映画

お説教ホラー映画『ソウ』~ジグソウが失敗したワケ

2012年12月17日

第一作に関しては紛れもなくB級ホラーの傑作です。

まさか、こんなところに、かつての美男俳優ケアリー・エルウィスが出てくるとは夢にも思わなかった。参考→背徳の美愁・映画『アナザー・カントリー』 ~もう女は愛さない~

私は「シックス・センス」よりはるかに背中にきました。

でも、その後が悪すぎる。

どんどんタチの悪いスプラッタ・ムービーになって、最後の第七作目はヤケクソみたい。

このあたりは続編の宿命ですね。

第1作目の感動はいつまでも胸に、後のシリーズ6連作は話の種に。

↓ なんでこんなキモイ人形を生まれてくる子供のために買うのか、わからん・・・
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ジグソーでは罪人は救えない

2004年に公開されるや否や、ホラー映画としては異例の興行収入を記録し、ついに2010年のシリーズ7作をもって完結したお説教ホラー映画『SAW(ソウ)』。

意表をつく展開で、ホラー&サスペンス好きは必見と言われたこの映画。

私も最終話の『3Dソウ・ザ・ファイナル』を見て興味を深め、第1作から第6作までシリーズ全作をマラソン鑑賞したのだが、様々なエピソードの詰め込みと残虐シーンの連続にお腹いっぱい、まるでブリングルスのチップス缶を一気食いしたような胸ヤケ状態で、ジグソウを演じたトビン・ベルのナツメウナギのような顔だけが深く心に刻まれた(それでも一気に見てしまうほどスピーディで面白かったけどネ☆)

確かに、2004年度版『ソウ』(第1作)は非常に野心的で、ラストシーンも胸のすくような出来だったけども(これはホラー映画史に語り継がれるでしょう)、その後の展開はレビュアーの皆さんが語る通り。とってつけたような後日談が増えて緊張感が薄れる一方、殺人場面は残酷性を増し、もはや悪趣味の極み。肝心のジグソウが死んでしまった為に、「被害者を死と向かい合わせて、命の大切さを説く」という動機にも説得力もなくなり、マンネリ化が手に取るように分かる苦しいシリーズになってしまった。

もちろん、制作サイドもバカではなく、人気の低下を察すると、本来「8作」まで予定していたプランを「7作」に切り上げ、今後絶対に続編は作らないという約束のもと、日本でも「ソウ・ザ・ファイナル」という邦題で最終話が公開された次第。

私もこれは賢明だと思うし、『DVDーBOX7枚セット』なら定価5千円ぐらいで売れ行きもいいでしょう。

でも、正直、オチを知ってしまったら、何度もじっくり見返そうという気持ちにならないのが、デヴィッド・フィンチャーの映画『セブン』と大きく異なる点。
(参照記事→映画『セブン』と「七つの大罪」 主演:ブラッド・ピット&モーガン・フリーマン

ソウもセブンと同じく、「猟奇殺人」、「被害者を死と向かい合わせることで改心させ、生命の尊さを認識させる」をテーマにしはしているけれど、セブンの場合、ブラッド・ピット&モーガン・フリーマン演じる刑事に「犯人の思想のどこが間違いなのか」ということを明言させており、観る側に一朝一夕には結論づけられない問題を投げかけるからだ。

その点、ソウは、常にジグソウの側から主張がなされて、被害者は弁解すら許されない。捜査する側にも刑事事件を超えた見解はない。

一見、意味がありそうなジグソウの主張にも、もっと高い視点から見れば決定的な誤りがあること、そしてその誤りゆえにジグソウもその思想も滅びる、という風に描いてくれれば、もっと哲学的な作品になっただろうに、ソウはそういう映画じゃなくて、ひたすらジグソウの世界観を楽しむ『ザッツ・エンターテイメント』な作品。

だから、ジグソウが何を言っても考えてはいけないし、残虐な殺人場面も「アハハ。あり得ね~」と笑い飛ばす余裕が必要。

これは「ホラー」という名のギャグであり、ジグソウはお茶目なマスコットなのだ。

そう思えば、後半3部作で裏切られた感の強い人も納得するのではないだろうか。

*

とはいえ、ジグソウの主張も一理あるのだ。

人は当たり前のように今を生き、生命あることを感謝しない。それどころか、時間を無駄にし、隣人を苦しめ、自らを痛めつける。

だから、分からせてやる。

命がいかに尊いか、本当に生きる意志があるかどうかを、絶体絶命の「トラップ」の中で悟らせる。

たとえば、「硫酸入りビーカーの底に沈んだ鍵を素手で掴み出す」「皮膚に食い込んだ鉄の輪を引きちぎって爆弾解除のボタンを押す」「瞼の裏に縫い付けられた鍵を自分で目玉を切り開いて取り出す」といった究極の選択を迫ることで心を試す。

