恋の詩 ~ヴェルレーヌ、アンデルセン、プレヴェールetc

限りなく年を重ねても
言いつくせないだろう
あの永遠のわずかな一瞬
きみが私に口づけし
私がきみに口づけをした時のことを

冬の光をあびた朝
パリのモンスリ公園で
パリで
星の地球の上で

– ジャック・プレヴェール –

【庭】
【庭】

NEVERMORE

彼女と私は二人きりで、 夢見ながら歩いていた、
風に髪と思いをなびかせて。

急に、私の方に、 感動的な眼差しを向け、
「あなたの最も美しかった日はいつのこと?」 と、
彼女の息づく黄金の声。

その甘く、響きのいい声は、天使の爽やかな音色。
つつましい微笑みがそれに答え、
私は、敬虔に、その白い手に口づけをした。

ああ、 初花の何とよい香りがすることだろう!
心を魅するささやきのこもった、
愛する人の唇から出る、
何という最初の「諾(ウイ)」

– ポール・ヴェルレーヌ –

【 ブランコ 】
【 ブランコ 】

あなたの愛を口に出そうとしてはならぬ

愛は 口では言い表し得ないもの

優しい風は 目には見えず

こっそりと静かに吹くもの

– ウィリアム・ブレイク –

【 ネックレス 】
【 ネックレス 】

人魚姫

「ではわたしは、死んだら海の泡になって漂って、もう波の音楽も聞かれず、きれいな花や、赤いお日さまを見ることもできないのですね。どうかして、不死の魂を授かることはできないものでしょうか?」

―― 「だめ、だめ!」と、おばあさまは言いました。

「けれど、もし誰か人間が、お前を可愛がって、お父さんお母さんよりもお前の方を愛しく思い、心の底からお前を愛して、神父様に来てもらって、自分の右手をお前の手の中に置きながら、この世でもあの世へ行っても、いつまでも心の変わらない約束をしたなら、その時は、その人の魂がお前の身体の中へ乗り移って、お前も人間の幸福を分けてもらえるようになるんだそうだよ。その人は、お前に魂を分けても、自分の魂は、やっぱり元通りにもっているんだからね」

「これはきっとあの方が、海の上を船で通っていらっしゃるのだわ。お父さまお母さまより大好きな、あの王子さまが。ああ、私のひとすじに思っているあの方の手に、私の一生の幸福をおまかせすることができたなら!
あの方と、不死の魂とが、私のものになるなら、私はどんなことだってやってみるわ!」

ここに一つの伝説――童話がある

深い塩からい海底に住むすべての貝は
じぶんの真珠を作り出した時には
死ななければならぬのだと

おお愛よ!
私の胸に与えられたお前は
命を代償として真珠となるのだ

– ハンス・クリスチャン・アンデルセン –

【 妖精 】
【 妖精 】


山を越え

海を越えて

愛は

その旅路を見出す

– トマス・パーシー –

マックスフィールド・パリッシュ
マックスフィールド・パリッシュ

ソネ 第八番

私は生き、私は死に、
私は燃え、私は溺れる

私は冷たさに耐えながらも、極度に熱い
人生は私にやさしいかと思えば 厳しすぎもする

私は歓喜のまじり合った 深い物憂さを感じている
笑うかと思えば、私は涙し、
快楽に身を委ねながらも、 辛い苦しみに耐え、
私の幸福が遠く去るかと思えば、 永遠に続く 突然、
私は疲れ果てるかと思えば、 緑に萌える

このように「愛」は変わりやすく、私をひきずってゆく。

そして苦しみがつのるかと思えば、 知らないうちに、
その辛さから逃れ出ているのだ
だから私が この歓喜を確かなものと思えば
私の望んだ至福から
「愛」は私をふたたびはじめの不幸へと
突き落としてしまう

