音楽

『Remember The Time』 地球が回り続ける限り マイケル・ジャクソン

2016年7月31日

「それまでプロモーションの”お飾り”に過ぎなかったミュージック・ビデオを、一気に芸術の域まで高めたのが、マイケル・ジャクソンの『スリラー』である」

というような論評を、マイケルの絶頂期に目にしたことがある。

確かにその通り。70年代からミュージック・ビデオは存在したが、TVの歌謡番組みたいに、アーティストがお洒落なセットを背景ににこやかに歌ったり、ちょっと格好つけてパフォーマンスするだけの、いわば「流し」のような作品が多かった。(ピンクフロイドの『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール』のような作品もあったけれど)

私も百万遍のカフェ(そう言えば京都人には分かる)で初めて『スリラー』を見た時、その迫力に圧倒されたし、「とんでもないものが出てきた」と、次代のトレンドを直感したものだ。(当時の洋楽ファンはみなショックを受けたと思う)

どのあたりが「とんでもない」かと言えば、もはや歌手は歌だけ歌っていればいい、というものではない。

またミュージック・ビデオも「なんとなく格好よければ、それでいい」というものでもない。

セット、衣装、シナリオ、演出、全てにおいて、ブロードウェイの寸劇を見るような完成度の高いパフォーマンスが求められる時代になった……ということだ。

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そして『スリラー』に引き続き、『ビリー・ジーン』『Beat It』『Smooth Criminal』『BAD』と、マイケルのミュージック・ビデオは更に勢いを増し、世界中の洋楽ファンを釘付けにした。

その絶頂期、トドメのように現れたのが、『Remember The Time』だ。

一つ不満を言えば、マイケルの代表的ビデオといえば、必ずといっていいほど『スリラー』や『Smooth Criminal』がピックアップされ、『Remember The Time』が筆頭に上がることはない、という点。

私の中では最高位に位置づけられる作品なのだけど。

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では、『Remember The Time』の何がそんなにスゴイのか。

特に私が惹かれたのが、古代エジプトをモチーフにした舞台演出。

黄金を基調にした、キンキンに煌びやかなセットと衣装が「元祖キラキラガール」の私を直撃。

Remember The Time

国王と王妃役で登場する、当時一世を風靡していたエディ・マーフィーと謎の美女(最近Wikiで知ったのだが、イマン・アブドゥルマジドというソマリア出身のファッションモデル)

Remember The Time

世界の『なぜこんな所にマイケル・ジョンソンが?!』(上級奴隷役で登場)

Remember The Time

イマン・アブドゥルマジドの有り得ないような首の長さ。

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話題になったキスシーン。
Remember The Time

一瞬だけ登場する端役や、隅っこで踊るバックダンサーまで、アイメイクにまで拘った緻密な作り。

Remember The Time

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ミュージック・ビデオに最新の特撮技術が取り入れられたのも、この頃から。

ちなみに、この特撮は、ジェームズ・キャメロンが『アビス』『ターミネーター2』で披露したもので、「海水を自在に操る深海生物」や「未来から来た金属生命体」の演出に取り入れられていました。

Remember The Time

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私も初めてこのビデオを目にした時、TVに釘付けになったのだが、絢爛豪華なセットもさることながら、一糸の乱れもない群舞に「感動」を通り越して「戦慄」を覚えたものだ。

今でも「ダンスがすごい」ビデオは数あるけれど、ここまでドラマティックに織り上げられた振り付けもないと思う。

私もこの作品を見て、初めて「コリオグラファー(振り付け師)」というものの偉大さを実感した次第。

そしてまた「踊りが上手い」「振り付けが凝ってる」だけなら、それに相当するものはたくさんあるが、「古代エジプト」という要素をここまでモダンにアレンジした作品も皆無ではないか。

誰もが思い付きそうで、決して思い付かないこと。

それを見事にやってのけているのが『Remember The Time』なのである。

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マイケルの時代が過ぎ、世の中、レディ・ガガやジャスティン・ビーバーやADELに完全にシフトして、今時「マイケル・ジャクソンがよぉ」などと言っていたら、「耳のカビたおばさん」と馬鹿にされるのかな、と思っていたが。

最近、うちの12歳になる息子が「マイケル、面白い」と、私の手持ちのベスト盤CDを繰り返し聞いたり、『This is It』のDVDを見ているのに、心底感激した。

こんな子が見ても、「スゴイ」というのが分かるんだな、と。

曲の中でマイケルは繰り返し歌う。

Do You Remember The Time
When We Fell In Love
Do You Remember The Time
When We First Met
Do You Remember The Time
When We Fell In Love
Do You Remember The Time…

僕たちが初めて恋に落ちた時のことを憶えているかい?

初めて出会った時を…

それはマイケルのパフォーマンスも同じこと。

私が死んで、息子の時代が過ぎて、火星移住の時代になっても(必ず実現します)、地球が回り続ける限り、『Remember The Time』も繰り返し再生されるだろう。FMで、インターネットで、あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんのオーディオ・プレイヤーで。

そして、マイケル・ジャクソンの才能や影響力を、一番理解していなかったのは、当のマイケル・ジャクソン自身ではないかと思ったりもする。

彼にとっては、これだけ歌って、踊れるのが当たり前。

僕、フツーに踊ってるんだけど、そんなにスゴイの? へー。みたいな。

だから、五十の坂をを過ぎて、今更This is Itのツアーに挑むのに、とてつもない恐怖とプレッシャーを感じたのではないか、その果ての薬物過剰の事故ではないかと、思うこともある。それはあくまで私の憶測だけど。

ともあれ、『Remember The Time』。

あの時を忘れないで。

お願いされなくても、私は忘れない。

そして、あの時代を共有した、おじさん、おばさんたちも、きっと。(プラス、その子供たち)


バックダンサーも、みながみな、マイケル・ジャクソンみたいになれなくても、「マイケルの後ろで踊っていた」というだけで一生の誇りだと思うわ。

「ここの柱の前で踊ってるのが、わ・た・し!」と言えば、他の仕事もゲットしやすいでしょうしね。

オーディションも恐ろしく競争率が高いと思うけど、一人一人、本当に偉いと思いまス☆

アイテム

マイケルの曲って、ビデオも併せてみないと、魅力が半減しますよね。
何度見ても飽きない。興味のある方は、ぜひ。

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