音楽

Sade 愛の美学 ~最新アルバム『ラヴァーズ・ロック』より

2008年11月27日

ヘレン・フォラシャーデー・アデュー。

SADEは、何事も急がず、ゆとりをもって人生を生き、その結果、究極の飾り気のなさを湛えつつ自身の音楽と歌声に不思議な魅力を持たせる女性だと思います。

CDアルバム『Lovers Rock』 ライナーノーツより

§ SADEへの想い

Sadeが最後にCDアルバムを発表したのはいつのことだっただろう。

指折り数えれば、片手では足りないぐらい昔のことで(ファンにはそう思える)――もしかしたら、このまま終わってしまうのではないかと――私たちには手の届かない、彼女だけの世界に旅立って、もう二度と戻っては来ないのではないかと思わずにいないくらい、SADEは音楽市場に振り回されることなく、またファンに媚びることもなく、独自のペースで生きている。

その存在は、女神のように崇高で、神秘的で、触れれば消えてしまいそうな精霊を思わせる。

長年彼女に片思いしているファンにしてみれば、そのマイペースぶりはじれったいほどで、天照大神じゃないけれど、マスコミ総勢を上げて、閉ざされた神秘の扉の前で大騒ぎしたい気分にもなる。

が、一方で、もうすぐとてつもなく素晴らしい音楽をたずさえて、ふいと戻ってきてくれるような気もするから、女神の気が向くのをじっと待ち続けているのだけれど――。

I do love you, SADE.

来年こそは新しい歌を聴かせて欲しい。

最後に歌ったのが昨日のことのように、さりげなく――。

§ 『Lovers Rock』ライナーノーツより

このアルバムを耳にして、私は進化を遂げた彼女の詞に興味をそそられました。
彼女が最も本領を発揮する愛と苦悩の従来とは異なった解釈の詞だけでなく、人種の違いから生ずる不公平さというテーマに思い切って挑んだ曲の詞に対してです。

実際のところ、彼女が持つ天性の気質で最も素晴らしい点のひとつは、彼女らしさを失わずにいることかもしれません。

感情の赴くままに深く物思いにふける様、彼女の独特の言い回しと、漂うヴォーカルの微妙な風合いの鮮やかさが醸し出す、ひんやりとして悲しみを湛えた曲の肌触り、それらがリスナーを惹きつけ、一言も聞き漏らすまいと懸命に耳を傾けさせ、リスナーたちに感情移入させ、もっともっと聴きたいと思わせてくれるのです。

女性ならば誰もが経験する、人を愛したり、人間関係の営みから生ずる恐れや希望、そして人生は大抵の場合、粉々に壊れていずれは基に戻るのだということを、シャーデーは曲の中に凝縮して歌っています。

男性のリスナーは、極端なまでに女らしく、深みがありながら、それでいて爽やかなシャーデーのヴォーカルを耳にしたなら、男性の中に潜む猛々しさを鎮め、女性に対して牙を剥くことを思い止まるのではないでしょうか。