……愛は私を深く傷つけたため
時間が経っても 今もなお その跡は癒えない

嘆きの歌をうたい それでもなお私は
過ぎた不幸を 新たにするほかない

– ルイーズ・ラベ –

【黄昏~evening】
【黄昏~evening】

「恋する女」の存在の不安は、たえず相矛盾する極から極へ移ることから生じる。
愛は生から死へ、歓喜から涙へ、苦しみから安らぎへ、至福から絶望へと絶えず詩人を揺り動かし、片時も休むことがない。

愛は、もっとも信じていることを疑わせる力を持つとすれば、また他方、ラ・ロシェフーコー風にもじって言えば、もっとも利口な人間を愚かにし、もっとも愚かな人間を利口にするという狂気の状態に人を置く。

それを時々刻々に己の内部に体験することは、まさにこの世に何一つ確かなものはないと人に思わせるに十分であろう。

– 「フランス 四季と愛の詩」より~ 解説の抜粋(出典は記事後方を参照のこと) –

ウィリアム・ウォーターハウス【占い】
ウィリアム・ウォーターハウス【占い】

愛と死は、愛が昂まるにつれて不可分となる。
死と愛は表裏の関係にある。
エロスは死と近接する度合いにおいていっそう至高を目指すものである。

その愛の中で、二人の一体感はあまりにも強く、もはや二人はお互いを別々のものと感じることができない。
それは一つのもの、一つの存在となる。
固有のものを失ってともに一つに融け合ってしまう。
中世の愛の神話「トリスタンとイズー」と同じく、一つの存在になる以外にない。

というのも、愛とは燃えつくすまでやまない自転的なエネルギーそのものであり、それは全てをこえてしまう。生涯が多ければ、尚いっそうのことである。

本来、「恍惚(extase)」とは接頭語「ex」が示しているように、「自分」の外へ出ることによって味わう感覚のよろこびである。すすんで「自己」を失おうとする働きである。
それは極限において「自己」のみならず「生」の外に出て行こうとする運動性をもち、しかもそれを「幸せ」と思う情念によって支えられている。

– 「四季 ~フランス詩集より~」 解説の抜粋 –


恋は 
人間の心を燃やし尽くし

恋は 
その意志に火をはなつ

恋は人を 
ぬかるみに陥らせ

恋は運命の矢に 
苦い毒をぬる

– ジョン・メイスフィールド-

珠玉のフランス詩集

これほど美しい詩集もまたとない。
四季の叙情と愛を美しいフルカラーの写真と合わせて綴る、まさに溜め息の出る一冊。
フランスの原詩と詩人の生涯、文学についての詳しい解説もあり、「感じたい」「学びたい」方におすすめの本です。
詳しくはこちらの記事をどうぞ→饗庭孝男『フランス 四季と愛の詩』 ~詩と写真で感じる大人の絵本

ロンサール、ユゴー、ネルヴァル、ボードレール、マラルメ、ヴェルレーヌといったフランスを代表する詩人11名の作品を紹介。とりあえずいろんな詩を楽しみたい方、初めての方におすすめ。

プレヴェールの詩集もいいのがたくさんあったのですが、どれも廃刊。
今、入手できる単品ものはこれぐらい。
内容についてはこちらにレビューがあります。『
プレヴェールの詩集は図書館で借りましょう。
私も図書館で出会いました。

やっぱランボーは外せません。甘い恋の詩が好きな人にはちょっとハードに感じるかもしれないけれど、官能と情熱の詩が満載です。
参考記事→アルトゥール・ランボーの詩 / サントリーCM映像 / 映画『太陽と月に背いて』

翻訳詩といえば堀口大學の『月下の一群』に尽きる。
教科書でもお馴染みのあの名訳が存分に楽しめる一冊。

堀口に並ぶ名訳といえば上田敏。
こちらも教科書でお馴染みの格調高い作品集である。
フランスの詩的世界と日本語の美しさを同時に楽しめる必読の本。

「童話」ではあるが、様々な示唆と深い哲学性、宗教性に富んだ内容は、大人でも胸を打つものがある。
大人になってから改めて読むと、ほんと号泣しますよ。
第一集には上記で紹介した「人形姫」が収録。
子供向けに編集されたものと異なり、かなりキリスト教的な色合いが強いです。

Site Footer