本当に生きたいと思うなら、自分で足を切り落としてでも前に進め──それがジグソウの主張であり、彼のしていることは殺人ではなく心のリハビリなのだ。

「セブン」の猟奇殺人犯ジョン・ドゥも言っている。

「現代人に物を言って聞かせるには、肩を掴んだぐらいではダメだ。ハンマーで頭を殴らなければならない」。

それぐらいやらないと現代人の傲慢は直らない、という話。

*

とはいえ、ジグソウの死のトラップを克服して「生き返った人々」というのは、瞬間的に生命の高揚感を覚えただけで、本質的には何も変わらない。

ひねくれ人間はいつまでもひねくれ思考のままだし、復讐に取り憑かれた人間は結局人を痛めつけることにしか意義を見いだせない。

ジグソウの亡き後、「二代目」を自称するアマンダとホフマンがことごとく滅び去ったのも、人間の本質は「生きる意志」よりはるかに根深いからだ。

ゆえに「生きる意志」を強調するジグソウの思想より、人間の「どうしようもなさ」を寛く受けとめる神の愛の方がはるかに支持され、長続きする。

第6作で、死のトラップから逃れる為にやむなく自分の腕を切り落とした女性が、二代目ジグソウであるホフマン刑事に「(このトラップによって)何かを学んだか?」と聞かれ、「『学ぶ』ですって?! 私を見てよ、酷い目に合って、腕をなくして、何を学ぶっていうの?!」と突っかかるシーンがあるが(この女性は第7作でも「ジグソウのトラップによって命が蘇った」という生存者の集まりで恨み言を言う)、多くの人にとっては「生きる意志」よりも心が癒される方が大事。

マッチョな思想は心の弱い人には受け入れがたく、「生きろ」と迫られるより「愛している」と言われる方がよほど勇気を与えられるのだ。

*

ともあれ、第7作でようやく決着がついた映画「ソウ」。

私にはジグソウを演じたトビン・ベルの素顔の方がはるかに怖かった(笑)

あんなヤツメウナギみたいな顔をした役者さんでも生き生きと活躍する場があるなんて、やはりアメリカの映画界は奥が深いよな、なんて(褒め言葉です)。

このテーマソングはけっこう好き

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「ソウ」はエンターテイメントとして楽しむにはもってこいの作品だけども、血しぶき、生首、ハラワタ系が嫌いな人にはオススメできません。

また家族や友達と一緒にわいわい楽しむ作品でもないです(映画館はいいけどね)。

どちらかというと、深夜1人でひんやりしたい方、日頃のストレス解消に強い刺激の欲しい方、とにかく退屈という方におすすめです。

正直、オチを知ってしまうと、二度も三度も繰り返し観たいとは思いませんが、一度は観ておくべき映画。
どれぐらいの衝撃かと言うと……「シックス・センス」の「やれれた!」感の上を行くと思います。
今でも第1作の信奉者は多いですよね。
話は唐突に「古いバスルーム」「鎖に繋がれた2人の男」「真ん中に頭を撃ち抜いた死体」から始まります。
「いったい、なぜ、こんな所に?」という2人の記憶を辿る形で進行する物語。
おそらく話の9割は誰もが予想できる範囲ですが、最後の1割りで「ウッソ~~~~」と驚かされる。
拍手を送りたくなるようなエンディングです。
(私も大概のホラーやサスペンスには免疫があるのですが、このエンディングは本当に戦慄ものでした)

これも意外な展開で、完成度は高いです。
最後のオチをつい言いたくなりますが(「シックス・センス」みたいに)、言ったら未見の人に死ぬまで恨まれそう(笑)
ジグソウの思想がより色濃く描かれ、シリーズ全作を理解する上での手掛かりになります。

本作は「生きる意志」ではなく「許し」にスポットが当てられる。
一見被害者の殺人ゲームのようだが、実は……な展開もよかった。
最後の最後に本性を現したことにより、すべてを失ってしまう、という結末も。

*

ここから続きは賛否両論、分かれるところ。
いわゆる「ガラスの仮面」読者のノリで、「こうなったら最後までお付き合いするか」という感じで見続けた人も多いのでは。

というのも、やはり第3作で本家ジグソウが死んでしまったから。

第4~6作にも回想としてジグソウは登場するが、実際に動き回っているのはホフマン刑事。

で、このホフマン刑事がもっと魅力的なキャラクターであれば人気も盛り返したのだろうけど、これといった思想も動機もなく、自己満足のためにジグソウを名乗るただのルサンチ野郎なのでまったく感情移入できない。存在感もイマイチだし、「なんで、そこでアンタが出てくる?」みたいな感じで、全然納得できないんだな。

もっとも、そういうキャラクターだからこそ、最終話ソウ・ザ・ファイナルのあの結末があるのだけども。

ともあれツッコミどころ満載の『ソウ』シリーズ。通して観る価値はあると思います。

第1作で登場したアマンダの「バックベア・トラップ」が動作すればどんな風になるのか、ソウ・ザ・ファイナルで分かって満足したファンも多いんじゃないでしょうか。(元嫁、カワイソすぎ)

看護婦の私には第2作で登場する「使い古しの針付き注射器で埋まった床下」が一番怖かったですけど。(ちなみに私も誤って自分の指を何度か突いたことがありますが<薬品を入れる時に>、注射針って、全面鋭角に研磨されているので、不意に刺されたらめちゃくちゃイタイですよ)

ちょっとでも興味が湧いたら、できれば連休の夜を利用して、一気に観ちゃってください☆

↓ 私はPART3の豚汁責めが一番衝撃的でした。見ているだけで臭う。。

初稿: 2010年11月23日

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