By Your Side

あなたが寒くて震えていたら
私はすぐに飛んで行くわよ
そして あなたを強く抱き寄せてあげる

あなたが表に放り出されたままで
家の中に入れない時
この私がちゃんと教えてあげるわ

あなたは自分で思っているよりずっと
素晴らしい人なんだって

あなたが途方に暮れ、
ひとりぼっちで 戻り道も分からない時
この私があなたのことを見つけてあげる
そして もといた場所へと 連れて還ってあげるわ

あなたが泣きたくなったら
その涙を乾かしてあげるために
私がそばについているからね

たちまちのうちに あなたは元気になれるわ

King Of Sorrow

泣いている私が流すのは みんなの涙
自分たちの個人的な戦争の中で
私は前日の夜に死んでしまった

そして目の前に広がるのは
喜びの残骸と災難の傷跡
私はいったいどうすればいいのかしら
あなたの魂を温められるスープを
私は作ってあげたい

でも何ひとつとして変わろうとはしない
まったく何も変わる気配はない

何もなく ただ一日が過ぎ去り
同じような一日がまた訪れるだけ
いいことなど何も起こりはしない
DJは相も変わらず 同じ曲をかけている

私はやることが山ほどある
私はその日その日を生きて行かねばならない

この悲しみから
私が 逃れられることなどあるのだろうか

自分がまるで
悲しみの王様になってしまったかのよう
悲しみの王に

Somebody Already Broke My Heart

あなたが現れたのは
私が救い主を求めていた時
窮地から何とかして私を
救い出してくれる誰かをね

ぼろぼろになってしまったことなら
これまでに数え切れないほどあるわ
傷つけられたことも これまでに何度も
だから今 私はあなたを当てにしているの

私の心なら とっくに誰かが引き裂いてしまっている
私の心は すでに誰かに引き裂かれてしまっているの
ほら、私なら目の前にいるわよ

私を遠くに置き去りにして 困らせたあげく
嘘にすがりつかせるような真似はしないでね

ぼろぼろになってしまったことなら
これまでに数え切れないほどあるわ
傷つけられたことも これまでに何度も
だから優しく慎重に接して欲しいの

私の心なら とっくに 誰かが引き裂いてしまっている
誰かが必ず何かを
失わなければならないのだとしたら
私は最初から深入りしたくない

私の心は すでに誰かに引き裂かれてしまっているの
だめよ、また同じ目に遭うわけにはいかないわ


It’s Only That Gets You through

ねえ、あなたは何も持っていなくても とても豊かよ
苦しみを知ってこそ 優しくなれると
あなたは分かっている
あなたの愛のように 本当に惚れ惚れさせられるわ
愛は優しくて 与えはしても
何も得ようとはしないのよね

あなたが歩んできた道は
並大抵のものじゃなかった
たとえ あなたには
絶対にダメになってしまわないという
信念があったとしても
あなたは何とかして
無事に切り抜けることが出来たのよ
あなたの苦しみは 決して無駄には終わらなかった

あなたは自分の邪魔をし
不当に傷つけようとした人たちのことを
赦してあげるのね
それに あなたは苦しみからこそ
優しさが生まれることが分かっている
あなたの惜しみない愛には 本当にまいってしまう
愛は優しくて 与えはしても
何も得ようとはしていない

あなたの苦しみは 決して無駄には終わらなかった
あなたには分かっている
愛あればこそ自分が切り抜けられることを
愛、愛だけ
愛の力だけがどんな困難も
あなたに乗り越えさせることができる

§ 関連商品

前作『Love Deluxe』から8年ぶりに再始動したオリジナル5作目(2000年作)。シャーデーならではの芸術性を見事に再確認させる、充実したソウルフルなアルバムに仕上がっている。

このアルバムの根底にあるのは、娘の誕生なんですよね。
生涯の伴侶に巡り会い、母となったSADEの思いがしっとりと満ちあふれている。
前4作と趣が異なるので違和感を覚える部分もあるが、音楽は前にも増して哲学的で、全人類を相手に歌ったような内容になっている。

デビュー作から第4作『Love Deluxe』までのヒット・ナンバーを網羅した唯一のベスト盤(94年発表)。
アルバム未収録の楽曲も含まれており、シャーデー・ファン必須のアイテムといえる。
映画「フィラデルフィア」の挿入歌で、アルバム未収録曲の『PLEASE SEND ME SOMEONE TO LOVE』が良い。
最初から通して聴くと、時間をかけて進化するSadeの心の変遷みたいなものが感じられる点が素晴らしい。

※ 今「Ultimate Collection」というのも出ていますが、私のおすすめは、やはり初期の四部作からヒット作をピックアップした上記のベスト盤です。 映画の挿入歌に使われた「Please Send Me Someone To Love」が入ってる点も大きい。

MP3ミュージックで全曲試聴できます。興味のある方はどうぞ。
ザ・ベスト・オヴ・シャーデー

【Amazon レビューより】
解る人にはこれ以上心地よいものはなく、解らない人にはこれ以上退屈なものはないだろうが、昨今の行き過ぎたR&Bに飽きた人にもお勧め。 とかく、メインボーカルが注目されるが、しっかりとしたバックグラウンドの音がこのユニットの要である。

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