今日、ボクは、引きこもるのを止めた

ボクがこの部屋に引きこもってから どれぐらいの月日が流れただろう

はじまりは 小さな痛みだった

なんとなく 人と会うのがつらくて

誰にも顔を見られたくない 話しかけられたくない

そんな気持ちだった。

だからって

誰かに必要とされること

人に褒められること

すっかりあきらめたわけじゃない。

多分 ほんとは その逆

ボクが本当に欲しいものを 誰も与えてくれないから

世の中の すべての人のことをあきらめ

自分自身のこともあきらめ

今 ここに生きているという事実さえ 遠くに眺める

あきらめの結果がこの部屋

一人で居るこの部屋だけが あたたかく やさしい

ボクは怠け者なんじゃない

もうこれ以上 人や何かに期待するのがつらいだけなんだ

だからといって 誰かの存在を まったく求めていないわけでもない

その小さな入り口が ネットだ

ボクがつぶやく

誰かが答えてくれる

直接ふれあうことのない 遠くから 

そっと やさしく 語りかけてくれる誰か

この距離感が 心地いい

面と向かって話すのはイヤだ

心地のいい言葉だけ聞いていたい

ややこしいこと 持ち込まないで欲しい

いつかまた 重荷にたえきれなくなって

壊れてしまうのがこわいから

そうして ボクの部屋に ひきこもって

ずっと ひきこもって

長い年月が過ぎた

今では 誰かと顔をあわさなくても

ネットさえ繋いでいれば

そこそこに楽しく生きられることがわかった

もう食べることにも 着ることにも興味がない

言葉の世界では むきだしのボク

そんなボクに 答えてくれる誰か

それだけあれば 満たされる

だから 外に 出てたくない

そうして 死ぬまで ネットで繋がって生きて行く

そうしていると 安心

まるで お腹の中にかえったみたい

見えない絆と ボクだけが存在する世界

ここではボクだけが世界のすべて

なのに

どうして ここから 引きずりだそうとするの?

こんなボクは 人からみたら きっと壊れてるんだろう

ダメなやつ

負け組

みんなが腹であざわらう声が聞こえてくる

「努力すればいい」と言うけれど

ボクは そんなに 強くない

そこまで強くなる理由がない

努力でホントに幸せになるなら ボクだってそうする

でも努力しても 分からないヤツには 何を言っても分からない

それを知ってるから ボクは努力することもやめた

ボクの中に残ってるのは からーっぽな心だけ

生きて 楽しいことなど 何も無いんだ

だって ボクは クズだから

そう思って 長い間 過ごしてきたけれど

ほんの少し

カーテンからのぞいた青い空を見て

やっぱり 悲しくなった

ボクだけが ここにこうして 一人で居ること

生きているのに 死んだみたいに 何もできずにいること

誰かに聞いて欲しいのに 誰の耳にも届かないこと

ボクは このまま 死んでしまうのか

それで ほんとに 幸せなんだろうか

青い空は 誰にでも平等に微笑みかける

バカだから クズだから って 差別しない

ボクの頭の上にも 天国と同じ青さ

この世には まだそんないいヤツが 残っていたんだなぁ

カーテンを開けると 遠くに女の子の姿が見えた

水たまりを避けながら ピョンピョンはねている

ボクも子供のころは楽しかったはずなのに

今はスネるか 腹たててばかり

こんな人間になるつもりじゃなかったのに

どこで 何を まちがったんだろ?

やっぱり あの時 ボクの方から「ゴメン」って あやまるべきだったのかな。。。

プチンと切れる前に もう一息 がんばるべきだったのかな。。。

前に一緒に飲みに行ったアイツ 案外 いいヤツだった

向かいの席に座ってた女の子も 時々 やさしくしてくれた

思い出したら 涙でてくる

ボクは やっぱり あきらめてないんだ……

一歩だけ 部屋の外に出てみようか

ずっと閉ざしていた扉を 5分だけ 開いて

あの角のコンビニまで

駅前のマンガ喫茶まで

ちょっとだけ 歩いてみようか

少しだけ 外のことが 気になる

ずっと一人で居るのも退屈だし・・

歩くだけなら ボクにも 出来そう

靴を履くの 何ヶ月ぶりだろう……

そうしてボクが外に出てきても どうか「ワッ」と言葉を浴びせないで欲しい

いきなり肩を掴んで 説教なんでしないで

5分間 ほんの5分でいいんだ

一人で外を歩かせて

気付かない振りをして ボクを見送って

ボクにとっては 扉を開けるだけでも とっても勇気がいること

光を見るだけでも まぶしすぎるのに

いっぱい いっぱい 求められたら また心が折れてしまう

『メーワクかけてごめん』

ボクにだって ちょっとぐらいは そういう気持ちもあるんだ

ただ それを 言葉と行動にするには

もう少し 強さと時間が 必要だってこと

だから 待っていて欲しい

ボクの中の 小さな可能性を 信じて欲しいんだ

誰かが 信じて 待ってくれるなら

ボクは もっともっと 強くなれるから

今日 ボクは 5分だけ 外に出ることにした

まだまだ 風は冷たくて 靴を履く足もおぼつかないけれど

歩く──

自分の足でコンビニに向かう──

それからオニギリとジュースを買って レジでお金を払う

その中で ボクにはまだ 自分でやれることがある

まだ社会の一員なんだって 思えるかもしれない

人から見れば なんでもないことかもしれないけれど

久しぶりに見た 人の顔

人って こんなに やさしかったっけ……

店員さんに 話しかけられるボク

ああ
 
ボクは まだ 生きてるんだなぁ……

今はまだ見つからない 何ができるかもわからないけれど

いつかたどり着きたい

ボクの居場所

生きてゆける場所

心から笑える明日へ

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