音楽

Cherish The Day / Sade(シャーデー) ~世界で一番好きなラブソング

2010年4月30日

初めてこの曲を聴いた時、陶然として、しばらく動けなかった。
「魂に触れる」というのは、こういうことをいうのだろう。
身体の芯から痺れるような甘い衝撃のあと、今まで眠っていた何かが慄然と目を覚ました。
長い間、自分の内側でくすぶっていたものが、外側に向かって爆発的に流れ出すような、そんな心境だった。

シャーデー・アデュの歌う『Cherish The Day』。

これほどまでに崇高かつ官能的な愛の歌を、私は他に知らない。

愛、愛と、知ったように騒ぎ立てるものでもなければ、ノーテンキに幸せを歌うものでもない。
ただもう、魂の奥に、深く深く沈み込むような愛の真実が、非常にシンプルな旋律の中に歌われていて、その宇宙観に心底から共感せずにいられないのである。

たとえば、

I cherish the day
I won’t go astray
I won’t be afraid

You can show me how deep love can be……

毎日がいとおしいの
もう道に迷うこともない
恐れることもない

愛がいかに深いものかあなたに教えてもらったわ

タイトルでもある「Cherish The Day=毎日がいとおしい」は、まさに恋をした者の心境である。
本物の恋は、ただ、相手に恋をしているというだけで、魂が満たされるものだ。
「相手が自分のことをどう思っているか」とか、「どうしたらもっと愛されるか」などという不安や打算とはまったく関係がない。
ただ、あの人に恋をし、恋する悦びを知ったというだけで、この世に生まれたことも、今生きていることも、すべてが眩しく、『毎日がいとおしい』、そんな気持ちになるのである。

そして何より心ひかれたのが、このフレーズだ。

If you were mine,
If you were mine,
I wouldn’t want to go to heaven

もし あなたが私のものなら
私のものだとしたら
私は天国に行けなくてもかまわない

本当に人を愛したら、望むことはただ一つだ。
その人と、身も心も一つに結ばれること。
幸せとか、楽しさとか、そんなことは何の意味もない。
ただ、一つになりたい。
この世での名前も立場も、相手の皮膚さえも超えて、自分と相手の境目も分からなくなるほど、固く、一つに結ばれること、それだけだ。
『天国に行けなくてもかまわない』というのは、愛の強い希求の前では、この世での価値観など何の意味もなく、欲も、恐れも、何もかも超越した、ただ愛だけが息づく世界に結ばれる願いを歌っているのである。

このように深く純粋な愛の世界を、これまたシンプルに歌い上げた作品といえば、ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』、この一作に尽きる。
愛(エロス)と死(タナトス)の極みを描いたこの大作もまた、内側に深く深く沈み込むような愛の真実を描いていた。
そこで歌われるのは、愛を突き詰めれば死に至る、恋人たちの純粋な希求である。
『Cherish The Day』が、「天国に行けなくてもかまわない」と表したように、『トリスタンとイゾルデ』では、「この世を超えて、一つに結ばれる」と愛の究極を歌っている。
そこには、神的なまでに高められた、愛の世界が広がっているのである。

人の世の恋には、とかく、醜いものが付き物である。
恐れ、不安、嫉妬、打算……。
ただ、相手を愛する為だけに存在する愛というものが、どれほどあるだろうか。
その悦びを知る機会も、もちろんのこと。

そうした愛に巡り会えた人間は、本当に幸せである。
そして、その幸せに巡り会えた時、この曲を聴くと、SADEの歌っていることの意味が自身と完全に一体化して感じられるのである。

Cherish The Day

You’re ruling the way that I move
and I breathe your air
You only can rescue me
this is my prayer

If you were mine
If you were mine
I would’nt want go to heaven

I cherish the day
I won’t go astray
I won’t be afraid
You won’t catch me running

You’re ruling the way that I move
You take my air

You can show me how deep love can be……

私はあなたの言うなり
あなたの空気を吸って生きているの
私を救えるのはあなただけ
これが私の祈りの言葉

もしあなたが私のものなら
私のものだとしたら
天国に行けなくてもかまわない

毎日がいとおしいの
もう道に迷うこともない
恐れることもない
走り出したらもう捕まらないわ
私はあなたの言うなり
この空気もあなたに支配されているの

愛がいかに深いものかあなたに教えてもらったわ……

この日本語訳は、ちと納得行かない部分もあります。
「言うなり」とか「支配されている」とか。
つまりは「あなた」が世界の全てだ――ということを表現したいのですけど。。
ruleとかyou take my air のニュアンスを日本語に置き換えるのは難しいですね。
  

