の悪役Feydを模したものだと思う。
(某誌で主演のカイル・マクラクランはアホだと公言していた。役自体もすごくイヤだったらしい)


Synchronicity Ⅱ

Another suburban family morning
Grandmother screaming at the wall

We have to shout above the din of our rice crispies
We can’t hear anything at all
Mother chants her litany of boredom and frustration
But we all know her suicides are fake
Daddy only stares into the distance
There’s only so much more that he can take
Many miles away
Something crawls from the slime
At the bottom of a dark
Scottish lake

Another industrial ugly morning
Tha factory belches filth into the sky
He walks unhindered through the picket lines today
He doesn’t think to wonder why
The secretaries pout and preen like cheap tarts in a red light street
But all he ever thinks to do is watch
And every so called meeting with his so called superior
Is a humiliating kick in the crotch
Many miles away
Something crawls to the surface
Of a dark Scottish loch

Another working day has ended
Only the rush hour hell to face
Packed like lemmings into shiny metal boxes
Contestants in a suicidal race
Daddy crips the wheel and stares alone into the distance
He knows that something somewhere has to break
He sees the family home now looming in his headlights
The pain upstairs that makes his eyeballs ache
Many miles away
There’s a shadow on the door
Of a cottage on the shore
Of a dark Scottish lake

Many miles away
Many miles away
Many miles away…

とある郊外に住む家族の朝
おばあさんは壁際で叫んでいる

ライス・クリスピー(朝食)の上で聞こえるのは
僕たちのやかましい叫び声だけ
他には何も聞こえない
ママはベッドルームで賛美歌を歌い
欲求不満ぎみだ
だけど僕たちは彼女の自殺が狂言だってことを知っている
パパだけが距離を置いてみている
彼に出来ることはそれだけだ

スコットランドの暗い湖の底
何マイルも向こうから
何かがやって来る

とある工業的でしけた朝
工場は空に向かって煙を噴き上げる
彼は今日 監視の列を避けるようにして歩いている

彼はなぜ秘書がふくれっつらで
しかも通りに立つ安っぽい売春婦のように着飾っているのか
考えもしない
彼が今までにしようと思ったことといえば見張ることぐらい
毎度の重役会議は股ぐらへの屈辱的な蹴りのようだ

スコットランドの暗い湖の底
何マイルも向こうから
何かがやって来る

とある就業日の終わり
輝くメタルの箱の中に閉じこめられたタビネズミのように
ラッシュ地獄だけが待ち受ける
自滅的レースの競争者たち
パパはハンドルを握りしめ
遠くから一人でその様を見つめている
彼は何かがどこかで壊れているのを知っているんだ
そして今 彼はヘッドライトに照らされる我が家を見つめている
彼の眼球を痛ませる2階での嫌な出来事を思いながら

スコットランドの暗い湖の底
何マイルも向こうから
何かがやって来る

違う部分も多々あるかもしれませんが、こんな感じかな。

『シンクロニシティ』って、歌やアクションからは想像もつかない、屈折した家族の日常を綴った曲なんですね。

*

「ⅡがあるならⅠもあるやろ」ということで、次に紹介するのが、同アルバムのトップに収録されている『シンクロニシティⅠ』。
こちらはより哲学的な内容で、「飛行機で移動する際はいつも本を読んでいる」というスティングらしい歌詞になっています。

このビデオのスティングも若々しくて、とてもセクシー。大好きでした。
ビデオ全編を通して見れば分かるけど、ステージ上のスティングはギタリストのアンディ・サマーとばかりくっついて、スチュワートの方にはほとんど見向きもしないのね。
見る人が見れば、事情が分かると思う。
スチュワートにしてみたら、自分が見出してバンドに入れてやったのに、いつの間にやらお株を奪われて、そりゃま悔しかったことだろう。
ましてスティングは、そのことで恩義を感じるような人間じゃないしね。
(某誌で、スティングは、「スチュワートの音楽に対する考え方はくだらない」と公言していた)
二人の間に亀裂がいくのは当然至極というか、そもそも、こんな強烈なアクをもったアーティスト二人が「一緒にバンドをやろう」と考えついたこと自体、奇跡だと思う。
アンディは二人の板挟みにあって、ずいぶん苦しんだようだけど(スティングもアンディにだけはずっと敬意を表している)25年後、再結成するに至ったのだから、彼の苦労も報われたんじゃないかな。
私も、いつまでも、お互いに恨みを抱いたまま終わって欲しくなかったし。

ともあれ、シンクロニシティです。


With One Breath, With One Flow
You Will Know
Synchronicity

A Sleep Trance, A Dream Dance,
A Shared Romance,
Synchronicity

A Connecting Principle,
Linked To The Invisible
Almost Imperceptible
Something Inexpressible.
Science Insusceptible
Logic So Inflexible
Causally Connectible

Yet Nothing Is Invincible.

