最近、近くの民家でボヤがあった。
正直、この町に移り住んでから、消防車のサイレンは数えるほどしか聞いたことがなく、大阪の町中で、何かと慌ただしく消防車が走り回っていたことに比べたら、「火事」など遠い世界の出来事のようである。
今度のボヤ騒ぎで消防車が来た時も、サイレンの音がほとんど聞こえず、夫に指摘されるまでボヤに気付かなかった。
幸い、室内が炎上しただけで、けが人もなく、レンガ造りの外壁と屋根は完全な形で残っていた。
ああ、これなら、室内を改装しただけで、すぐにまた住めるようになるな……という程度の被害だった。
現在、民家の庭には、焼けて真っ黒になった家具の残骸が山積みにされ、室内ではかなり炎が巻いたことを物語っているわけだが、日本の民家でこれだけ火の手が上がったら、まず半焼はまぬがれないだろう。
あっという間に、襖、障子、梁を焼き尽くし、下手すれば屋根も崩れ落ちるかもしれない。
その点、レンガの家というのは、これほどまで丈夫なものかと改めて考えさせられた。
ポーランドで消防車の出動回数が非常に少ないのも、割と火の回りが遅く、大火事になる確率が少ないということもあるだろう。
また、石油ストーブではなく、蒸気の配管を用いたセントラルヒーティングと、Kominkiと呼ばれる暖炉が多いのも大きな理由と思う。
アパート住まいには憧れのKominki。
最近では、Kominki完備の高級アパートも多い。

セントラルヒーティングはともかく、Kominkiも意外に安全性が高く、耐熱ガラスを締めてしまえば、火の粉が飛び散ることはない。(開けていても、意外と飛び散らない)
また、周囲の石材も意外に熱がこもらず、子供がうっかり触っても火傷することがないし、石油ストーブのように倒れたり、本体が熱をもってカーテンや障子に発火する心配もないから、恐らく、火事になる確率は、Kominkiの方が少ないと思う。
こうした事情から、人口の割には火事が非常に少ないわけだけど、ボヤがあってもガッチリ残った外壁を見ると、「3匹のコブタと狼」の物語を思い出す。
母さん豚は3匹の子豚を自活させるために、外の世界に送り出すわけだが、ラクしたい長男は「藁の家」、次男は「木の家」で済まし、三男だけがせっせとレンガを積み上げる。
ある日、狼がやって来て、藁の家と木の家はあっけなく壊され、長男と次男は食べられてしまうが、レンガ造りの三男の家だけはビクともせず、逆に狼はやっつけられてしまう、というお話だ。
確かに、レンガ造りは大変だと思う。
うちの近所でも、4階建てアパートの建設が進んでいるが、ここも例に漏れず赤いレンガ造りだ。
職人さんが重いレンガを一つずつ組み上げるので、工期はベラボウに長いし、労力もハンパではない。
が、それだけに、壁の厚さは20センチ以上あって、その上からまだ発砲スチロールのような防寒剤を巻き付けたりするので、騒音はほとんどシャットされるし、断熱・防寒の効果も抜群によい。すきま風が入らず、一年を通じて室内の温度がほぼ一定に保たれているので、冷暖房にもあまり頼ることがない。
もちろん、日本のように地震が多い国では、レンガ造りなどひとたまりもないし、そもそもレンガの素となる粘土が入手できないのではないか、と思う(多分)。
日本の気候風土には木造の方が快適だし、法隆寺のように世界最古の木造建築となりうるだけの技術もあるのだから、日本の住宅メーカーが手抜きしているわけではないだろうが、現代のように、これだけ機械的な騒音が増え、火元となるものも相変わらず多いことを考えると、ツーバイフォーの壁の薄い住宅で暮らすことにそろそろ無理があるのではないか、と思ったりもする。
隣の夫婦喧嘩が筒抜けても「お互い様」で過ごせた昔と違って、今は「プライバシー重視」の時代。
階上の、トイレのドアを開け閉めする音さえ許せないような、神経過敏な住環境になりつつある中、何か革新的な手を打たないと、イライラの沸点がますます下がってくるのではないだろうか。
普段、当たり前のように暮らしていると、改めて考えることもないけれど、『住まい』というのはまさに人生の基礎だし、「雨風をしのげればよい」というものでもない。
私も以前、若気の至りで、五角形の部屋に住んだ経験があるけれど、意識下への影響は計り知れなかった。
やはり「まともな住まい」に暮らしてはじめて、明るい精神、明るい人生、と、つくづく思わずにいなかったものだ。
二人の兄に白い目で見られても、せっせとレンガの家を造り続けたコブタの三男。
今、思えば、実に示唆に富んだ物語だと思う。
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三匹の子ぶたも目からウロコの二〇〇年住宅
200年住める、「本当に資産になる家」を考える。
あなたは97%以上の木造住宅で「構造計算」が行なわれていないことを知っていますか?
日本の木造住宅問題を鋭く分析する話題の書。
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