Cherish The Day ・・

こちらが私の人生を変えた一曲。
何度聴いてもその世界観に陶然とせずにいない。

この曲に出会えたのは幸せだった。
心の底からしみじみと感じる。


ビデオクリップも素敵ですが、ダンディなスーツ姿で歌うサンディエゴのライブも非常に魅力的。
冒頭のギターソロで昇天確実。スタジオ録音とはまた違った演奏が味わえます。

Cherish The Day (Live from San Diego)

Sadeの記事はこちらにも特集しています。
Sade / シャーデー 私の最愛のアーティスト
ぜひ訪れて下さいね。

SADEの代表作

SADEのヒット曲はAmazon MP3でほぼ全曲試聴できます。
一曲単位の購入も可能なので、興味のある方はぜひ。

『Cherish The Day』の他、ロバート・レッドフォード&デミ・ムーア主演の映画『幸福の条件』の主題歌『No ordinary love』、官能的な『kiss of life』など、いずれも愛の深い悦びを歌ったナンバーが9曲収められています。崇高な薫り漂う、お薦めの一枚です。

シャーデーというアーティストを考える時、この8年(love deluxeの前作『stronger than pride』から実に8年後の新作だった)、いつもそうした受け手との間の危うい時間のハードルのようなものを思い起こさずにはいられなかった。
つまり、ある意味で、これほどポップ・ミュージックのシーンの流れやファンへの代謝、さらには世の動向全般を無視して、自分たちの世界へ入り込んでいるアーティストも珍しいと思わざるを得なかったのである。

アルバムを形成する新曲のほとんどは、これ以上ないというほど言葉を切りつめ、無駄な装飾を削ぎ落とした詞で、シャーデー・アデュの個人的心象がうたわれていくようだ。

アルバムの音に接すると、通常いわれているエロスの意味を、根底からくつがえしてしまうような風景を見せつけられ、日常的常識的エロスからかけ離れた世界へ導かれるようだ。

『love deluxe』という桃源郷とも魔界とも判別できぬ世界を知る人は、まだまだ少ない、いや、ひょっとして、このアルバムを聴くまで、シャーデーのメンバー以外誰ひとり知らない精神世界かもしれないのだから。

(’92年9月21日) 大友良則 ライナーノーツより

こちらに収録されている『Cherish The Day』はオリジナルより更に1分ほど長いロング・バージョンになっています。
他にもSADEの世界的なヒットが多数収録されており、初めての方にはお薦めの1枚。
最近ではUltimate Collectionも出ていますが、やはりシャーデーのベストといえば80年代に連発した「スムース・オペレーター」「プロミス」「ラブ・イズ・ストロンガー・ザン・プライド」「ラブ・デラックス」の四枚でしょう。(Ultimateはその後の「Lovers Rock」の曲も含む)
『Please Send Me Someone To Love』というアルバム未収録曲が入ってるのもポイントが高いです。(下記にビデオをUPしてます)
私ならこちらをオススメします。


現在は入手困難となっている、『Cherish The Day』のリミックス・ヴァージョン。
これを倒産寸前の、しけたCDショップで見つけた時は涙が出るほど嬉しかった。
オリジナル、ロング・ヴァージョン、そしてリミックスと4曲が収録されているミニ・アルバム。
Cherishの世界が堪能できます。

これも最近のヒット曲まで収めて、サービスとしては良好だと思いますが、やはり本当の意味での「シャーデー・ベスト」は最初にあげた初期4枚のベスト盤でしょう。
「手っ取り早くシャーデーの世界を楽しむ」なら、やはり先の「ザ・ベスト・オブ・シャーデー」ですよ。

アルバム『LOVE DELUXE』より

上記で紹介したCD『LOVE DELUXE』に収録されている私のお気に入りです。

恋人達のときめくような瞬間を謳った甘く優しいサウンド。
恍惚とさせてくれます。


ちょっとダークな色調とビートの利いたサウンドが都会的な異色の作品。
SADEのシャープな一面を感じさせる曲です。


こちらはベスト盤に収録されている映画挿入歌。
聴くと、優しい気持ちになれる、愛らしいラブソングです。

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