If We Share This Nightmare
Then We Can Dream
Spiritus Mundi.

If You Act, As You Think,
The Missing Link,
Synchronicity.

We Know You, They Know Me
Extrasensory
Synchronicity.

A Star Fall, A Phone Call,
It Joins All,
Synchronicity.

It’s So Deep, It’s So Wide
Your Inside
Synchronicity.

Effect Without A Cause
Sub-atomic Laws, Scientific Pause
Synchronicity

一つの吐息 一つの流れ
それがシンクロニシティ(共時性)であることを君は知るだろう

恍惚とした眠りと 夢の中の踊り
分かちあうロマンス
シンクロニシティ

結び合わされた原理
個々に繋がれたもの
ほとんど気付くこともない
予期せぬ何か
無神経な科学
柔軟性のない論理
causally connectible (これは分からん!)
「無」こそ最強のもの

もし僕たちが悪夢を共有するなら
僕たちはSpiritus mundiの夢をみることができるだろう

もし君が 思ったままに振る舞うなら
失われた輪
シンクロニシティ

僕たちは君を知っているし
彼らは僕を知っている
超感覚
シンクロニシティ

星が落ち 電話が鳴る
もしそれらが一つに結ばれるなら
それはシンクロニシティ

深く 広く
君の中で
シンクロニシティ

理由なき結果
原始の法則
科学的休止
シンクロニシティ

↑ わからん、わからん(^◇^;)

『Spiritus mundi』は、多分、『世界を支配する運命の女神 Fortuna Imperatrix Mundi』のmundiだと思うので、「精神世界」の意味じゃないかと思うんだが・・。

nothing is invincible (無は無敵なり)という歌詞がいい。
東洋思想にも影響されていたのか。

§ ザ・ポリス その他の名曲

こちらは私の一等お気に入りの『Murder by numbers』。
「もし君が人を殺すと決めたなら まず最初に心を石にすることだ」というショッキングな歌詞から始まる。
メロディは綺麗です。
ソロ活動後のジャジーなスティングに連なる音楽です。

ちなみにシガニー・ウィーバー主演のサイコホラー『コピーキャット』のエンディングに使われていました。


§ ザ・ポリス 最愛のCD

ユングの著書『共時性』から題材をとった、83年発表の5作目にして最後のオリジナル・アルバム。
シンプルながらも濃密なバンド・アンサンブルが堪能できる。英米でチャートの1位を獲得。

グラミー賞受賞した伝説の一枚であり、ブリティッシュ・ロックの最高峰に立つ名盤中の名盤です。(褒めすぎ?)
メロディもさることながら、歌詞にスティングの哲学がますます色濃く表れて、この後、どんな境地に旅立つのかと思いきや、とっとと解散してしまった、いわくつきの作品。
まあ、ドラマーのスチュワート・コープランドとの軋轢は一朝一夕に始まったものではないし、「ポリス」というバンドを永遠のものにする為には、解散は不可欠だったのかもしれない。
今なおラジオから頻繁に流れ、何人ものアーティストがカヴァーする名曲『見つめていたい』をはじめ、『シンクロニシティ Part2』『Around your finger』など、ポリス&スティングのエッセンスがぎゅっと詰まった珠玉の一枚。

これも繰り返し見ました。当時の熱気が今に伝わってくるライブ映像です。
が、この頃から、スティングはコープランドと目も見合わせようとせず、アンディ・サマーズとばかりイチャついています。
若かりし頃のスティングの、色気、情熱、野心、プライド、etc が弾けんばかりのお宝映像です。


Photo : http://www.telegraph.co.uk/culture/music/8146109/Sting-Exclusive-interview.html

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